サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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地方分権が本格化した。県東部でも、三島を中心に3市5町の広域都市づくりの研究が進み、河津町・東伊豆町などでは介護保険やごみ処理をめぐる町村協力体制づくりが始まった。東部地区の広域都市づくりをテーマに揚げるサンフロント2懇話会は、「さいたま市」として来年5月の合併が決まった埼玉県浦和・大宮・与野3市の合併推進協議会を訪ね、大多和静岡県総務部理事(地方分権担当)と同懇話会シンクタンクTESSの中山勝氏が関係者のこれまでの苦労話、将来の展望などを聞いた。 風は東から
 
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議席減を覚悟で合併推進 確執乗り越え「さいたま」に


「さいたま市」誕生へ
 浦和、大宮、与野3市の合併問題は市長、議会がリーダーシップをとる形で最初に「合併」の方向を決め、議会サイドからの「各論反対」が起きない形で進めた。
 しかし平成七年に合併推進決議をしたものの、各市の”お家の事業“が続出、条件闘争を展開したが最後は「埼玉県のヘソ(政令指定都市)を作らなければ、21世紀に生き残れない」との認識で一致、互いに譲歩して決着した。インタビューした大多和理事は「地域のリーダーである議員が一致して未来志向で推進した今回の合併劇は全国でも初のケース。”大人の議会“の決断で素晴らしい」と評価した。
 大多和、中山氏のインタビューから譲歩の舞台裏を見ると―



さいたま新都心地区
さいたま新都心地区
■政令市にらみ大同団結
   (浦和市)
大宮市が主張した上尾市、伊奈町を含めた政令指定都市構想を受け入れ

「三市で合併し、そのまま政令指定都市に」と求める浦和と、「上尾市、伊奈町を加えた四市一町で政令市に移行すべきだ」と主張する大宮。県庁所在地・浦和のプライドと、経済、交通の中心地・大宮の意地をかけ、両市は対立、主導権争いを繰り返してきた。
平成九年、任意の合併協議会設置決議では、浦和市の主張する三市合併が先行した形だったが、十一年の三市合併推進協議会では「新市成立後、新市は上尾市、伊奈町の意向を確認の上、速やかに合併協議を行うものとし、二年以内を目標に政令指定都市を実現する」との文書に合意。浦和が大宮側の意向をのんだ。「これまで来た三市合併を壊さず、前進するための判断だった」と福島正道浦和市議(政令指定都市特別委員会委員長)は振り返った。



■新市名で譲歩
   (大宮市)
鶴崎大宮市長・大和田氏・中山氏
鶴崎大宮市長(左)から合併に向けた経緯の説明を受ける大和田氏(右)と中山氏(右から2番目)



「さいたま」を断腸の思いで採択

 住民のアイデンティティーの象徴ともいうべき市の名称―。市民の意向を反映するため、新市名を広く公募したところ、全国から約六万八千通が寄せられ、一位が埼玉、二位がさいたま、三位は大宮だった。「吸収合併ではなく、対等合併。旧名を使うのはよくない」と「さいたま」を唱える浦和、与野両市と、「大宮」を推す大宮市がともに譲らず平行線をたどった。
 そこで、焦点になっていた新市の市役所の将来の位置について、「将来はさいたま新都心(三市にまたがる旧国鉄大宮操車場跡地)周辺地域が望ましいとの意見も踏まえて検討する」との大宮市側の主張に合意が得られたことから、大宮市が新市名「大宮」をあきらめ、「さいたま」とすることを採択。「断腸の思いで決断」(鶴崎敏康大宮市議・政令指定都市特別委員会委員長)した。




■市長が「今期限り」と仲人に
  (与野市)
二十六人の議員が五、六人になっても―と決意。

 浦和市と大宮市に囲まれた八・二九平方キロメートルの与野市。そこに八万二千人がひしめく。彩の国さいたま芸術劇場を核とする芸術・文化の情報発信地だが、限られた土地空間ではこれ以上の発展が難しい。あと数年で満杯になるごみ処分場問題も深刻だ。
 井原勇与野市長は「小さい与野市がこれからの社会状況に対応していくには、合併し政令市になる道しかない」と浦和、大宮両市の仲人役を買って出た。
 「今期限り」と合併へ向けて尽力する市長に続き、市議会も立ち上がった。三市が合併すれば、当然議員の議席は減る。「与野の議席は二十六人から五、六人になるが、自分の損得を言っては合併は進まない」と稲垣欣和与野市議(政令指定都市推進特別委員会委員長)らは新市成立に意欲を燃やす。




三市合併合意までの歩み

【平成6年5月】浦和市・大宮市・与野市の市議による「政令指定都市問題等3市議員 連絡協議会」発足
【平成7年3月 】 浦和市議会、大宮市議会で「合併促進決議」を可決(与野市は6月に決議)
【4月】 3市に政令指定都市推進室を設置
【7月】 3市合併・政令指定都市推進行政連絡会議を設置
【平成9年1月】 4市1町(浦和・大宮・与野・上尾市、伊奈町)議員懇話会を設立
【3月】 4市1町議員懇話会で各市町の意向表明文の報告書をまとめる
【7月】 3市議会で「任意の合併協議会設置決議」を可決
【12月】 「第一回浦和市・大宮市・与野市合併推進協議会」を開催。会長に石原信 雄氏が就任
【平成10年8月】 第5回合併推進協議会にて、合併方式は3市が対等に合併する「合体合 併とする」ことを決定
【平成11年7月】 第十二回合併推進協議会第四小委員会にて、任意の合併協議会設置決 議の「上尾市、伊奈町等の意向を尊重し、誠意をもって対応」のただし書 き部分で合意
【平成12年4月】 2日合併時期を来年5月1日で合意/ 17日新市名を「さいたま」市と決定/29日法定合併協議会設置
3市合併で総面積168.33Ku、総人口1,020,077人
■全国にアピールできる
 埼玉の顔を

 七百万人もの人口がありながら、埼玉県内には政令市が存在しない。政令市誕生で全国にアピールできる埼玉県の顔を―というのが長年の願いだった。
 三市それぞれの市長選、また市議選で合併、政令指定都市移行を公約に当選してきたのを根拠に、「市民の支持は得られている」と議会主導で合併が進められてきた。住民投票を求める動きもあったが、同じ理由で議会で不採択となった。土屋義彦埼玉県知事も三市長、議会の合併への取り組みを積極的にバックアップしている。
 三市は九年に任意の合併協議会(会長・石原信雄元内閣官房副長官)を設立し、合併の期日、新市名、新庁舎の位置などについて大筋で合意したため、四月二十九日法定の合併協議会を設置した。三市とも九月議会で合併議案を議決し、来年五月一日にも合併の見通し。そうなれば総人口約百二万人の新市が誕生する。その後二年以内に上尾市、伊奈町”合流“も視野に入れながら全国十三番目の政令指定都市を目指す。
 今後は新市の将来像についての市民の合意形成、電算システムの一元化など五千近い異なる行政サービスの調整が課題となる。



“創論”  “提言”
「東部のグランドデザイン描き本格的な議論を」

サンフロント21懇話会/シンクタンクTESS研究員
中山 勝 氏
中山 勝 氏
中山 勝 氏
 「さいたま市」の誕生は市議会議員主導によるところが大きい。住民発議のもと現在、合併推進協議会(法定)を発足させ協議を進めている静岡・清水両市とは対照的な方法のため、地域の実情や住民のニーズを組み込んだものではないと思われるかも知れない。しかし、協議終盤には民間経済団体や市民が早期実現に向けた後押しを行ったことからすれば、住民不在等の論議は三市に限っては愚問であろう。
 今回、合併推進協議会(任意)において中心的に活動された方々からお話をうかがった。共通した意見は、21世紀にこの地域が発展していくためには地勢的にも複眼都市ではなくしっかりとした顔を創る必要がある、ゴールに日付を設定し問題を一つ一つクリアしていかなければならない、合併実現には強いリーダーシップが必要であるーの三点。今後ますます地域間競争が激しくなる中で地域が生き残っていくための多くのヒントが隠されていると感じた。中でも、地域づくりには戦略的なマーケティング志向が必要で、またプログラムを実行可能なものにしていくためには強い気概を持ったリーダーが不可欠であるということを強調したい。
 サンフロント21懇話会では広域連合の推進を提唱している。市町村合併、広域連合は、あくまでも住民の生活を向上させるための手段であり目的ではない。静岡県東部においても、官民一体となり自らの地域を長期的にどうグランドデザインするかを本格的に討議し、各々の役割と責任を明確にして、その実現を図ることが必要ではなかろうか。


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