サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 富士山の麓に昨年、こどもの国がオープンした富士地区で21世紀に向けた「まちづくり」への模索が始まっている。産業と観光、文化面にもっと光をあてて連携しながら快適なイメージを高め、交流人口を増やそう──との狙いだ。
 富士県行政センターはこのほど富士地区の三つのゾーンの地域振興を狙いに「21世紀の快適なまちづくり」を市民代表らと探り、提言としてまとめた。今回は、この三つの提言の座長の方たちに、富士地区の魅力や課題、また住民主導のまちづくりなどについて聞いた。

●「富士山こどもの国周辺にぎわい研究会」座長/太田眞弓さん(ふじ環境倶楽部事務局長)
●「赤がえるまちづくり懇話会」座長/荻野覺さん(富士商工会議所専務理事)
●「港と海を生かした21世紀のまちづくりサロン」座長/鈴木静江さん(女性ネットワーク・富士会長)
■聞き手 静岡産業大学学長/大坪檀 さん(サンフロント21懇話会アドバイザー)

風は東から
 
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蘇れ岳南鉄道、田子の浦 こどもの国、周辺と連携へ

荻野覺さん
荻野覺さん
工業都市から自然豊かな環境都市への転換
住民主導で始まる地域振興
大坪 富士地区といえば「製紙のまち」ですが、最近はハイテク関連産業の進出も増え、古い産業と新しい産業がうまく融合して活気にあふれています。さらに昨年「富士山こどもの国」が誕生し、ますますの飛躍が期待されています。そこへ、住民主導型の地に足の着いたまちづくりへの提言ができた。火付け役は交流人口増大を掲げる県とのことですが、ますます富士地区から目が離せなくなりましたね。
荻野 かつて富士市は産業立地を目指し、多数の企業を誘致してきました。高度成長の波に乗り、急速に工業都市として発展してきましたが、その一方で工業に偏りすぎた弊害が公害等の形で露呈した過去もあります。少子・高齢化社会を迎え、社会環境が大きく様変わりする中でこれまでの工業中心から、人々が交流し、住む人も訪れる人も快適さを実感できる豊かなまちづくりが今、求められている。そこで、県の指導で富士の三つの地域についてその可能性を調査し、提言としてまとめました。
太田 「赤がえる」の通称で親しまれてきた岳南鉄道沿線地域と、「富士山こどもの国」とその周辺地域、そして田子の浦港周辺の三つの地域です。学識経験者や行政の方が型通りの議論をすることはあっても、今回のように一般の人々が自分たちの住む地域について、これほど具体的に検討した例はあまりなかったのではないでしょうか。


地域の特徴を活かしたまちづくり
住む人ならではの視点で具体的方策を提言
太田眞弓さん
太田眞弓さん



鈴木静江さん
鈴木静江さん。
大坪 提言の内容をそれぞれご説明いただけますか。
荻野 「赤がえる・まちづくり懇話会」では、岳南鉄道と地域の関わりとの歴史を伝承すべき文化として再評価し、湧水や竹取伝説などの観光資源と結びつけることで地域ににぎわいを創造しようと提言しました。
大坪 利用が低迷しているそうですが、それは生活手段としてのこと。鉄道そのものを観光資源と考えれば、まだまだ魅力を秘めている。
荻野 駅を拠点としたウオークラリー、「赤がえる」を題材としたイメージキャラクターの活用、観光案内ボランティアの育成、駅舎を利用したジャズフェスティバルの開催と、地域に住む人ならではの発想がベースになっています。沿線に住む人々が「マイレール意識」を持ち、共に生きよう、まちづくりに活かそうといった「手作り感覚」の醸成が、この提言の重要なポイントになっています。
鈴木 田子の浦港は西伊豆の玄関口として、また、漁業や企業の荷揚げ基地として富士市の発展に貢献してきました。しかし、和歌にも詠まれた「田子の浦」も、今では歌碑にその面影をとどめるだけとなっています。
大坪 浮世絵に描かれた美しい風景も、今では「どこの浦?」という感じですね。
鈴木 残念ながら汚泥や煙突群がイメージダウンになっていることは事実です。そこで「港と海を生かした21世紀のまちづくりサロン」は、田子の浦港が住民一人ひとりに親しまれ、富士地域の振興・発展の核となるための方策を「富士を仰ぐ港づくり」、「海を活用する方策」、「港周辺でのイベントの開催」という形で集約しました。具体的には松林を美しくするクリーン作戦や、散策コースの設置などすぐに着手できるものと、マリンターミナルの設置や、海を一望できる個性的な施設整備などを盛り込みました。長期目標を決め、できることから始めていきたいですね。
太田 「富士山こどもの国周辺地域にぎわい研究会」が目指したのは「交流・自然・子ども・健康そしてまちづくり」です。
大坪 年間二十五万人が訪れるこどもの国。その人たちをどのように周辺地域に誘導するかが課題ですね。
太田 それには、交通アクセスの整備や健康な子供が集う爽やかなまちづくりはもちろん、周辺観光資源との連携や情報発信が重要です。例えば、森林保護を目的とした市民グループとの活動の連携や、酪農体験等と組み合わせた観光コースの設定、コミュニティFMの設置や、インターネットのホームページの充実などです。将来的には子供の感性をはぐくむ「子供のメッカ」に、また、よりユニバーサルデザインを活かした優しさとにぎわいのある地域にしたいと考えています。



大坪檀 さん
大坪檀 さん
これからのまちづくりに不可欠な行動力
目標、期限、役割を決め、知恵を出し合い、汗をかくことが大切
大坪 提言の内容は非常に具体的で、すぐにでも着手可能な事柄が多数盛り込まれています。実現に向けて今後どのように活動していくのですか。
太田 もちろん、提言で終わらせてしまってはいけないというのが委員の共通した思いです。今後はこどもの国に隣接する地域の方との懇談会や、こどもの国のプレイリーダーがもっと富士市内に出ていく機会を設けるといったことにつなげたいと思います。お金をかけなくても人的な動きの中で、できることはたくさんあるのではないでしょうか。
鈴木 この懇話会で清水港を視察しました。企業のバックアップもあり、活気あふれる清水港を見て私たちも夢を膨らませて帰ってきたんです。田子の浦はやっとヘドロから脱皮しただけで、船は一日に数回来るけれどトイレもなく、あるのは老朽化した休憩所だけ。これではいけない。ここに来れば名産品が買えるとか、ここから富士山やこどもの国へのシャトルバスが出るとか、夢はいっぱいなんです。せっかく提言がまとまったのですから、これを生かせる話し合いの場を作りたいと、地元の方はとても意欲的です。
荻野 三つの懇話会は当然関連していますし、できれば一つずつでも長期的な目標をつくり期限を決めて実現を図りたい。そのためにも誰が、どの団体、組織がどの役割を担うのか、フォローするのかといったことをはっきりさせていきたい。財源がないから何もできないというのは間違いで、まちづくりに大切なのはみんなが少しずつ知恵を出し合うことです。知恵を出し合って具体的な提言につなげ、出来ることからやっていく。全部を国や県、市に頼るのではなく、民間でできることは民間でやる。住んでいる我々がまず行動を起こすことが大切だと思いますね。
大坪 今回の提言は富士市の総合計画や田子の浦港の整備計画に反映できればと思います。今後の都市の発展は住民の「意志」と「行動」にあるのではないでしょうか。目標を立て、期限を決め、役割を分担し実行していく。ご出席のお三方をはじめ、市民の力をぜひ発揮して素晴らしい地域にしていきたいですね。


“創論”  “提言”
循環型社会にらみ、IT革命の推進を

富士信用金庫理事長
山本 誠 さん
山本 誠 さん
富士信用金庫理事長 山本 誠 さん

 富士の雄大な自然景観が大パノラマに広がる、この自然の美しさが、21世紀の富士地域発展の源である。その保全のためには、富士・愛鷹山麓地域環境管理計画を推進すると共に、富士山3776構想による自生種の復元、田子の浦の美しい港づくり等を進めることが必要と考える。
 富士地域は、この美しい自然を舞台に、医療・健康・科学・情報等のリサーチ、美術・音楽・演劇・歴史や文化・人材育成等のカルチャー、サッカー・野球・ソフトボール・登山・ボート・ヨット等のスポーツなどの機能を集積させれば、一層の発展が期待できる。
 私達を取り巻く衣食住につながる活動は、この自然と共生させると共に、ユニバーサルデザインによる商店街の振興、高次都市機能の集積等を推進したい。産業構造は、循環型社会のものに転換し、IT革命への対応等を進めたい。
 最近は、欧米風の新しい観光が日本にも生まれつつある。日常の生活の中のゆとりや豊かさ、コミュニケーションを求めての旅行に人気がある。そこに暮らす人々の生活や文化を生き生きとさせ、外から訪れる人たちが交流したくなる魅力的な生活文化を創っていくことは、大交流時代に向け、大切になってきている。
 生活に豊かな充実感と生きがいを与えるものは文化である。田子の浦港や岳南鉄道の周辺は、古くから人が住み、歴史の舞台ともなっていて、竹取伝承や曽我物語を始め、湧水にまつわる歴史や文化を際立たせることができれば、地域の発展にもつながる。
 次の時代を背負い、新しい文化を創造する子供達が、美しい自然、活気あるリサーチ・カルチャー・スポーツ、培ってきた歴史や文化、憧れられる生活風景の中で、心のゆとりを感じ、深い生き方を学び、豊かな感性や知恵を育み、心に残るフィールドづくりを進めることは、未来の可能性がある。富士山こどもの国を核に、これを富士地域全体に広げたい。


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