サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 4月に、構想推進のかなめとなるファルマバレーセンター(PVC)が開設され、具体的な動きが見え始めたファルマバレー構想。社会における健康増進の重要性は今後ますます高まっていくことから、一部の市町村では「健康」をキーワードに、住民の意見を積極的に採り入れたまちづくりへの取り組みが始まっている。
 9月の「風は東から」では、この構想を追い風に、恵まれた交通アクセスを背景に、地域資源を有機的に結びつけた拠点整備を目指す三島市と、既存の健康施策を見直し、さらなる健康増進モデル都市づくりに向け新たな取り組みを始めた裾野市を取り上げ、市長のインタビューを交えながら両市が目指すまちづくりを紹介する。
風は東から
[ファルマバレー構想特集]
シリーズ6
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構想弾みにまちづくり推進 住民主役の「健康都市“」目指す
構想と連携した拠点整備を通じて都市環境の充実狙う
小池政臣 三島市長
小池政臣 三島市長

  ―三島市―

 三島駅の北口に広がる約9900平方メートルの空き地。ことし3月、三共(株)三島工場が平塚工場に移転・統合された結果、生まれたものだ。三島市にとってこの場所は交通の拠点であり、北に工業地域、徒歩数分の距離には大学や高校が林立する文教地域が広がる。ファルマバレー構想の一翼を担う静岡がんセンターの玄関口でもあり、患者・家族、医師はもちろん、製薬メーカー、研究者が全国から訪れる。こうした特徴を反映して整備ニーズも幅広い。今後一年をかけ、さまざまな視点から議論を積み重ねようと専門家、有識者による懇話会を立ち上げ、北口広場の拡充、アクセス道路などの都市基盤整備、高次都市機能を備えた商業、業務の集積を図るための整備計画を策定する。同時に、住民の意見を積極的に取り込もうと市民会議(ワークショップ)も立ち上げた。参加者は自営業、会社員、学生、主婦とさまざま。集約した意見を懇話会に提言し、整備計画に盛り込む。
 一方、建設が進む東駿河湾環状道路は平成19年後半の供用開始が見込まれている。環状道路玉沢インター予定地の谷田地区には、社会保険三島病院と、それに隣接して県民の健康づくりの拠点である県民総合健康センターがあり、市はその周辺約6万平方メートルの土地を取得している。玉沢インターが開設すれば社会保険病院から静岡がんセンターまでは車で10分。抜群の道路網を生かし、この地域は市の土地利用計画では医療・健康・福祉・スポーツ拠点を整備する地域として位置づけられている。「1km圏内には国立遺伝学研究所や竹倉温泉などもあり、それぞれの資源を有機的に連携づけ、活用したい」と小池政臣市長。リサーチパークに向けて関連施設の誘致を進める考えだ。
 同市の取り組みはハード整備だけにとどまらない。市を代表する各界、各層のメンバーからなる「三島市ファルマバレー懇話会」(仮称)を設けた。静岡がんセンターの山口建総長、国立遺伝学研究所の堀田凱樹所長、ファルマバレーセンターの井上謙吾所長など、健康、医療、研究各分野のオーソリティーが名を連ねる。今後、同市のブレーンとしてこれら拠点整備を進める中でまちづくりの方向性を提言してもらう考えだ。
 こうした取り組みに大きく貢献するのが、10月からの新幹線「ひかり」の停車本数増。上下合わせて1日6本から倍の12本に増え、交通・交流拠点としての三島駅の重要性はますます高まる。「ここにPVC機能の一部誘致や、SOHO、ミニラボ、交流施設、商業からなる高次都市機能ビルの整備を促進し、構想推進に弾みをつけたい」と小池市長。
 市内全域が「先端健康産業集積特区(外国人研究者の受け入れ期間延長など)」に指定されたことも構想を進める上での追い風となった。三島市はこれら一連の取り組みを通じて健康増進・医薬研究の交流拠点、健康都市宣言にふさわしい健康都市三島市の形成と、ファルマバレー構想の中心的役割を担う東部のリーダーとしての地位を確立しようと意気込む。


構想追い風に国内有数の健康都市づくりにまい進
大橋俊二 裾野市長
大橋俊二 裾野市長

ヘルシーパーク裾野
ヘルシーパーク裾野

ワークショップ「裾野ヘルシーアップ作戦会議」
ワークショップ
「裾野ヘルシーアップ作戦会議」
  ―裾野市―

 7月末にスタートした住民参加型ワークショップ「裾野ヘルシーアップ作戦会議」は、県の補助を受けた裾野市健康増進モデル都市計画策定事業の一環として、生活者の視点から魅力ある健康増進の仕組みについて市民自ら検討してもらうことを狙いに始まった。参加者は観光協会、商工会、農業関係者、地域の保健委員など30人で、検討結果は有識者や専門家による検証を加え、裾野市第三次総合計画(後期計画)に反映させる方針。
 裾野市は、「市民一人ひとりが健康であれば、良い仕事、良い家庭、良い地域社会ができるようになり、良い裾野市ができる」という大橋俊二市長の理念のもと、平成7年に健康文化都市を宣言し、健康、文化、福祉を主軸にさまざまな事業を展開してきた。体だけでなく心の健康も重視し、健康と教育の二つの価値観をまちづくりの根幹に据えている。小児医療費の無料化を他市町村に先駆けて行い、小学校低学年での教師の「多人数学級化」にも力を入れている。健康診断の無料化(40歳以下・70歳以上等)や、観光よりもむしろ市民の健康づくりにポイントをおいた温浴施設「ヘルシーパーク裾野」の整備など、健康施策の充実度は高い。「温泉を利用した健康づくりで老人医療費が3%減ると言われている。裾野市に当てはめれば約9000万円の削減につながる」と大橋市長。
 また、ファルマバレー構想が進んでいく中でこの地域に集まる人材やノウハウなどを吸収し、同市が目指す健康文化都市の実現に向け積極的に活用していく考えだ。
 今年度は裾野市健康増進モデル都市計画に沿って、幅広い世代の市民が気軽に、積極的に参加できる「裾野ならでは」の健康増進プログラムをとりまとめる。「この仕組みが市民の健康増進に資することはもちろん、裾野市の魅力として内外に発信されることで、観光交流や産業の活力を高めることにつながれば」と大橋市長もワークショップに大きな期待を寄せている。
 


■市民の健康づくりへの取り組み

(1)茨城県大洋村 「高齢者の健康づくりモデル地域」

 茨城県の南東部に位置し、鹿島灘に面する人口約1万人の村。筑波大学などの研究機関と連携し、高齢者の生活機能の維持・向上のための運動プログラムを開発、「健康寿命」の延長と医療費負担の軽減を目指している。
 健康づくりの拠点施設「とっぷさんて大洋」では、運動習慣確立のための啓蒙・実践事業の展開や、老化防止のための事前予防的健康増進、健康的・自立的な生活の支援事業などを行っている。

(2)愛知県高浜市 「『オンリー・ワン』をめざす健康・福祉先進都市」

 人口約4万人。高齢者福祉、健康関連の先進的な施策を推進している。
 健康・福祉・生涯学習サービスの拠点となる「高浜市いきいき広場」は駅に直結したビルの二階にあり、日本福祉大学に運営を委託。福祉のワンストップ相談窓口、市民サービス窓口、介護・福祉機器ショールーム、フィットネススタジオなど、福祉と健康づくり、生涯学習の総合的なサービス提供をしている。
 さらに、託老所の設置など、高齢者の生き甲斐づくりにも積極的に取り組んでいる。

■健康・ウエルネスをテーマにした都市

加古川ウエルネスパーク 霧の谷
加古川ウエルネスパーク 霧の谷

(1)兵庫県加古川市 「豊かな自然を生かしたウエルネスな環境づくり」

 播磨灘に面した京阪神のベッドタウン。人口26万6千人。市の中央部を流れる清流・加古川と緑豊かな自然を生かし、市民が生き生きと暮らすためのウエルネス事業を積極的に推進。平成九年にオープンした「加古川ウエルネスパーク」は、同市のウエルネス理論を具現化したもの。ウエルネスセンター棟、音楽ホール棟、図書館をはじめ、ラベンダーの丘、ピクニック原っぱなど、豊かな自然の中で快く過ごせるウエルネス空間が広がっている。

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