サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 全国で展開する「道の駅」。今や長距離ドライブの休憩所として道路利用者に欠かせない存在となっている。最近は、休憩に立ち寄るだけでなく、新鮮な農産物を買い求めたり、話題のB級ご当地グルメを楽しんだりできる場所としても人気が高い。ここ数年、防災や地域コミュニティーの活性化などさまざまな機能を持った「道の駅」も現れている。9月の「風は東から」は、地域活性化の視点から「道の駅」の活用を考える。 風は東から

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ6

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機能の多様化進む「道の駅」地域振興の新たな顔に期待
変わる「道の駅」の機能

 「道の駅」は1993年に全国で103カ所が初回登録された。道路利用者に安全で快適な道路交通環境を提供することが目的で、「休憩機能」「情報発信機能」「地域の連携機能」の3つを有する施設をいう。2012年3月現在、全国に987カ所、静岡県内は21カ所が登録されている。
 制度発足から今年で20年を迎え、「道の駅」はすっかり定着した。最近では、単なる休憩や観光情報の入手だけでなく、個々の立地条件や利用者ニーズに合わせ、さまざまな機能が付加されている。



防災拠点整備「朝霧高原」

 2004年の新潟県中越地震を機に「道の駅」を防災拠点に活用する動きが広まっている。東日本大震災時には、被災者の一時避難や日用品の供給基地、救援・復 旧の前線基地として実際に利用された。
 今年3月、国土交通省中部地方整備局管内で行われた「幹線道路協議会」で、東日本大震災を踏まえ、「道の駅」の防災拠点化を推進する方向が示された。静岡県も昨年度、「道の駅」の防災拠点としての有用性を調査。今年は県管理の道路に接する「道の駅」について、地元市町や「道の駅」の管理者と個別の調整を行いながら、自家発電設備などの整備を検討している。
 こうした動きに先駆けて防災機能を強化したのが「道の駅朝霧高原」だ。
 静岡県と山梨県を結ぶ国道139号沿いに位置し、雄大な富士山を背景に周りは多くの観光資源に恵まれている。牛舎風のデザインが施された建物では地元の特産品などが多く販売されている。
 これら休憩・物販施設を含む約36,000平方メートルの土地に、国交省静岡国道事務所は05年から防災拠点施設の整備を進めた。災害時、道路利用者の一時避難はもちろん、道路復旧車両や各種の災害対策車両が集結する。そのため広いスペースの確保が必要だ。
 ヘリポートや復旧車両の集合場所、資材置き場、給水施設、非常用自家発電装置、大型道路情報板などを整備し、10年には静岡国道事務所、富士宮市、「道の駅」に隣接する富士教育訓練センター、「道の駅」を運営する民間企業の4者で災害時の施設利用に関する覚書を締結した。

 国交省静岡国道事務所の藤永稔副所長は「ここは周囲に整備可能な土地があり、富士教育訓練センターには一時避難や災害支援に集まる大勢の人の受け入れもできる。静岡、山梨の県境にも位置し、災害時には救護や復旧の前線基地となる」と拠点化の理由を挙げる。これだけ大規模な防災拠点整備は全国でも珍しいという。
■空から見た「道の駅朝霧高原」(左下一画)。広い敷地にさまざまな防災機能を持つ


観光拠点強化「すばしり」「ふじおやま」

 「道の駅」を観光施策の柱に位置付けるのが小山町。町内に2つの道の駅を持つ。
 「道の駅すばしり」は11年4月にオープンした県内で最も新しい「道の駅」だ。東富士五湖道路須走インターチェンジのすぐ横にあり、富士登山の情報窓口や登山グッズを扱うコーナーがある。地場野菜や地元産の米など、地域色豊かな品物が並ぶ。陸上自衛隊をモチーフにした迷彩柄のバッグや携帯ストラップなどは隠れた人気商品だ。2階には展示スペースや会議室も併設され、周辺住民の交流の場にもなっている。建物の外には足湯があり、ドッグランも整備された。
 もう1つは「道の駅ふじおやま」。国道246号に面し、東京と中京阪を結ぶトラックやバスなどの大型車から観光の立ち寄り客まで利用層は幅広い。富士霊園が近いこともあり、切り花の需要が高い。
 また、地元農家約100人が登録する農産物出荷組合の地場野菜が人気で、週末ともなると神奈川県からも客が訪れる。最近は、農産物売り場の面積を倍に増やしたほか、午後からの販売強化も図っている。
 小山町の観光入込客数は約430万人(11年度)。8年前の「ふじおやま」の開設で約4割増え、「すばしり」の開設でさらに2倍となった。観光振興に力を入れる同町は集客力のある「道の駅」を戦略の柱に位置付けたい考えだ。
 取り組みの一つが、情報発信力の強化。インターネットや携帯端末があればどこでも観光情報が手に入る時代、既存のパンフレットやホームページ情報の提供だけでは意味がない。立ち寄る客に、ここでしか手に入らない情報を臨機応変に提供することが必要だ。そのため、地元の素材を掘り起こし、磨き上げるとともに、案内できる人材の育成を目指す。
 同町商工観光課の坂本日出夫専門監は「観光施設は少ないが、自然を活用した楽しみ方を提案できる。将来的には自転車で町内を回れるような仕掛けをつくりたい。その拠点として『道の駅』の役割は大きくなるだろう」と語る。



伊豆全体のゲートウエイ機能「函南町」

 東駿河湾環状道路が2013年度に函南町塚本まで延伸される。同町は狩野川と大場川の合流点ともなるこの場所に、「道の駅」と「川の駅」の整備を計画している。
 「川の駅」は広さ約1.2ヘクタール。川防災ステーションとして、狩野川流域での水害に対応するほか、水辺のレクリエーション施設なども検討されている。「道の駅」は国道136号を挟んだ西側。農産物の直売所やレストラン、イベント広場のほか、防災備蓄倉庫や災害情報発信システムなどの機能も持たせる。両者を結ぶのは富士山の眺望が楽しめる展望歩道橋だ。
 今年、整備推進協議会を立ち上げ、基本計画の取りまとめにかかる。協議会には国交省や県も参加する。また、整備の方法は民間資金や活力を積極的に導入するPFIも検討されていて、その可能性を探るための調査費は国交省の「先導的官民連携支援事業」の補助金採択を受け獲得した。
 こうした構想の背景には、東駿河湾環状道路を含め、その先の天城北道路の整備、加えて河津下田道路もII期工区が事業採択されたことによる伊豆縦貫道全面開通への期待がある。
 また、伊豆には新しい魅力が次々と生まれている。地形、地質の特異性や優れた自然環境を楽しむ「ジオパーク」構想が進み、その魅力を分かりやすく伝える中核拠点が求められている。韮山の反射炉は15年度の世界文化遺産登録を目指す「九州・山口の近代化産業遺産群」の構成資産候補になった。
 その一方で、先日発表された南海トラフ巨大地震の被害想定は、これまでの予想を大きく上回り、今後の防災対策も大幅な見直しを余儀なくされている。伊豆縦貫道は防災面でも大きな役割を担うことが期待されている。 

森延彦函南町長は「函南町は伊豆のゲートウエイ(玄関口)であり、各地にアクセスしやすい場所にある。函南だけを考えるのでなく、この立地を東部・伊豆全体の活性化に役立てるためにどんな機能が必要か。そこから発想したのが今回の構想だ。ここに、県東部・伊豆の活性化と防災機能を確立したい」と抱負を語る。  規模も形態もさまざまな「道の駅」。「休憩や地場産品を売るだけでなく、地域の雇用を生み出す場や防災の拠点にもなる。地域が知恵を出し、それぞれに合った活用を考えてほしい」と国交省の藤永副所長。画一的でない地域の特性を生かした「味付け」に期待したい。



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