サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
トップ 最新情報 政策提言 活動内容 サンフロント21懇話会とは 飛躍 風は東から

ことしは西暦2000年。新しい千年紀の幕開けの年です。
昨年暮れに始まった「伊豆新世紀創造祭」もいよいよ本番。1年間にわたり伊豆各地でさまざま
なイベントが繰り広げられます。
今回は石川嘉延静岡県知事をお迎えし、岡野光喜・スルガ銀行社長と大坪檀・静岡産業
大学国際情報学部教授が、伊豆新世紀創造祭への期待と、地方分権をにらんだ
東部地区の進むべき姿についてうかがいます。
風は東から
結成5周年記念特集  ●シリーズヲヲ4
バックナンバー


創造祭を伊豆の出発点に 発展支える交流人口の拡大

石川嘉延(いしかわ よしのぶ)静岡県知事
石川嘉延(いしかわ よしのぶ)静岡県知事
昭和39年自治省入省。国土庁官房審議官を経て、平成3年自治省官房審議官、4年7月行政局公務員部長を歴任。5年8月静岡県知事に当選。2期目。
伊豆新世紀創造祭スタート
試行錯誤の中から伊豆の真の価値を創造

大坪 昨年の十二月三十一日にスタートした伊豆新世紀創造祭。一月に熱海で行われたオープニングフェスティバル、二月の伊豆長岡町での健康と温泉フォーラム2000、天城湯ヶ島町での世界温泉ミュージアム&メッセも大成功でしたね。
石川 オープニングフェスティバルは五万六千人が参加しました。伊豆の有志五百人による第九の合唱も感動的でしたし、横尾忠則さんプロデュースの花火は迫力満点でした。貫一お宮の海岸も使い方次第で全く新しいイメージの場所になるという実証にもなりましたね。南米ペルーにしか生息しないという七十八度の”熱湯“の中で泳ぐ小さなエビを展示した世界温泉ミュージアム&メッセにも連日多くの人が訪れ大盛況でした。合計で二百三十二のイベントが各地で展開されます。その中から一つでも二つでも地域に根ざすものが出てくれることを期待しています。
大坪 今年一年はそのトライアルの年ですね。さて、スルガ銀行は今年で百五年、伊豆地域の盛衰をつぶさに見られて来たわけです。創造祭をどうご覧になっていますか。
岡野 近代の日本の幕開けはペリーの下田来航に始まりました。それ一つ見ても伊豆は日本の歴史に非常に重要な役割を果たしていると思います。頼朝が武家社会の礎を作ったのもこの地です。こうして見ると日本の歴史の大きな転換期というのは伊豆半島が出発点になっていると言えるかもしれません。同じように伊豆新世紀創造祭も後世になって、あの時が伊豆の出発点だったんだなというものにしていきたいですね。二十世紀後半の交通、空路の発達で首都圏から北海道、九州、アジアなどに短時間で行くことが可能となり、首都圏の奥座敷といわれた伊豆の影が薄くなってしまった。これからはもっと心の豊かさを提供できるものを考えていく必要があるのではないでしょうか。美しい自然、文化、歴史と素材には事欠かないのですから、まず我々がその魅力を再認識し、前向きに行動を起こすことがこの創造祭の一番大きな意味だと思います。



情報化戦略による交流人口の拡大
ITの進化は地方飛躍の第一歩
岡野光喜(おかの みつよし)スルガ銀行社長
岡野光喜(おかの みつよし)スルガ銀行社長
昭和44年富士銀行入行。55年スルガ銀行入行、常務、専務を経て60年頭取(平成10年から社長)。サンフロント21懇話会代表幹事。




大坪 創造祭には国内だけでなく海外、特にアジアから大勢の人が来るかもしれません。国際交流という面ではいかが思われますか。
岡野 一時期九州の福岡や大分が韓国からの観光ブームに沸きましたね。自発的な情報発信が新しい交流を生みだした。これが国際交流の基本です。ところが現在の創造祭のホームページは日本語でしか書かれていない。せっかくのインターネットですから、英語なり、中国語、韓国語で見られるようにすれば海外からの注目も集まるはずです。今まで伊豆は首都圏ばかりを向いていた。これも大切ですが、やはりこれからは海外にも目を向けていかなければならない。国際的な視野に立って新しい交流を考えていく必要があると思います。そのための情報化です。
大坪 情報発信戦略ですね。 岡野 ネットワーク社会は瞬時に世界中に情報を発信できるもので、アジアのマーケットを意識するなら共通語の英語で書く、あるいは中国や韓国にマーケットを絞るならその国の言葉で表現する。そこで初めて情報に価値が生まれる。それが人を動かし、交流のきっかけになる。大切なのはどんな情報を、どこに対して発信するかです。
大坪 情報化の進展は観光のみならず私たちの生活にも大きな影響を与えます。三島の駅前に県が立ち上げたSOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)専用のインキュベーターもその現れですね。
石川 スルガ銀行さんも入られているビルの最上階をお借りして、九室の起業家用オフィスを設置しました。二月初めに入居を開始しましたが、非常に関心は高いようです。これをきっかけに多くの人がチャレンジをして、とても九室では足りないということになってくれればいいですね。
岡野 この下には私どものシンクタンク・企業経営研究所があります。情報の入手や各種調査など個人では難しい部分のヘルプデスクとして活用していただきたい。今までのスモールオフィスとは違ってこういったサポート機能を併設していることがここの大きな特徴ですね。
大坪 IT(情報技術)の発達は時間と距離の概念さえ変えるといわれています。今まで東京でしかできなかったことが静岡県東部でもできるようになる。まさに地方の時代の到来です。
石川 例えば米国の例でも、情報産業など高度な頭脳労働に携わる人たちほど、仕事から解放された時の自然回帰志向が強いといいます。そういった面でも伊豆を抱える東部地域は非常に優れた環境なのではないでしょうか。ですからこの三島のSOHOには大いに期待しています。



大坪檀(おおつぼ まゆみ)さん
大坪檀(おおつぼ まゆみ)さん
静岡産業大学国際情報学部教授。サンフロント21懇話会アドバイザー。
スケールメリットを活かした高次都市機能の実現
広域連携の風は東から

大坪 ネットワーク社会の進展が人の行動、考え方、企業のあり方を変えているといっても過言ではありませんね。さて、県内では静岡市と清水市の合併が具体化してきましたが、東部地域でも様々な広域連携への働きかけが行われています。
石川 サンフロント21懇話会の呼びかけが徐々に経済界や行政に広まりつつあるようです。すでに沼津、三島、原町、長泉町、清水町の二つの商工会議所と三つの商工会が合同の新年賀詞交換会を開くようになって今年で二回を数えます。昨年の秋には沼津市、三島市、裾野市、清水町、長泉町、伊豆長岡町、韮山町、函南町の三市五町で東部広域都市づくり研究会が発足しました。これからの地域のありようを考えた時に、都市的に発展するか、一次産業の育成をメーンにしながら昔ながらの田舎の風景といったものを売り物にするか、その二極分化だと思います。中途半端な所はあまり発展しない。そういう意味でこの三市五町の場合、一体になれば都市的な機能を高める大きなきっかけとなりますし、それがないとこの地域は停滞するのではないでしょうか。その分水嶺に来ている今、都市的に発展する方向へ基盤を作ろうという動きが出てきたのは大いに歓迎し、期待するところです。
岡野 三市五町が一体化すれば人口は約五十一万人で、静岡市四十八万人、浜松市五十八万人にほぼ匹敵する規模になります。ごみ処理問題、四月からの介護保険など、今後の自治体運営の中で限られた財源をいかに効率良く使うかが求められる中で、都市としてのスケールメリットを活かすには、やはり五十万人が最低限必要な規模となるのではないでしょうか。さらに広域で連携する中でそれぞれの持つ施設や機能を有効に使えば、かなりの財源を新たな住民サービスに回すことができるようになる。自治体ごとに何でもかんでもそろえるという二十世紀型の発想から脱皮し、何が本当に地域に住む人々にとってプラスになるのかを考え、実践していくことが求められていると思います。
石川 これからの地域の発展を考えるとき、特に重要になるのが交流人口の拡大です。伊豆半島や富士山という恵まれた自然景観、温泉という自然資源、これだけに頼るのでは今ひとつパワーが足りない。都市の魅力、いわゆる高次な都市機能の充実が必要です。この両方がそろえば「鬼に金棒」。そこを地域の人たちは自覚する必要があると思います。例えば昨年オープンした静岡市のグランシップ、これがあることで世界中から一流の人々を招くことができ、その恩恵を我々住民は受けることができる。そういった都市機能を用意するには、やはりある程度の人口規模が必要になります。この地域を見ても沼津市と清水町、三島市が分かれていなければならない理由が少ないように思われます。例えば大井川の川筋や伊豆半島の奥部といった、誰が考えても地形的、あるいは交通体系的に見て小さくても一つの行政体でしかありえないという場所はいくつかありますが、三市五町は富士の裾野に連なっている。将来的には富士、富士宮、御殿場を含めた富士山麓一帯が一つの単位になってもよいのではないかと考えます。
大坪 すると百万都市が誕生しますね。
岡野 人やものの流れを考えた場合、今よりも大きな単位の方が効率的に優れている面は多々あると思います。二十一世紀の自治体はコスト意識をいかに行政施策に反映させるか、それが地域が繁栄するための基本条件になると思います。その中において都市間の連携や合併というのは当然視野に入ってくる課題ではないかという気がします。
大坪 今後の十年間で飛躍しないと二十一世紀に出遅れかねない。自分たちの地域をどのようにデザインするか、腰を据えて考える時期がまさに今来ているんですね。今日はありがとうございました。

■企画・制作/静岡新聞社営業局

▲ページトップ
入会案内お問い合わせ事務局案内リンク Copyright(c) SUNFRONT21.ALL RIGHTS RESERVED.