サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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ことしは西暦2000年。新しい千年紀の幕開けの年です。
昨年暮れに始まった「伊豆新世紀創造祭」もいよいよ本番。1年間にわたり伊豆各地で 様々
なイベントが繰り広げられます。ことし4月から導入される介護保険制度などをにらんで、市町村 の枠組みを越え、県東部のあり方を模索する動きが方々で始まっています。特集では毎月1回、 こうした取り組みを紹介していきます。
今回は今年4月に設立される日本富士山協会の、静岡・山梨の県境を越えた活動に ついてうかがいます。
風は東から
結成5周年記念特集  ●シリーズヲヲ3
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富士山協会が四月旗上げ 県境越え受け入れ体制

庄司清和(しょうじ きよかず)米久代表取締役会長
庄司清和(しょうじ きよかず)米久代表取締役会長
昭和44年米久畜産販売サービス(現米久)設立、社長に就任。平成年会長。趣味は読書、ゴルフ。裾野市生まれ。
世界の共通財産「富士山」
楽しみ、守る共通意識の育成が大切

鈴木 いよいよ、この四月に静岡・山梨両県の協力のもと「日本富士山協会」が発足します。世界の共通財産である富士山の豊かな自然・文化・歴史などを国内外へ情報発信し、交流人口を増やすのが目的と聞いています。米久・庄司会長、富士急行・堀内社長は中心的な役割を担われているそうですが、まずは活動の原点となる富士山への想いについてお聞かせ下さい。
庄司 私は裾野市に住んでいまして、毎朝六時から一時間程度の散歩をします。頂上から段々と赤く染まっていく富士山は、神聖で気高い、思わず手をあわせたくなるような風格を持っていますね。
堀内 富士山は山という存在を越えた神の山であり、神そのものだと思います。もともと富士急行は富士山の素晴らしさを国内はもちろん、世界中の人に知ってもらおうと事業を始めた会社です。鉄道を敷き、バス事業をやり、富士山のよく見える所にホテルやゴルフ場を造るという形で事業を展開してきました。私自身の信仰の対象、会社にとっては存続意義そのものなんです。
鈴木 最近は登山ブーム、自然ブームで年間四百万人の観光客が富士山を訪れています。ごみ、し尿問題、また四輪駆動車やオフロードバイクの乗り入れなど、自然環境の破壊が懸念されています。
庄司 新聞やニュースで取り沙汰される度に心が痛みますね。だからといって富士山に人を入れなければいいとは考えていません。植林をしたりごみ拾いをしている方も大勢います。柵を設けて入山制限をするだけでは解決しないでしょう。多くの方に親しんでもらう中から自ずと一つのルールができ、それを皆が守れれば大変素晴らしいことですね。
堀内 問題の本質は登山者一人ひとり、ひいては国民一人ひとりの富士山への意識にあるのではないでしょうか。富士山は個人のものではありません。静岡のものでも山梨のものでもなく、日本だけのものでもない世界の財産です。そういった共通意識が育まれれば、富士山に親しみ、その自然を守っていくという行動を誰もがとれるようになるのでしょうが、残念ながらそういう気持ちをもてない方も大勢います。その中で多くの人に富士山を楽しんでいただきながら、一方で環境を守っていかなければならない。貴重な物を守るためにコストがかかるのはやむを得ないことで、それ抜きに環境保護の議論だけしても無意味です。入山料の徴収や税制面での費用負担といった方策も検討していかなけばならない。そういった方策まで踏み込んで富士山を守り、楽しみ、愛していくことを考えていきたいですね。
庄司 もっと大勢の方に富士山を見て楽しんでもらいたい。そのためにも自然環境を壊さずに、来た人がスムーズに観光できるルートや場所づくりが必要になってくるんです。
堀内 富士山は誰のものでもありません。しかし、それを守り、皆さんに紹介し、お迎えするというのは地元の山梨県、静岡県がやらなければなりません。個別の企業、市町村や県レベルでは実践していたものを一本化し、発展させようというものです。大変画期的なことが少しずつ具体化している段階です。 



富士山八十八カ所巡り
ネットワークづくりで魅力をPR
堀内光一郎(ほりうち こういちろう)富士急行取締役社長
堀内光一郎(ほりうち こういちろう)富士急行取締役社長
平成元年社長就任。以来「富士を世界に拓く」を理念に経営の陣頭指揮にあたる。静岡県バス協会会長、運輸省観光政策審議会専門委員。




鈴木 既に山梨、静岡両県、富士山麓の市町村、観光協会、企業などが参加していると聞いています。今後は「富士山2世紀戦略推進事業(案)」として具体的な事業に着手されていくわけですね。
庄司 世界中の方に富士山の素晴らしさを味わっていただくには、まず受け入れ体制のレベルをもう少し上げたい。富士山の周辺には美術館だけでも二百近くある。これら既存の美術館やレストラン、観光施設などをもっともっと利用してもらいたい。環境への配慮、交通アクセスなど幾つかの項目による認定制度を設け、条件を満たした施設を四国八十八カ所のようにネットワークするのも一つの案かなと思っています。点を線で結び、それを面、エリアとして発展させていくのが狙いです。
堀内 例えば「時の栖」には年間百万人もの人が訪れるそうです。このように富士山周辺に存在する数多くの魅力的な施設をどう結びつけるか。今はやはりマイカーだと思います。しかし今後はウオーキングと公共交通機関を結びつけるというのが必要になってきます。JR東海、伊豆箱根鉄道をはじめ地域に関わる交通輸送機関が協力しあって、お客さまにとって一番いいネットワークづくりを検討し始めています。
鈴木 そうした結びつきの中からいろんなイベントや国際的な情報発信などが生まれてくるのでしょうか。
堀内 富士山を片側からだけでなく、全体で楽しんでもらうための様々なアシストをやっていく予定です。その一つに一周約二百`の「富士山てくてくウオーク」や、自転車での「ツール・ド・富士山」、「富士山まつり」などを実現したいと考えています。
庄司 あわせて外国人の受け入れ体制も充実させていきたい。先日もサッカー日本代表のトルシエ監督が御殿場で代表合宿を行った際、富士山を見て「身体に力がみなぎった」と大変喜んで帰られました。フランスほどの観光立国の方ですら感動させる力があるんですね。改めて富士山の奥深さを知った思いがしました。



鈴木通代 アナウンサー
聞き手
SBS静岡放送
  鈴木通代 アナウンサー
一本の花の苗を植えること
それが富士山との共生の第一歩

堀内 観光客の受け入れは観光関係者が行えばいいという考えが日本では一般的です。しかし、実際、海外旅行をして本当にその国に対して良い印象をもつのは、むしろ地元の方の優しさやもてなしの心に触れたときだと思うんです。一番大切なのは、富士山麓地域に住んでいる多くの方々が富士山を守っていくのは自分たちだという使命感を持ち、域外からの人たちに、富士山を楽しんでいただこう、また来ていただこうというホスピタリティーの気持ちを持つことなんですね。これがないといくらネットワークやハードを充実させ、専門家のレベルをあげても、大勢のビジターが訪れるまちには育っていかない。
庄司 スイスに行くと窓の外に色とりどりの花が飾ってあります。あれは訪れる人のために家を飾っていると聞きました。きざな言い方ですが、庭に一本の苗を植えることが富士山を良くしていく基礎だと思います。その最初の種をまく、富士山の素晴らしさをお伝えする宣教師の役割を担うのが富士山協会でありたいと考えています。
堀内 今、外国からの観光客数は年間四百万人しかいません。それが日本をきちんと理解していただけない最大の要因だと思います。もし、世界中から年間一千万人が富士山を見に訪れ、この地域を体感するとしたら、これほど日本を理解してもらえる方法はない。富士山麓に住まわせてもらっている、この地をお借りしているという意識でいれば、自ずと自分の庭をきれいにし、街並みを整え、地域全体でお客さまをお迎えできるようになる。本当の意味で世界に誇れる素晴らしい富士山麓が誕生するのではないでしょうか。
鈴木 住民一人ひとりに育てていって欲しい一本の花の苗。富士山協会がその種をまき、地域がそれを育てていく。そして富士山を取り巻く地域全体が本当に世界に誇れる地域として育っていくのでしょう。富士山協会の今後の活躍が期待されます。本日はありがとうございました。



“創論”  “提言”
「富士山と人との共生を」

尾形充生(おがた みつお)
静岡中央銀行 取締役社長 サンフロント21懇話会幹事
尾形充生(おがた みつお)
尾形充生(おがた みつお)氏
静岡中央銀行 取締役社長 サンフロント21懇話会幹事
 富士山は世界に知られる。歴史をひもといても、幕末に日米和親条約締結後、下田などを視察したペリー艦隊の記録に洋上から見た富士山の美しさをたたえる記述があるという。四季折々に表情を変える富士山は神秘的で気品がある。出身は福島、大学が東北の私には毎日のように、富士山が眺められる今の環境に感謝の念さえ覚える。
 県外出身のせいか「富士山の素晴らしさをもっと県内外の人々に知ってもらい、富士山のふもとで世界の人々が交流できるように整備したらいい」と思っていた。そんな願いがかなえられつつある。昨年は富士山こどもの国がオープンしたし、この四月には静岡県と山梨県が協力して「富士山協会」を発足させるという。「世界の共通財産である富士山の多様で豊かな自然、歴史、文化を活用し、国内外に情報発信することにより、交流人口の増大を目指す」のが目的というから大賛成だ。
 秋には富士山一周ウォーキングコースを設定し、「富士山ぐるっとウォーキング」(仮称)も計画されている。また、富士地区では地元の人達が富士山ウルトラマラソンの実現に向けて準備を進めていると聞く。雄大な富士山の恵みを体全体に感じるアウトドアスポーツの定着は「富士山と人との共生」を象徴することにもなるのではないか。
 産業廃棄物の不法投棄など富士山の環境悪化も指摘されているが、健全なスポーツ、レクリエーション、イベントなどが国際的に展開されるようになれば監視の目も多くなり、自然環境の保全という面でもプラスだと思う。
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