鈴木 いよいよ、この四月に静岡・山梨両県の協力のもと「日本富士山協会」が発足します。世界の共通財産である富士山の豊かな自然・文化・歴史などを国内外へ情報発信し、交流人口を増やすのが目的と聞いています。米久・庄司会長、富士急行・堀内社長は中心的な役割を担われているそうですが、まずは活動の原点となる富士山への想いについてお聞かせ下さい。
庄司 私は裾野市に住んでいまして、毎朝六時から一時間程度の散歩をします。頂上から段々と赤く染まっていく富士山は、神聖で気高い、思わず手をあわせたくなるような風格を持っていますね。
堀内 富士山は山という存在を越えた神の山であり、神そのものだと思います。もともと富士急行は富士山の素晴らしさを国内はもちろん、世界中の人に知ってもらおうと事業を始めた会社です。鉄道を敷き、バス事業をやり、富士山のよく見える所にホテルやゴルフ場を造るという形で事業を展開してきました。私自身の信仰の対象、会社にとっては存続意義そのものなんです。
鈴木 最近は登山ブーム、自然ブームで年間四百万人の観光客が富士山を訪れています。ごみ、し尿問題、また四輪駆動車やオフロードバイクの乗り入れなど、自然環境の破壊が懸念されています。
庄司 新聞やニュースで取り沙汰される度に心が痛みますね。だからといって富士山に人を入れなければいいとは考えていません。植林をしたりごみ拾いをしている方も大勢います。柵を設けて入山制限をするだけでは解決しないでしょう。多くの方に親しんでもらう中から自ずと一つのルールができ、それを皆が守れれば大変素晴らしいことですね。
堀内 問題の本質は登山者一人ひとり、ひいては国民一人ひとりの富士山への意識にあるのではないでしょうか。富士山は個人のものではありません。静岡のものでも山梨のものでもなく、日本だけのものでもない世界の財産です。そういった共通意識が育まれれば、富士山に親しみ、その自然を守っていくという行動を誰もがとれるようになるのでしょうが、残念ながらそういう気持ちをもてない方も大勢います。その中で多くの人に富士山を楽しんでいただきながら、一方で環境を守っていかなければならない。貴重な物を守るためにコストがかかるのはやむを得ないことで、それ抜きに環境保護の議論だけしても無意味です。入山料の徴収や税制面での費用負担といった方策も検討していかなけばならない。そういった方策まで踏み込んで富士山を守り、楽しみ、愛していくことを考えていきたいですね。
庄司 もっと大勢の方に富士山を見て楽しんでもらいたい。そのためにも自然環境を壊さずに、来た人がスムーズに観光できるルートや場所づくりが必要になってくるんです。
堀内 富士山は誰のものでもありません。しかし、それを守り、皆さんに紹介し、お迎えするというのは地元の山梨県、静岡県がやらなければなりません。個別の企業、市町村や県レベルでは実践していたものを一本化し、発展させようというものです。大変画期的なことが少しずつ具体化している段階です。
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