サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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風は東から「2026.04.24 静岡新聞掲載」

サンフロント21懇話会は昨年度、設立30周年を迎えた。この30年で県東部・伊豆は、人口減少と高齢化が進んだ一方、道路網の整備によって地域のつながり方や土地利用、観光のあり方が大きく変わった。4月の「風は東から」は、長く静岡県の職員として市や町の施策に携わってきた静岡産業大学の小泉祐一郎学長に、この30年の東部20市町がどのように変化してきたかを聞いた。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ1

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30年の比較で見える 東部20市町の今
■人口減少の裏で進んだ暮らしの変化

県東部の30年を数字でたどると、まず浮かび上がるのは人口構成の変化だ。総人口は約125万人から約116万人となり、多くの市町で人口減少が進んだ。一方で、総世帯数は約39万世帯から約49万世帯に増えている。(図1)
人口減にもかかわらず世帯数が増加したという事実は、地域の暮らしの形そのものが変わってきたことを示している。単身世帯や高齢者世帯が増え、一つひとつの世帯規模が小さくなった。それにより、地域社会の支え方もこれまでとは違うものが求められるようになった。
高齢化率は全市町で上昇し、熱海市では30年前の18.2パーセントから47.9パーセントへと大きく上昇した(図1)。15歳未満の年少人口割合も多くの市町で低下し、伊東市では16パーセント(1990年)※1から8.4パーセント(2020年)※2と半減している。
こうした数字は少子高齢化の進行を映し出すだけでなく、地域差も鮮明にしている。長泉町や御殿場市のように人口が増加、あるいは比較的健闘している地域もあれば、伊豆地域を中心に高齢化と人口減少がより強く表れている地域もある。小泉学長は「こうした変化は、単なる縮小としてだけでなく、地域の前提条件が組み替わってきた結果として見るべき」と指摘する。
東部は首都圏に近く、暮らし方や産業、観光の変化が中西部より早く表れやすい地域であり、この30年はその影響を先行して受けてきたという。

※1 H2国勢調査
※2 R2国勢調査




■道路が広げた生活圏と地域のつながり

一方で、県東部・伊豆では道路網の整備が着実に進み、地域の条件も大きく変わってきた。修善寺道路、天城北道路、東駿河湾環状道路、新東名高速道路、河津下田道路などの整備によって、かつては遠く、渋滞しやすく、移動時間の見通しが立ちにくかった各地が、以前よりも往来しやすくなった。
道路ができたことで、沼津から駿東へ、伊豆から沼津・三島へ通勤しやすくなった。道路整備は単に交通を便利にしただけでなく、通勤圏や生活圏、観光圏を広げ、地域を点ではなくネットワークとして機能させる条件を整えてきた。
その変化は産業や土地利用にも表れている。県東部の製造品出荷額は約4兆9600億円(1994年)※3から約4兆6000億円(2021年)※4と微減にとどまる。一方で、工場立地は沼津周辺から駿東・北駿地域などへ移り、それまであった工場跡地は商業施設など都市的な利用へと転換した。小泉学長は「地域が弱くなったというより、時代の変化に応じて土地の使われ方が変わってきた」とみる。
観光のあり方も大きく変わった。30年前までの伊豆観光は団体客中心だったが、現在は個人客が増え、観光地に求められる価値も多様化している。人がたくさん来ればいいという時代が終わり、経済効果をどう高めるかが重要になっている。
伊豆パノラマパークや三島スカイウォークなど、新しい魅力を備えた施設が広がり、量より質、一人当たりの消費額を高める方向へと軸足が移ってきた。県東部・伊豆は、そうした観光の転換もまた先んじて経験してきた地域といえる。

※3 県工業統計調査報告書
※4 R3経済センサス活動調査産業別集計報告書




■変化の先を見据える東部の地域経営

人口減少や高齢化が進んだことは確かだ。しかし、暮らしの単位が変わり、道路が地域をつなぎ、土地利用や産業立地が再編され、観光も量から質へ移っている。
こうした変化の積み重ねによって、東部では市町ごとに完結する時代から、地域を広くつないで考える時代へ移ったとみる。人口や高齢化の数字だけでは見えにくいが、生活圏、通勤圏、観光圏が重なり合うことで、「地域力」の出し方そのものが変わってきている。
その意味で県東部・伊豆の30年は、様々な指標が縮小したというより、首都圏の変化をいち早く受けながら、地域の前提条件そのものが組み替えられてきたといえそうだ。だからこそ、これからは人口の増減だけで地域を語るのではなく、暮らしや仕事、医療、観光をどの圏域で支えていくのかを組み立て直すことが求められる。
小泉学長の指摘は、県東部・伊豆が「どう変わったか」の確認にとどまらず、変化した地域の条件に合わせて、地域運営の発想そのものを切り替える時期に来ていることを示唆している。

■小泉 祐一郎 氏
静岡産業大学長

1984年 静岡県庁入庁。地域振興、総合計画、行政改革、空港・港湾振興等を担当。自治省、総理府への出向経験あり。2017年4月 静岡産業大学情報学部教授。同大学にて、総合研究所長代理、図書館長兼美術館長、教務部長、経営学部教授等を歴任。26年4月から現職


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