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サンフロント21懇話会幹事・暖香園社長 北岡貴人氏 |
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「国際競争時代に勝ち残る街並み整備の推進を」
熱海・伊東地区の宿泊収容客数は、伊豆半島全体の半数を超え、県内最大の規模を誇る。しかし、熱海・伊東の名前だけでお客が来た時代に各旅館は迷路のような建物を次々と増やし、隣とのすき間がほとんどない街並みを形成してしまった。結果、今、伊豆東海岸が最も客数の落ち込みが激しい。
熱海・伊東は温泉以外の魅力に乏しい。海も魅力の一つだが、外国にはこの程度の海岸はたくさんある。外国人観光客に貫一・お宮の話をしてもほとんど理解されない。
私は趣味を兼ねて国内外の観光地を旅行しているが、今の観光地には、高層ホテルの周りに美しいヤシ並木が続くハワイや、昨今人気の由布院、東北の、広々とした敷地に旅館が1軒あるような環境面の充実が求められている。
緑あふれる美しい街並みづくりを進めるには、建ぺい率を下げ、緑地を増やすことが必要だ。しかしそれでは建物が小さくなり、十分な営業面積が確保しにくい。そこで、容積率を引き上げ、高さ制限をなくす。商売も成り立ち、周囲の緑地も増えていく。
また乱立している看板も、道路に直角ではなく平行にし、マップを見ながら散策できるようにすると、街全体がすっきりする。これは電線の地中化とともにぜひとも進めたい。こうした地道な取り組みを通じて、長い年数をかけ、ヨーロッパのような街並み文化を創造するべきだろう。
急がれるのは宿泊スタイルの見直しだ。現在の日本のような、1部屋に4人、5人と泊めるシステムでは、2人1部屋を基本とする外国人観光客にはなじまない。
また、1泊2食のパッケージについても、お仕着せの宴会料理ではなくルームチャージ制にし、食事は宿泊客が自由に好きなものを選べることが望ましい。さらには、宿泊客に街中どの飲食店でも利用できるミールクーポンを発行すれば、街に人が出掛けるようになり、地域全体の活性化にもつながる。
日本の交通費の高さも外国人旅行者にとってはストレスだ。JRやバスの値段もぜひ思い切った改革をしてもらいたい。例えば、ハワイのオアフ島のバスは1周どこで降りても200円程度。伊豆半島ぐるり1周が500円ほどになれば、東海岸だけでなく伊豆全域に外国人観光客がこぞって押しかけるだろう。
外国人観光客受け入れは、とりもなおさず海外の観光地との競争だ。そのためには大胆な改革が必要になる。熱海・伊東両地区の結束力は弱いといわれ、地域ごと、旅館ごとの取り組みの度合いもまちまちだ。インバウンド促進には観光地全体の底上げが必要で、そのためには広域的な連携が不可欠。行政のかじ取りにも大いに期待したい。
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