金子 実氏 経済産業省関東経済産業局産業企画部長
日本の地域産業集積の多くは、大企業の下請け中小企業が集積している”企業城下町的なケース“。長野県諏訪の精密機械や浜松のオートバイなどがよく知られている。グローバル化の進展に伴って、大企業の生産拠点が海外へシフトし、下請け企業は打撃を受け、産業の空洞化が深刻だ。他方、工業団地に大企業を誘致した産業集積では、生産拠点から研究開発拠点に衣替えをしているところが多い。首都圏にはニッチな分野で製品開発力を発揮し高いシェアを確保している独立系中堅中小企業の集積などもある。
いずれの産業集積においても、研究開発力や製品開発力が、国際競争力を持つ企業として発展していけるかどうかのカギになる。産学連携はこうした開発力を高めるために必要な交流促進の動きの一つである。大学のTLO(テクノロジー・ライセンス組織)を活用した広域的な連携が欠かせない。世界的に有名なアメリカのシリコンバレーを例に取れば、研究者同士の交流が柔軟かつ密接であることが特徴。交流を通して知識・情報が入り、相乗効果でいい人材や資金がどんどん集まり、至るところで研究開発の芽が生まれる。まさにアメリカの技術開発、製品開発の温床になっているといえる。
残念ながら日本の産業集積にはまだそこまで機能していない。日本の場合は組織の枠が力を持っていて、個人レベルでの交流が十分に行われていない状況にある。その解決が今後の課題といえる。
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