サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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風は東から「2024.3.22 静岡新聞掲載」

県東部地域の活性化に向け、官民一体で提言を行うサンフロント21懇話会は、活動の模様や地域の課題を毎月1回「風は東から」で取り上げている。年度最後の3月は、川勝平太知事、懇話会代表幹事の清野眞司静岡中央銀行社長を迎え、「ファルマバレープロジェクト」の今と、プロジェクトの第二幕「医療田園都市構想」の今後について聞いた。聞き手は懇話会アドバイザーでふじのくに医療城下町推進機構理事長の大坪檀氏(静岡産業大学総合研究所所長)。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ12

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世界に誇る理想郷目指し 医療軸に地域づくりを
■超高齢社会の理想郷「自立のための3歩の住まい」

大坪 昨年度、ファルマバレープロジェクトはスタートから20年を迎えました。超高齢社会のさまざまな課題が浮き彫りになる中で、このプロジェクトが一つの答えを出しているように思います。また、昨年7月には秋篠宮家の次女、佳子さまがファルマバレーセンターをご視察されましたね。
川勝 佳子さまが「自立のための3歩の住まい」の可能性と有用性をすぐにお認めになられたのは印象的でしたね。ファルマバレーでは、県立静岡がんセンターの開院当初から「ひとづくり」「ものづくり」「まちづくり」「世界展開」の四 つの戦略プロジェクトを進めています。ひとづくりでは慶応大をはじめ、早稲田大、東京農工大などと関わりながら優秀な医療従事者や医療機器開発者を数多く育てています。ものづくりは、医療現場に製造業の高い技術を取り入れ、すでに170以上の製品が生み出され、医療産業へ新規参入した企業も50社を超えました。
「自立のための3歩の住まい」は、超高齢社会の理想郷を具現化する「まちづくり」における最初の取り組みです。「3歩」とは、人生100年時代を見据え、自力での歩行が難しくなった高齢者が一日の大半を過ごすベッドを中心に、洗面やトイレ、お風呂など、最後まで自分の身の回りのことができる距離感をあらわしています。DXを取り入れ、オンラインで家族とのコミュニケーションや遠隔医療を可能にし、AI搭載の友達のようなロボットの機能も想定しています。ファルマバレーセンター内にモデルルームを作り、医療機器や介護機器、家電メーカーや住宅素材メーカーなど関係する企業からなるコンソーシアムで進めています。

大坪 多くの企業の方に見ていただき、さまざまなアイデアを共有するある種の実験場になっていますね。
清野 高齢者向けですが、個人の状況は千差万別です。一つ作ればそれが誰でも当てはまるとはいきません。ですから、年齢とともに体の状態が変わっていくことも考慮されていれば、多くの方が取り入れやすくなりますね。
それから、トイレメーカーのTOTOのような業界を代表する企業に参画してもらうことも必要です。トイレの一番近くにある、だけど、まだやったこともないことがたくさんあるでしょう。そういう会社と地元企業がコンソーシアムを組み、知恵や技術力を結集すれば、相当良いものができるでしょうし、開発の速度も早まります。

川勝平太 知事



■ファルマバレーから医療田園都市構想へ

大坪 昨年7月に県は「医療田園都市構想」を取りまとめました。今までファルマバレープロジェクトが進めてきた患者・家族を中心に据えた構想に、住民視点を取り入れ、まちづくりへと進化・深化しています。
川勝 岸田内閣の掲げる「デジタル田園都市国家構想」に、医療を核に据えたのが「医療田園都市構想」です。
本県では「田園都市」づくりを岸田内閣よりも前から推進してきました。東部でほぼ定着し、三島市は「ガーデンシティみしま」、御殿場市は「エコガーデンシティ」のまちづくりをしています。裾野市に建設中のトヨタの実証実験の街「ウーブン・シティ」も富士山を借景にしたガーデンシティとも言えます。
医療は、国・人種・性別を超えてすべての人間に必要です。医療田園都市構想には、静岡がんセンターのある長泉町を核にして広域的なガーデンシティを創りあげるという意思が込められています。
清野 同構想では、モデル地域8市4町(※)が個々の特徴を生かしながらまちづくりを進めていくと聞いています。
モデル地域の一番南端にある伊豆市は、温泉場と駅が離れていてパワーを発揮しきれないきらいがあります。先程の「3歩の住まい」の自然版ではないですが、修善寺駅周辺の機能を組み替えて、市役所機能や医療機能を集約する、周囲には狩野川をはじめ歩いて楽しい遊歩道を整備するといったプランを作っておられます。金融も近くにないと不便でしょう。私ども(静岡中央銀行)の修善寺支店がありますが、それを移転させてもいいですね。
伊豆の真ん中に位置し、人を引き付ける力もある修善寺を一つのモデルケースにすれば、周りの市町にも構想への取り組み方が分かりやすいのではないでしょうか。

※沼津・三島・裾野・御殿場・富士・富士宮・伊豆の国・伊豆市、長泉・清水・函南・小山町

清野眞司
静岡中央銀行社長
サンフロント21懇話会代表幹事




■世界のオアシスに向けモデル作り急げ

大坪 市町によって産業構造も違います。個々の特徴を生かしたまちづくりを進めつつ、この地域を一体化していくにはどのような視点が必要でしょう。
川勝 伊豆を中心にICOI(イコイ)プロジェクトを進めています。温泉と医科学的ヘルスケア・スポーツ・長期滞在などを組み合わせる取り組みです。修善寺周辺はその取り組みにふさわしい所で、金融を取り込むなどの個性的なまちづくりはやりがいがあります。各市町の個性を生かしながら「多様性の和」をつくることが大切ですね。
一方、市町の枠を越えた広域行政は県の役割です。東部市町と隣の山梨県7市町からなる「ふじのくに先端医療総合特区」は、現在、内閣府から高い評価を得ています。東部に山梨県の人口を加えれば、100万人を超える環富士山圏となり、そこに伊豆・箱根を加えた富士・箱根・伊豆は、ひとまとまりの国立公園で、いわば「世界のオアシス」です。
遺伝学の世界的権威の五條堀孝先生は「富士・箱根・伊豆国際学会」を立ち上げましたが、サウジアラビアの国王がおつくりになったアブドラ国王科学技術大学に招かれています。アラブの方々からすると、富士・箱根・伊豆エリアは、まさしく世界のオアシスでしょう。
清野 世界のオアシスにはとても共感します。私は福島の出身で、東京が一番長く、現在は沼津に住んでいます。私から見ると、富士山はその景観はもちろん、水の恩恵、風雨の影響を受けにくいなど、全てがとんでもなく大きな存在です。
毎年、当行では富士山の写真を募ってカレンダーを作っています。たくさんの応募があり、空からの写真も数多く集まります。地上からではないため選からは漏れますが、真上から見た富士山はすごい存在感です。富士山を中心にしたこのエリアをどう盛り上げていくかは、我々企業にとっても大きな課題ですね。
川勝 富士・箱根・伊豆のエリアは、グローバルに俯瞰すれば、「医療・ヘルスケア・温泉のそろった世界のオアシスです」と胸を張って言える広域ガーデンシティです。ウーブン・シティのある裾野市と静岡がんセンターのある長泉町とは隣同士なので、ウーブン・シティと医療田園都市の一体化のために、「3歩の住まい」をウーブン・シティの住宅の一角に組み入れていただければと思っています。
長泉の魅力として、「クレマチスの丘」にあったヴァンジ彫刻庭園美術館が挙げられます。東部の宝ともいえるこの庭園は、県に譲渡され、今後は民間の活力を入れた運営を予定しています。例えば周辺の企業さんにタイムシェアの形で使ってもらうのも一案です。何事も実用化を目指して取り組むのが肝要です。
大坪 医療田園都市構想に取り組む一方、広域連携も進めていく。両者をバランスよく推進することが今後のファルマバレープロジェクトの大きなテーマになると思います。

大坪檀ふじのくに医療
城下町推進機構理事長
サンフロント21懇話会アドバイザー




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