サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 ファルマバレー構想は、将来的に有望な医療・健康産業分野に特化した先進の研究開発とネットワークづくりを推進する。製薬などの企業立地が盛んな県東部の特性を十分に生かした取り組みだ。静岡がんセンターやがんセンター研究所といった国内を代表する先端研究機関との共同研究・開発を目指す関連企業・施設などの進出、産学官の連携交流を通じた新しい産業創生なども見込まれている。
 こういった構想の狙いをいかに自らの地域に具体的に取り込んでいくかが県東部全体の課題であり、富士山麓の周辺地域をはじめ、それぞれの地域でその特性に応じたプランの策定と実践が求められている。
 「風は東から」6月号では、先行する民間主導の取り組みを紹介し、地域が一体となった構想推進のための課題や、構想との連携協力による相乗効果などを検証する。
風は東から
[ファルマバレー構想特集]
シリーズ3
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構想生かし地域づくり推進 産業創生に不可欠な産学官連携
コンセプト重視の民間リサーチパーク構想
 ファルマバレー構想が推進される中で期待されるメリットの一つに、研究施設や関連企業誘致による地域経済の活性化が挙げられる。構想の狙いはそういった新しい地域の需要をいかに高めていくかであり、今後、構想が具体化する過程でこうしたニーズが県東部に高まっていくことが予想される。
 このような背景から、ファルマバレー構想との連携を強化し、積極的に活用していこうとする民間主導のリサーチパーク構想がある。富士宮市粟倉にある「富士山麓(ろく)リサーチパーク」だ。約44ヘクタールの緑豊かな敷地に健康と創造をテーマとした医療、健康、福祉、環境などのさまざまな産業や研究機関を集積する、全国でも珍しいコンセプト重視型のリサーチパークとして注目を集めている。
 核となる施設は、世界的にも有名な抗体作成技術を持つ矢内原研究所と、生活習慣病に実績のある吉見内科クリニック。両施設は神経伝達物質の共同研究を行っており、今後は静岡がんセンター研究所とも共同研究を進めていく予定だ。
 矢内原研究所ではすでに大手製薬メーカーと共同で環境ホルモン、特にダイオキシン、PCBなどの簡易測定キットの開発を行っている。こういった事業には、キットの開発を行う矢内原研究所、共同開発と製造・販売をする大手製薬メーカーだけでなく、検体を測定する企業、測定機器の開発をする企業などさまざまな周辺サポートが必要となる。
 「富士山麓リサーチパークの特色は一貫したテーマで中核施設と関連する周辺事業を集積していくこと」と語るのは富士東洋の森鰍フ吉嶋敏行営業部長。地元富士宮市の支援のもと、三年後の開業に向けて近々造成工事に着手する。まずは一期工事にあたる研究開発ゾーン、続いて研修施設などの付帯施設を整備する二期工事に進む計画だ。
 こういった大規模リサーチパークが整備されると企業進出による税収の増加に加え、周辺への住居の確保や雇用の創出など、地域経済への波及効果も大きい。富士宮市でも、九年程前から総合計画の理念に合致するこのリサーチパークに対し側面的な支援策を行ってきた。民間主導のため補助金などの優遇は行えないが、今後も国道469号を含めた周辺交通網の整備、許認可などのスムーズなとりつけ、企業誘致のための積極的な情報提供を行いたいとしている。
 吉嶋部長は「私どもは単なる土地販売ではなく、進出企業に対しリサーチパーク内外との連携をどうサポートしていけるかといったところまで踏み込んで事業を進めている。先端研究機関やファルマバレーセンター(PVC)が進める産学官の活発な交流から多くの情報提供が受けられるのもファルマバレー構想の大きなメリット」と語る。
 


地域の特色を生かした民間主導の産学官連携
 ファルマバレー構想の重要なテーマの一つに産学官連携の推進がある。従来の産学官の障壁を取り払い、医療・健康産業分野に特化した連携強化、ネットワークづくりが課題だが、一部の地域では民間主導による新しい産業創生に向けた取り組みが始まっている。
 県中小企業団体中央会東部事務所と富士市は「富士山麓医療関連機器製造業者等交流会」を開催している。富士・富士宮、沼津地域の医療関連機器・用具の中小製造業者と、東海大学開発工学部、県の工業技術センターなどで構成され、産学官が連携する中から新規参入が図りやすい使い捨ての機器・用具などの開発を目的とした交流会だ。
 「中小企業は研究開発に大きな投資が難しい。そこで安価にでき、医療用具として審査の厳しくないものを対象に検討し、新たな製品の開発を目指している」と中央会東部事務所の植田勝智副所長。東海大学開発工学部の金井直明教授の研究をもとに、医療現場のニーズを看護師、臨床工学技師などの専門家から提供してもらい、改良を重ねている。
 そうした中から、緊急時に一般の人でも簡単に人工呼吸ができる「手動式人工呼吸器用マスク」の開発が進んでいる。一番の特徴は素材と形状を改良し、マスクから空気を漏れないようにしたことで送気効率が高くなったこと。簡単に、しかも従来製品よりも効率的に酸素供給ができることから、医療用や救急救命用、もしくは一般家庭に予防的に置くグッズと用途は広い。
 まもなく製品化の見通しだが、医療用具の場合には厚生労働省の認可が必要となる。その場合は各種医療機関で評価をしてもらう予定だ。「ファルマバレー構想ができ、PVCができたことで、交流会がクリアできない課題を相談できる。また、専門的で高度な情報を得ることができるようになった。先のマスクのような成果を専門家の目で評価してもらう機会もできた」と植田氏は構想を評価する。
 また人工呼吸器用マスクの研究は財団法人しずおか産業創造機構の「地域イノベーション促進研究開発事業」にも認定された。この事業は特色ある産業の創出を目指して、地域の産学官が協力し、特定分野の基礎的、先導的研究開発を促進することが狙い。今年度はマスクをはじめとする八つの研究テーマを対象に、東海大学開発工学部、国立沼津工業高専、静岡県立大学、沼津工業技術センターと民間企業三社で行う共同研究を3年にわたってサポートする。支援額は総額3000万円と必ずしも十分とはいえないが、こういった新しい産業創生の芽を具体的にサポートする仕組みも整備されつつある。
 


県東部にニーズの高い産業創生とリサーチパーク構想
 PVCが行った県東部21市町村ヒアリングでは、富士山麓地域の市町村の多くが既存の研究施設や大小さまざまな企業集積などを背景に、医療・健康関連のリサーチパークや産業創生を進めたいとの意向であることが明らかになった。
 このような地域振興の視点に立った場合、ファルマバレー構想が推進する医療・健康産業の将来性はきわめて有望だ。少子高齢社会の到来による市場の拡大に加え、近年、海外への生産拠点のシフトが著しい製造業に比べ、医療機関、大学や製薬メーカーなどとの密接なコラボレーションが必要となる医療・健康産業ならば簡単に移転されることもない。また、県東部はもともと医療関連企業が進出しているので誘致もしやすい。
 その意味では、今回紹介した二つの事例は参考になる動きといっていい。地域の活性化を図る上で、ファルマバレー構想と歩調を合わせることはもちろん、地域の特性に応じた振興策にこうした先行事例をうまく取り込み、相乗効果を獲得していく必要がある。
 県内ではすでに、中部の「都市エリア産学官連携促進事業」、西部の「知的クラスター創生事業」といった、産学官が連携して地域産業の育成を目指すという国レベルのプロジェクトが進行中だ。規模こそ小さいが「地域イノベーション促進研究開発事業」を足がかりに、将来的には国レベルの産業振興プロジェクトを呼び込み、世界を視野に入れた一大産業エリアをこの東部に創生することも、構想が具体化される中で実現可能になってくる。
 5年後、10年後の県東部がどのような地域になっているかを見据え、地元の製造業者や大学、医療機関のコラボレーションを行政、商工会議所を含めた地域が積極的にサポートしていくシステムの構築が、構想を進める上での喫緊の課題といえよう。
 


■PVCインフォメーション

「ファルマバレー研究開発フォーラム」 会・員・募・集!
 医療・健康関連の共同研究や技術開発、起業化や産業化を促進するための情報交流や人的交流を深める「ファルマバレー研究開発フォーラム」の会員を募集します。ファルマバレー構想の趣旨に賛同する県民、民間企業、大学・研究機関、医療機関、行政の方々など、どなたでも参加いただけます。入会金、会費は一切無料です。
 会員の皆様にはメールにて、交流会やシンポジウムなどの開催案内やファルマバレー構想に関するさまざまな情報を提供してまいります。

応募方法  以下のアドレスから応募フォームにてご登録下さい。
●URL:www.scchr.jp/pvc/
詳しくは「ファルマバレーよろず相談窓口」
● TEL:055-980-6333
● FAX:055-980-6320
● E−mail:pharmvalley@diamond.broba.cc

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