サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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風は東からサンフロント21懇話会は2011年に動物保護施設(アニマルシェルター)の設置を県知事に提言した。これに始まる動物愛護の啓発支援活動は16年、NPO法人の設立につながり、翌17年には長泉町に動物先端医療センターが開業するなど、広がりを見せている。5月の「風は東から」は、これらの活動の現状と地域にもたらす効果について、関係者に聞いた。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ2

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動物愛護と福祉を普及 人間と動物の懸け橋に
■NPO活動加速化
■愛犬とゲームに興じる「わんわんフェスティバルin門池」の参加者
NPO法人「人と動物のハッピーライフ」(理事長・井口賢明あさひ法律事務所長)は、動物愛護・福祉の普及啓発、動物同伴環境の拡大推進などを掲げている。設立以来、獣医師による定期的なセミナーや旅行事業者、観光事業者を招いたペットの受け入れに関するパネル討論などを通じて、地域住民に動物とより良く暮らす方法を伝えている。
セミナーは延べ14回を数え、「病気から愛犬・愛猫を守るには」「犬猫のてんかん」「ペットの手料理食」など身近なテーマで開催。毎回約30人の参加者が集まり、熱心に耳を傾けている。質問が相次ぎ、時には時間を30分以上オーバーすることもあるという。
年2回のシンポジウムは、100人規模の聴衆を前に基調講演とパネル討論が行われた。昨年3月には、動物同伴で利用できる施設の在り方について検討。伊豆の国市内の温泉旅館の女将や、伊豆市の観光施設の事務局長などが登壇し、動物同伴のニーズの高さや同伴ならではの問題点などについて活発な意見を交わした。

昨年秋には、愛犬家同士が交流し、犬のしつけや健康に関する相談もできる初の屋外イベント「わんわんフェスティバル in 門池」を沼津市の門池公園で開いた。市内外から家族連れなど数十組が愛犬を連れて参加した。
参加者は、お玉にテニスボールを乗せて一緒に走るスプーンレースや障害物競走などに挑戦。相談コーナーでは、動物先端医療センターの獣医師がイヌの病気や気になる症状について、また同病院の動物看護師が健康管理や症状に合った食事についてアドバイスした。
ドッグトレーナーによるしつけ指導も人気を集め、事前予約枠はすぐにいっぱいになった。
また毎年、卓上カレンダーを作製・配布し、普及啓発につとめている。カレンダーに掲載する犬や猫の写真を公募し、同事務局は「多くの方が応募してくださり、選定には一苦労」とうれしい悲鳴を上げている。

 



■新たな研究拠点整備
動物先端医療センター・AdAM(院長・伊藤博東京農工大名誉教授)は開業から2年がたち、動脈から高濃度の抗がん剤を直接投与する動注化学療法や再生医療などで実績を挙げきた。また、病気も多様化していることから、この春、動物用のMRI(磁気共鳴画像装置)も導入し、診断・治療の幅を広げている。
新たな試みとして伊藤院長を中心に、東京大、東京医科大、岡山大、東京農工大などの研究者が集い、一般社団法人「ヒトと動物の臨床研究情報センター」を設立した。ヒトの医学領域における最先端の臨床研究と、獣医療における臨床情報を互いに共有し、活用することで新たな医薬品や診断薬、医療機器などを短時間でコストを抑えて開発するのが目的だ。
医薬品などの開発は通常、マウスやラットでの安全性、有効性を確認後、ヒトへ投与し効果を検証する。ところが、これらげっ歯類の病気モデルはヒトの臨床とは大きく異なるため、実験結果が必ずしもヒトに応用できるとは限らないという。
伊藤院長は「数万年前からヒトと同じ環境下で共同生活をしてきたイヌ、しかも自然発生したがんに投与することで、よりヒトに投与したのと近い結果が得られるはず」と、国内のヒト医療との共同研究を行いながら実績を重ねてきた。
同情報センターで一緒に研究を手掛ける東京医科大の落谷孝広教授は、血液中の腫瘍の分泌物(miRNA)を検出することで、がんの種類を特定、発見する手法を確立している。数年前にヒトの乳がんに対する臨床試験薬を伊藤院長に相談し、イヌに自然発生した乳がんにヒトの治療薬を投与することで効果と安全性を確かめ、ヒトの臨床研究へ早期に移行した経験を持つ。
こうしたヒトと動物の橋渡し研究は欧米では2004年頃から活発化してきており、研究も盛んに行われている。しかし、日本での事例は少ない。同センターは手始めに大学と連携し、血液を使ったヒトのがん早期診断法(リキッドバイオプシ)をイヌに応用する研究に着手した。また、がんだけでなく、血友病や糖尿病、認知症などのいわゆる難治性疾患にも今後取り組む予定だ。

■開業2年を迎えた動物先端医療センター・AdAM=長泉町

■動物先端医療センターの伊藤博院長



静岡発、世界に向けた研究始まる
■東京医科大教授 落谷孝広氏
国のプロジェクトで、わずかな血液の中にしみ出た腫瘍からの分泌物質(miRNA)を見ることで、がんの有無、ある場合は13種類のがんの同定方法を開発した。現在、実用化の段階に来ている
最近、イヌやネコの寿命も延び、がんだけでなく認知症にもなる。家族の一員である小動物の命の健康を守るためには、がんをはじめとした疾患を早く見つけることが大事だ。ヒトで行ってきた戦略やノウハウが、動物のがんの早期発見にも生きるだろうというのがわれわれの願いであり、それを実現しようとしているのが「ヒトと動物の臨床研究情報センター」だ。
われわれはヒトのがんを長年研究してきたが、動物の疾患を中心にやってこられた伊藤先生と力を合わせ、新しい動物医療を切り開くというのは、とても有意義だ。日本はこうした異なる領域が一つになるのは難しいが、すでにわれわれはヒトの乳がん研究での実践を踏んでおり、そういった経験をもとに、ヒトの成功例を伴侶動物に還元するといったことが可能と考えている。
少なくとも腫瘍マーカーでは日本初。しかもmiRNAを使うという非常に斬新で、世界の手本になるものと思っている。今や動物医療のマーケットは世界中に広がっている。欧米ではすでにこうした橋渡し研究が浸透しており、その根底にあるのは、動物もヒトと同じように手厚いケアをする、という理念だ。
静岡発の、世界に向けた研究がこの県東部でできることをうれしく思う。


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