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環境省の「日本の水浴場88選」に選ばれた下田市白浜中央海水浴場
フランス・パリにあるバガテル公園の姉妹園として、4月28日、賀茂郡河津町にオープンした「河津バガテル公園」。パリ市と技術提携し、パリのローズガーデンを再現した公園には日本では見られなかった貴重な品種を含む1100種、60000本のバラが植栽されている。花いっぱいのまちづくりを目指す河津町に“バラ”という新たな魅力が加わるとともに、公園を拠点とした日仏文化交流の高まりが期待される。モーリス・グルドー=モンターニュ駐日フランス大使、公園を管理運営する第三セクター「花の蔵」社長の桜井泰次河津町長、共同企画運営会社「バガテルジャポン」の若山利文会長に、公園の魅力と可能性について伺った。

Jardin de Bagatelle


風は東から
 
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日仏の文化交流の舞台 バラ庭園「河津バガテル公園」誕生

モーリス・グルドー=モンターニュ 駐日フランス大使
モーリス・グルドー=モンターニュ 駐日フランス大使
パリ政治学院卒業後、パリ第二大学、国立東洋言語文化学院などを経て、1978年外務省入省。インドならびにドイツ大使館勤務後、本省広報情報通信局長、ジュペ首相官房長、大統領府(シラク大統領付個人代表)など歴任。1998年より駐日フランス大使を務める。
生きたフランス文化を演出
――河津バガテル公園の狙いは何でしょうか。
桜井 伊豆の東海岸にある河津町は、海あり山あり温泉ありの自然豊かなまちです。「花のまち・河津」として、早春の河津桜、日本一早咲きの花菖蒲をPRしていますが、今回の開園により秋まで咲き続けるバラが加わり、河津ならではの”花ごよみ“が完成します。もともと盛んな花卉生産に、花がテーマのサービス産業が加わることで「花いっぱいのまちづくり」にも大きな弾みがつきます。また河津を拠点とした新しい日仏文化交流の促進にも取り組んでいきたいですね。
――パリのバガテル公園がこのような形で河津にできることをどう思われますか。
仏大使 大変光栄です。一般の日本の方々がフランス文化に関心を持っている表れだと思うからです。バガテル公園はフランスの十八世紀の伝統的な構造をそのまま再現しているもので、その庭園の受け皿として静岡県河津町が選ばれたことは本当に素晴らしいことだと思います。
――若山さんは橋渡し役としてご苦労があったかと思いますが、河津バガテル公園の特徴、魅力は何でしょうか。
パリ市郊外ブローニュの森にあるバガテル公園
パリ市郊外ブローニュの森にあるバガテル公園。ローズガーデンは1907年に誕生。毎年6月に行われる国際バラ新品種コンクールは今年で93回を迎え、歴代チャンピオンフラワーの子孫が世界中のバラ愛好家を魅了し続けている。
若山 日本に初めて再現された幾何学模様の美しいローズガーデンといえるでしょう。そこには何世紀も培ってきたフランスの美意識が息づいています。これから中に入れるソフト、文化交流のプログラムが始まりますが、日本とフランス両国民の手でいいものに仕上げ、生きたフランス文化を演出していきたいと考えています。
――この公園を核にしたどのような町の将来像を考えていますか。
桜井 標高100メートルの春ノ蔵台地に位置するバガテル公園は伊豆の山々を背景に、河津の町並みから海までを望む景勝地。ここを日本とフランスの文化交流の拠点としていく考えです。三年後に、町内の六千坪の敷地にフレンチラベンダー畑を造る計画もあります。一年中花が咲き誇る日本一の花の町を目指します。


つぼみから花へ
桜井泰次 河津町長
桜井泰次 河津町長
(株)花の蔵 代表取締役社長
日大経済学部卒業後、(株)桜井に入社。その後、七滝温泉ホテルの経営に従事。昭和41年10月、河津町議に初当選。五期務めて、昭和61年4月より河津町長、現在四期目。河津町を花の町にする政策を推進中。
――この公園を核にした文化交流の展望があれば、お聞かせ下さい。
仏大使 日仏関係を一つの花に例えるなら、つぼみだったものがバガテル公園という大きな花となって開こうとしているのではないかと思います。すでに様々な分野で活発な日仏交流ですが、その基本は日本人とフランス人の持つ文化的なもの、美的なものに対する関心、感性が通じ合うことではないかと思います。園内にはマリーアントワネットによって建てられた田舎小屋(アモー)を再現したフレンチレストランをはじめ、多くの美しい施設が並びます。今後は両国が手を携えて、それらを最大限に活用し魅力的なものにしていくことが重要ではないでしょうか。大使館としてもお手伝いさせていただきますし、今回のプロジェクトに携わったパリ市の庭園緑地管理本部も協力を惜しみません。
――公園を作る段階でパリの技術者が指導に当たり、日本の技術者との交流があったと聞きましたが。
若山 三カ月に一回、パリ市の庭園技術者が来日し、日本からも庭師がパリ市で教育を受けました。その関係者たちは言葉を超えて、何百年というフランスの伝統・文化に根ざしたプロジェクトに関わっているのだというプライドと喜びを分かち合いました。今、両国の友好の土台ができたと思っています。
――将来的な交流の具体的なプランなどを考えていますか。
若山 パリのバガテル公園で九十四年前から開かれている国際バラコンクールを河津町でも遅くても2004年までに開催する計画です。また、フランスの芸術週間という形で、現代のフランスの芸術家を日本で紹介し、絵画や写真の展覧会を開くことも検討しています。今年、フランスの伝統的なスポーツ・ペタンクの日本選手権の決勝を園内で行い、来年は国際チャンピオン大会を河津へ招致することも考えています。日本の学生によるフランス語弁論大会、フランス人留学生による日本語弁論大会も企画しており、ほぼ毎月イベントを開く方向です。



若山利文 (株)バガテルジャポン 取締役会長
若山利文 (株)バガテルジャポン 取締役会長
東京外大仏語科卒業後、日本交通公社ならびに在日フランス大使館勤務。昭和43年、日本ユーロテック(株)を設立し、取締役社長に就任。数多くのフランス系企業と合弁事業を展開。平成12年、(株)バガテルジャポンを設立。
共通する感性
――フランス人の文化を大切に守り育てていく象徴の一つがバガテルだと思うのですが、日本人の感性と共通するものはありますか。
仏大使 日本とフランスは古くからお互いに影響を与え合い、そこには共通の感性がありました。美術の分野では日本技術がなければジャポニズムは存在しませんでしたし、アールヌーヴォーという新しい流れは誕生しなかったでしょう。また、日本人もフランス人も食べること、飲むことが好きであり、それを楽しい雰囲気で行うことが好きです。フランスではそのような生活様式をアール・ドゥ・ヴィーヴルと呼んでいますが、今回のプロジェクトの中で、生活様式も含めて紹介してくださることを大変評価しています。きっと日本の皆さんに、人生をおう歌する十八世紀のフランスの精神を理解していただけるのではと思っています。
――花だけではなく、文化の交流という意味を持ったレストランなどもでき、そこが非常に意義深いところではないかと思います。
桜井 園内のレストランでは、有名フランス人シェフがプロデュースする地元産の素材を生かしたフランスの田舎料理を堪能することができます。またワインやチーズなどフランスの食文化を気軽に楽しめる施設もあるんですよ。
――このような例は全国的にあるのでしょうか。
若山 箱モノのテーマパークはたくさんありますが、何世紀もかけて国民が培ってきた伝統・文化を一緒に参加する形で提案するプロジェクトは初めてだと思います。バガテルのバラ園は名実ともに日本一でしょうし、そこに展開する文化的な質の高さは、これまでに類を見ないものでしょう。
――パリないし母国での反応はいかがですか。
仏大使 フランス文化を愛してくださる方または理解しようとしてくださっている方のための文化というのがフランスの文化です。ですから私たちのノウハウが提供できるということに誇りを感じています。今回フランス本国の形的なものだけではなく、そこに流れる精神的なものも同じように再現されることは大変素晴らしいことだと思っています。
――フランスの大統領も訪れる伊豆ですが、ぜひこれを機会に伊豆とフランスがもっともっと交流を深めて、仲の良いお付き合いができることを心から願っています。
●聞き手 伏見一成 静岡新聞社・   SBS静岡放送東部総局長


  “創論”“提言”
「ジャルダン・デ・バガテル !」

静岡芸術文化大学教授/深井晃子
静岡芸術文化大学教授/深井晃子

「ジャルダン・デ・バガテル !」
静岡芸術文化大学教授/深井晃子


 河津にパリのバガテル庭園の姉妹園ができる、それを聞いてわくわく、どきどきしています。と言うのもパリにあるこのバラ園は、私の夢の庭だからです。初めて訪れた時、それまで見たこともないような美しいバラが、それも数え切れないほど咲いているバガテル庭園に、すっかり虜になりました。家のしょうもないバラを、樹の形くらいはバガテル仕立てにできないものかと試みたほどです。
 フランス文化の神髄は、自然と人工の見事な調和にあると言えるのですが、このバラ園はまさにそれを伝えています。これからは、パリまで行かなくても私の夢の庭園が見られるのです。期待は膨らみます。
河津バガテル公園にはバラ園とともに、芸術文化やショッピングが楽しめる8世紀のフランスを思わせる施設も併設されているということです。パリから移植されたバラはきっと、河津と言う土地に根付きその空気をすって、新たな美しさを発揮するにちがいありません。しかし、文化自体はその土地に永年かかって育まれた物ですから、元の場所で、元の時代に存在する以外、生きるのは難しいことなのです。日本各地に相次いでできたテーマパークの問題点はそのあたりにもあったわけです。河津バガテル公園についてもバラ園への大きな期待とともに、その点は少し気がかりですが、ともかく一度ぜひ見に行きたいと思っています。

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