中山 セルロース材料が社会実装へ向かう今、まず供給側の現状から伺います。
畠田 紙需要はデジタル化で縮む一方、パッケージなど新たな需要も生まれています。当社は「余すところなく」活用する総合バイオマス企業として、CNFの機能性と用途の開発に取り組んでいます。CNFは軽量・高強度に加え、水中では繊維同士が絡み合って三次元の網目構造を形成するのが特徴です。金属を付与して消臭性を持たせたり、化粧品ではさらさら感、食品ではなめらかな口当たりに寄与したりと、機能化も進んでいます。
中山 具体的に、社会実装はどんな分野で進んでいますか。
畠田 分かりやすいのが、斜面(のり面)へモルタルなどを吹き付けた後にセルロース材料を吹き付ける工法です。表面にひびが入りやすいという課題に対し、セルロース材料の保水性によりひび割れ抑制が確認され、国土交通省のデータベースにも登録されています。
食品では保水性や気泡安定性を生かし、どらやきではふわっと感、しっとり感に加え、あんの水分を包むことで賞味期限を延ばすことが確認されました。日焼け止めはCNFを入れることで成分が均一に分散でき、少し振るだけで塗りムラなく使用できます。それだけでなく塗り心地にもつながります。
中山 供給側として、実装段階で最も問われる点は何でしょう。
畠田 工業製品として「必要な量を、必要な品質で、安定的に届けられるか」です。食品・化粧品は衛生管理の整った拠点、産業用途や樹脂用途は別拠点というように、用途ごとに供給体制を整えてきました。新素材は実績データの蓄積にも時間がかかります。まずは評価が進めやすい領域で実績を積み、モビリティや家電などへ段階的に広げたいと考えています。
西村 研究の立場から補足すると、ここがまさに「活用段階」の壁です。技術開発は進みますが、世の中に触れてもらい、使ってもらうには、安心できるデータと継続供給が欠かせません。供給の話が具体的になるほど、採用側も現実的な判断ができるようになります。
古屋 使う側としても同感です。導入を検討するとき、性能だけでなく「いつでも同じ品質で手に入るか」「量は確保できるか」が論点になります。供給の見通しが立つと、実証から本採用へ進めやすくなりますね。
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