サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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風は東から「2026.05.22 静岡新聞掲載」

犬や猫を取り巻く地域の課題は、この十数年で大きく変わってきた。県によると、県内の犬・猫の殺処分頭数は2019年度の719頭から25年度の29頭に大きく減少した。一方で、飼い主の高齢化や多頭飼育、災害時の避難、飼う人・飼わない人の理解の壁などの課題も残る。5月の「風は東から」は犬や猫を巡る現場の声を通じて、人と動物が共に生きる地域社会のこれからを考える。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ2

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飼う人も、飼わない人も 共に支える地域社会
■「管理」から「愛護」へ富士市に新たな県の拠点

昨年11月、県の動物愛護センターが富士市内に移転・オープンした。動物を取り巻く社会状況や県民意識の変化を受け、新施設は、従来の「動物管理センター」から「動物愛護センター」へと名称を改め、新たな役割を担うことになった。愛称は公募で「しっぽのバトン」と名付けられた。県動物愛護センターの田中恵美所長は「動物の命をつなぐだけでなく、動物を介して人と人をつなぐ、そういう意味合いが込められている」と話す。整備にはクラウドファンディングも活用され、325人から700万円を超える支援が寄せられた。
最大の特徴は、殺処分施設を持たないこと。従来の「管理」のイメージから大きく変わり、保護した犬や猫を譲渡につなげること、ボランティアを支援すること、災害時の動物対策を進めることなど、役割は多い。
センターの収容可能頭数は犬20頭、猫90匹。飼養施設のほか、診療室や手術室も備え、獣医師3人が配置されている。一方、ドッグランやふれあいエリア、飼い主が犬を洗えるシャンプールーム、研修室などを指定管理者が運営し、一般の人やボランティアが利用しやすい開かれた施設を目指している。
現在は、動物愛護管理法に基づき、飼い主には終生飼養の責任が求められている。そのためセンターに引き取りの相談があった場合、まずは管轄の保健所で事情を聞き取り、飼い主自身が親族や知人、ボランティア団体などの譲渡先を探せるよう支援する。それでも難しい場合に限り、保健所を通じてセンターが引き取っている。田中所長はこうした変化を「行政が対応する事案が、飼い主の急死や多頭飼育崩壊など、人や動物の福祉的支援が必要な事案へと明確になってきている」と語る。


■県動物愛護センター「しっぽのバトン」には、譲渡猫展示エリア(左下)やシャンプールーム(右下)が整備されている


■地域の相談窓口としてNPOが担う地道な支援

犬・猫の相談や支援を地域の現場で受け止めてきたのが、NPOや各地のボランティアだ。NPO法人「人と動物のハッピーライフ」もそのひとつ。サンフロント21懇話会の活動をきっかけに12年前に誕生した。飼い切れなくなった犬や猫の譲渡、各種相談、啓発活動を行っている。
相談内容は多岐にわたる。高齢で飼えなくなった、病気で世話ができなくなった、一人暮らしの飼い主が入院した、多頭飼育が崩壊した、迷い猫をどうしたらよいか、フードやペットシーツを寄付したい、ボランティアをしたい―。同NPOには、こうした相談や支援の申し出が年間30件以上寄せられている。
しかし、相談があっても、すぐに新しい飼い主が見つかるとは限らない。飼い主の入院や施設入所で、急に行き場を失う犬や猫がいる。一方で、高齢者の中には「もう一度犬と暮らしたいが、最後まで世話をできるか不安」「万一の時に戻せる仕組みがあれば迎えたい」と考える人もいる。こうした双方のニーズをつなぐには、次の受け入れ先が決まるまで動物を支える場が欠かせない。
「犬や猫は物のように一時的に預かっておけばよい、というわけにはいかない」と同NPOの西島昭男理事長は指摘する。個人の善意だけに頼るには限界があり、相談対応から譲渡、短期的な受け皿までを一体的に支える仕組みが求められている。同NPOは将来的に、こうした機能を備えた相談支援の拠点づくりも視野に入れる。

しっぽのバトンでは、犬を飼いたい人向けの見学会を随時開催。希望者との相性を重視し、面談を重ねて譲渡を決めていくという。写真はベン君(オス・7歳)。施設で暮らす犬や猫の詳しい情報は施設のHPに載っている。
↑譲渡動物情報はこちらから

■NPO法人「人と動物のハッピーライフ」の活動。 左から長泉町総合防災訓練への参加、獣医師によるセミナー、ふれあいイベントの様子


■災害時から日常へ共生広げる第一歩

人と動物の共生は、日常だけの問題ではない。災害時にペットをどう避難させるかも、地域にとって重要な課題だ。避難所には、動物が好きな人だけでなく、苦手な人やアレルギーを持つ人もいる。そこで県動物愛護センターは、国や県のガイドラインを踏まえ、避難所などでペット同行避難の助言や調整役となる「動物愛護ボランティアリーダー」を登録している。田中所長は「どんな災害か、どんな人が集まるか、ひとつとして同じ避難所はない。その場で判断して動ける人を育てることが大切」と強調する。
同NPOも長泉町の総合防災訓練などに参加し、犬を連れて本部会場でペット同行避難を啓発してきた。児童・生徒がゲーム形式で必要な持ち物を学ぶなど、楽しみながら備えを考える工夫もある。一昨年の能登半島地震では、日本動物介護センターと連携し、ペットフードなどの支援物資を石川県獣医師会や石川災害救助犬レスキュー隊へ届けた。
共生社会を進めるには、動物が好きな人だけでなく、苦手な人、関心がない人も含めて理解を広げる必要がある。静岡県動物愛護センターでは、犬を飼っていない人がドッグランの犬の名前を呼び、飼い主と会話を交わすような場面も生まれているという。「飼っていない人たちも犬や猫に興味を持って声をかける。少しずつ意識が変わってきていると感じる」と田中所長は話す。
一方で、商業施設や公共空間、交通機関など、日常の場で犬や猫と自然に共存するには、吠え声や排泄、アレルギー、衛生面、苦手な人への配慮など課題も多い。「いきなり全面解禁するのではなく、一定の区域や期間を設けたトライアルが有効ではないか」と西島理事長。例えば、ショッピングセンターの一部エリアで、マナーを守れる犬を対象に同伴を試すことも一案だ。こうした動きは、観光や宿泊の分野ではすでに広がりつつある。ペット同伴を特別な対応ではなく、地域の滞在価値としてどう位置付けるかも、今後の大きな視点だ。
愛護から共生へ。県東部を、人と動物がともに暮らせる先進地にしていく挑戦は、まさに本格的な段階を迎える。




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