サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
トップ 最新情報 政策提言 活動内容 サンフロント21懇話会とは 飛躍 風は東から

 「花めぐり半島」と呼ばれるほど、ほぼ一年中季節の花を楽しめる伊豆地域。入り組んだ海岸線や半島の中心に連なる山々の起伏に富んだ地形は、下田海岸のゆうすげやはまぼう、天城山脈のしゃくなげといった多様な花々を育み、訪れる人々に美しい風景と感動を提供する。花の産地としても名高く、カーネーションやマーガレットは国内有数の出荷量を誇る。
 一昨年開催された伊豆新世紀創造祭(伊豆祭)ではこの花をテーマに様々な試みが行われた。花を巡る観光ルートの開発や遊休農地の有効利用、ボランティア組織のネットワーク化などの活動は2年目を迎えさらに磨きがかかる。また2004年の国際園芸博をにらんだ動きも活発化してきた。官民が連携し市民ネットワークなどの力を借りながら、それぞれの地域がそれぞれの特色を生かした新しい「花のまちづくり」を模索している。
風は東から
 
バックナンバー


伊豆に芽生える花のまちづくり 日本一の「花めぐり半島」を目指して
「ガーデンシティ構想で観光熱海を復活」
/熱海市
 2004年の国際園芸博のサテライト会場に名乗りを挙げた熱海市。すでに熱海梅園をはじめ市内8カ所が認定されたが、市内全域を認定するよう運動中。浜松市の本会場に対して東部の拠点として「ガーデンシティ」を目指したい考えだ。
 同市では昭和40年頃から市民ボランティアを中心に市内各所で花の演出を行ってきた。年2回市庁舎前で配布されるパンジーやマリーゴールドなどのマスコットフラワーは年間7200鉢、既に0万鉢におよび、平成4年にはみどり農水課の中に「花とみどりの係」を発足させ、市民との連携をさらに綿密にした。
 「花のまちづくり」を「ガーデンシティ構想」と位置づけ、寄せ植え教室を年数回開催するなど市民のレベルアップに乗り出したのは平成8年から。伊豆多賀駅前の「さくらの名所散策路整備事業」や熱海桜の有料配布などソフト、ハード両面から「花のまちづくり」も推進している。「熱海の花は4つ。花火や光の花、芸妓の花、植物の花、そしておもてなしの心の花。かつての華やかな熱海をこの”花“を通じて取り戻したい」と花とみどりの係の木村加寿子係長は話す。古い熱海のイメージを払拭し、姉妹都市であるイタリア・サンレモ市のような陽光と緑と花に満ちあふれた新しいリゾートとして生まれかわることを期待する。
■お問い合わせ/熱海市みどり農水課 0557‐86‐6216

 


「”梅“を核にした 地域おこし」
/大仁町
 伊豆半島の中ほどに位置する大仁町。市街を一歩入ると手つかずの自然が多く残る。
 そんな山の中腹に大小約300本の梅が咲き乱れる大仁梅林がある。町ではこの梅を核にした「まちおこし」を推進中だ。
 一昨年の伊豆祭では「梅のオーナー制度」を設け、2年間で約200本の梅の苗木を植栽した。町内外から広くオーナーを募り、梅の成長ぶりを楽しみに何度も町を訪れてもらおうという狙いだ。今年度からは住民への梅の配布も始まった。すでに50本もの引き合いがあり、将来的には大仁梅林だけでなく町内各所で可憐な梅の花を見ることができるようになる。
 さらに中心市街地活性化の一環として始まった食文化向上事業では、梅にちなんだ菓子や料理などの商品開発も研究する。「単に”花“としての観光誘客ではなく、まちおこしのテーマとして様々な面で活用していき、”大仁梅“を新しいブランドにまで高めたい」と語るのは内田隆久大仁町観光協会長。官民一体のまちづくりを推進していくための原動力にしたいと意気込む。
 2月23日、24日には大仁梅林恒例の「梅まつり」が開催される。約200人の愛好家が集う俳句大会や田楽、神楽といった催しに加え、梅あんころ餅や梅アイス、甘酒などの無料配布なども行われる。
■お問い合わせ/大仁町観光協会 0558‐76‐1630


芹澤 伸行 氏
 
「地域特性を活かした花のまちづくり」
/〔花咲くしずおか〕伊豆地域推進協議会
 平成年度より県全域で進める「花咲くしずおか」運動。閉幕した「しずおか緑・花・祭」や2004年に開催予定の「しずおか国際園芸博覧会」などを契機に花と緑にあふれた美しい県づくりを行おうという運動だ。平成16年度末までに事業活動を市町村ごとにとりまとめ、県内74市町村に県の基本構想を加えた75カ所の”花物語“として県下全域で花と緑の環境づくりを進めていく。伊豆地域では県伊豆農林事務所が主管となり、管内7市町村の花壇づくりグループをバックアップしたり花壇コンクールなどを開催したりしている。
 さらに、全国でも有数の花の生産高を誇る同地区の特性を活かし、現状ではほとんど連携していない民間花団体と生産農家と7市町村の行政を結び付けることで双方にメリットのある、地域に根ざした仕組み作りも模索する。伊豆農林事務所の秋永えみ子主幹は「静岡県のマーガレットの生産量は全国2位。そのうち90%が伊豆。カーネーションは全国7位で県の65%を伊豆が占める。市民ボランティア中心の活動に生産農家の力を加えるなど、伊豆地域ならではの花のまちづくりを推進していきたい」と話す。
■お問い合わせ/静岡県伊豆農林事務所 0558‐24‐2076
 


「農地利用で新しい花の名所づくり」
/松崎町、天城湯ヶ島
巨大な花畑
約6万5千平方メートルの花畑。
 なまこ壁、長八美術館で有名な松崎町では、花いっぱい運動の目玉として農閑期の3月上旬から5月上旬まで巨大な花畑づくりを行う。場所は那賀川沿いの約6万5千平方メートルの水田。
 3月上旬、花畑一面を橙色に染めるアフリカキンセンカに始まり、4月には姫金魚草やツマシロヒナギクなどが次々に開花、桜並木と美しいコントラストを見せる。4月下旬からひなげし、千鳥草などが咲き始め、いよいよ終盤。5月3〜6日の3日間は花狩りに開放し、訪れた人は自由に花を持ち帰ることができる。商工観光課の山本公係長は「昨年の反響から地元耕作者の理解も得られ、今年は一万uも広げることができた。花の時期にはぜひ多くの人に見に来ていただきたい」と抱負を語る。
 一方、中伊豆天城湯ヶ島町では昨年度から町内9カ所の遊休農地に花畑をつくる事業をスタートさせた。春には菜の花、秋にはコスモスが美しい花姿を誇る。場所によっては菜の花の芽が鹿に食べられてしまったというエピソードもあるが、現在は今年の3月の開花に向け順調に育っている。地元ボランティアの協力で町内各所の花壇づくりも並行して進められる。花に対する町民の意識は高く、花壇コンクールや報奨制度もあり、緑濃い天城の自然をバックに美しい花々が色を添える。
■お問い合わせ/松崎町商工観光課 0558‐42‐3964・天城湯ヶ島町自然環境観光課 0558‐85‐2604



「花の見どころつなぎ、広域観光の道をさぐる」
/南国伊豆観光推進協議会
 賀茂地区の7市町村の観光協会で構成する南国伊豆観光推進協議会(南推協)。昨年夏に好評を博した「花めぐりバス」を今春も実施する。熱川〜下田間を中心に河津
バガデル公園や奥石廊崎ユウスゲ公園などを巡った昨夏の東南ルートに対して、今回は春の花が楽しめる南西ルートでの開催。3月9日から24日までの土・日計6回実施し、宇久須の花狩り体験、賀茂村コレクションガーデン、らんの里堂ヶ島、松崎・那賀大型花壇を巡る。土曜日は修善寺駅を、日曜日は下田駅を起点にする。参加費は二千円必要だが、全員に立ち寄り施設で昼食や土産物購入に自由に使える500円クーポン券を4枚進呈(当日有効)。またバスから下車するときには記念品としてポット付きの球根もプレゼントする。
 南推協の山田恵子事務局長は「南国伊豆は春夏秋冬いつ来ても”花“が楽しめることが特徴です。また、見るだけでなくカーネーション狩りなども安価に体験できます。これら点在する花の魅力を線で結ぶことでもっと多くの方に伊豆の花を楽しんでいただきたい」と話す。「花めぐりバス」は来年度以降も継続して実施する予定。のんびりバスツアーで伊豆の花を満喫してみてはいかが。
■お問い合わせ/南国伊豆観光推進協議会 0588‐22‐0521


「花めぐり半島 伊豆へ向けて」
 
 大交流時代を迎えたいま、地域間の競合はますます激しくなることが見込まれる。地域のオリジナリティが問われる中、「花に際立つ地域づくり」は伊豆の豊かな風土を存分に活かした手法として大きく期待される。成功のカギはその優れた「ネタ」をどうまちづくりに活かしていくか、地域に住んでる人、地域を訪れる人に具体的にどう提示していけるかにかかる。
 息の長い取り組みが必要なまちづくりでは、実際の担い手が草の根ボランティアという現状も大きな課題のひとつ。郷土愛をベースに地域住民が積極的に関わっていけるような仕組みや統一認識の構築が必要だ。「しずおか緑・花・祭」に関わった緑化計画に詳しい地域プランナーの佐原宏康氏は「まちづくりにおいて花はあくまで手段。その過程を通じて地域に何を残せるか、また続けていけるだけの仕組みや意思を作っていけるかが重要」と指摘する。さらに「地域固有の文化や産業、人々の暮らしなど地域の息づかいが伝わってくるような花、それが住む人や訪れる人の心を打つ」と続ける。
 本格化する大観光時代に向けて、伊豆各地で行われる「花のまちづくり」は、試行錯誤を繰り返しながらも確実に成長している。「花めぐり半島 伊豆」として、世界に誇る大輪の花を咲かす日はそう遠くはないようだ。    


小森輝代 (フラワーコーディネーター)
小森輝代 (フラワーコーディネーター)
土曜ワイドラジオEAST (SBSラジオ毎週土曜日11:00〜)に生出演中

「花と暮らし」
フラワーコーディネーター 小森輝代

土曜ワイドラジオEAST (SBSラジオ毎週土曜日11:00〜)に生出演中


 昨今のガーデニングブームには花を生業にしている私からしても目を見張るものがあります。その背景には素人でも簡単に美しい花を咲かすことのできる苗の開発や、海外から珍しい、品質の良い苗がスムーズに輸入できるようになったことなどが挙げられます。お客様も花のことをよく知る人が多くなりましたし、個人の家の庭や公共の場、街路への花の植栽をよく目にするようになりました。ふと立ち寄った街角でパンジーやチューリップなどの見知った花に出会うとホッとするのは私だけではないでしょう。
 花は人の心を和ませます。色や香り、見た目の美しさに引きつけられるのはもちろん、桜やアジサイ、金木犀の咲く姿に季節の移ろいを感じ、草花の成長に人も共に自然を生きているという安心感を抱けます。「花」には現代人が求めてやまない”癒し“を与える力があるのです。
 伊豆は花の名所が多く、季節になると各地から花の便りが聞こえてきます。下田の水仙、河津の花しょうぶやバラ、天城のしゃくなげ…どれも素晴らしいものばかりです。見て楽しむだけでなく、例えばその土地土地で採れる旬の味を組み合わせて楽しむ。そんな新しい花を通じた地域の味わい方も素敵ではないでしょうか。
小森輝代
(フラワーコーディネーター)
土曜ワイドラジオEAST (SBSラジオ毎週土曜日11:00〜)に生出演中

 


■企画・制作/静岡新聞社営業局

▲ページトップ
入会案内お問い合わせ事務局案内リンク Copyright(c) SUNFRONT21.ALL RIGHTS RESERVED.