サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 温泉地に求められるニーズが多様化している。団体で、豪華な料理を堪能し、温泉にゆっくりつかるという従来の楽しみ方から、泉質や露天風呂にこだわる、あるいは料金が安い、周辺で遊べる、その地にゆかりの作家や作品の文学散歩を楽しむ、桜や紅葉の名所に足を伸ばす・・・。中でも、今後高齢化が進むにつれて、必ず大きなボリュームを占めるのが、「健康・癒し」を求めて温泉を訪れる人々だ。
 こうした人々の受け皿整備が今、温泉観光地の重要な課題となり、すでに日本全国で新たな取り組みがスタートしている。今後、そうした地域と競合する伊豆は、どのようなメニューを用意するのか。
 「風は東から」2月は、健康・癒しを重視した伊豆温泉の新たな取り組み「かかりつけ湯構想」を取り上げる。
風は東から
[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ9
バックナンバー


伊豆の新ブランド「かかりつけ湯」始動 おもてなしの心磨き健康・癒しを提供
「かかりつけ湯」 
たとえばこんな 宿
矢内原研究所所長 矢内原千鶴子氏
貸切古民家 彩里(いろり)
(伊豆市原保)
0558-83-5550
築60年の古民家を週間単位で丸ごと貸し切れる。自炊だが、かけ流しの温泉に入り放題。まるで田舎の親戚の家に遊びに来たような、なつかしい雰囲気が味わえる。 ● http://e47.jp/n/ir/
観光から健康へ温泉観光地での新たな試み
 少子高齢化社会に移行するにつれ、高まってくるのが健康志向。特に、昭和22年から24年生まれのいわゆる団塊の世代が定年を迎える数年後には、こうした健康に関心の高い人々が全体に占める割合は極めて大きくなるだろう。
 全国の観光地でもこうしたボリュームゾーンを取り込もうと、さまざまな取り組みを行っている。例えば、群馬県の草津温泉では「泉質主義」を掲げ、泉質という最も基本的な要素にこだわることで、温泉の効能や温泉にまつわる歴史を積極的に情報発信している。また、今最も人気の高い温泉場の一つ、熊本県の黒川温泉は、街頭の通りを通路、旅館を部屋に見立て、統一された街並みと自然を生かした癒しの温泉郷づくりに成功している。
 温泉を健康や癒しに役立てようとする試みは、伊豆各地でも行われている。地域の医師、薬剤師、観光事業者などで構成される熱海のNPO「エイミック」(内田實理事長)は、温泉を貴重な健康資源ととらえ、温泉の入り方を解説したパンフレットの作成や「熱海の薬湯」と名付けた入浴剤の開発を通じて観光地・熱海の再生に取り組んでいる。また、東部県行政センターは昨年度、「新たな湯治場づくり事業」を行った。これは、健康増進に温泉を積極的に活用している宿泊施設が連携して、2世紀型の湯治場づくりを目指すのが狙い。韮山町や伊豆市の旅館・ホテルが参加、ワッツ(水中指圧)や温泉ストレッチなどの健康法や、地元の食材を使ったメニューの開発を行い、一部商品化にこぎつけた。
 県東部で展開中のファルマバレー構想も「健康」をキーワードに、医療・健康産業を集積し、地域の活性化を図っている。構想の柱の一つにウエルネス(心身共に健康なこと)戦略を位置づけ、特に伊豆地区ではサービス業を主体としたウエルネス産業を振興しようとさまざまな取り組みが行われている。
 その一つが「かかりつけ湯構想」だ。「健康」を旅行の要素としてとらえ直し、温泉を使って健康増進と心の癒しを図るサービスに積極的に取り組んでいる伊豆の旅館・ホテルを一つにくくり、新たな伊豆温泉のブランド化を目指す。従来の地域単位の振興策と違い、かかりつけ湯構想が提唱する新しい温泉のあり方に賛同、参画する旅館・ホテルを、地域を超えてネットワークし、伊豆が一つになって新たな温泉文化を創(つく)り上げていく試みだ。


かかりつけ湯構想がもたらす価値観の大変革
「かかりつけ湯」 
たとえばこんな 宿
富士宮市長 小室直義氏
船原館(伊豆市上船原)  0558-87-0711
水深1.2mの湯船で、日本古来の湯治文化とワッツ(水中指圧)を組み合わせた画期的リラクセーションが体験できる。地元の食材を使った野趣満点の「お狩り場料理」も人気。
http://homepage2.nifty.com/
funabarakan/
 医療でいうところのかかりつけ医からの発想で、「社会には健康人、不健康人、半病人、病人の4種類の人が暮らしている。このうち、不健康な生活を送っている不健康人、症状はあるが病気とは言えない半病人には、癒しの環境で養生することが健康を取り戻す上で非常に有効」と言う。外的ストレスなどからくる頭痛・疲労感・不眠といった漠然とした不快感を訴える現代人は少なくない。病院へ行くほどではないが、体調が思わしくない、あるいは疲れがたまっている人々に、行きつけ、かかりつけの温泉を持ってもらい、健康を回復してもらおうというのが発想の原点だ。
 かかりつけ湯のポイントは「ウエルネスの提供」にある。医者が医療技術そのものではなく、医療を通じて患者の健康を守る、維持することを目的とするように、かかりつけ湯も単に観光や温浴を提供することが目的ではなく、「健康づくり=ウエルネス」を目的に置いて、そのツールとして温泉や宿泊、食事を提供する。従来の観光事業の付加価値づくりとは大きく異なる点だ。
 こうした健康志向の宿を対象に、現在ファルマバレーセンターではモデル施設を募集している。(※別表参照)
 応募してもらいたい宿の特徴は実にさまざま。こんこんと湧き出る源泉を好きなだけ使えるかけ流しの宿はもちろん、平日割引や日替わりメニューを用意し、連泊に配慮している宿、あるいは低脂肪、減塩などの食事に対応できる宿。また、近隣の温泉療法医と連携した診療支援や、健康体操・入浴教室などの温泉を活用した健康増進プログラムを提供している宿など。お年寄りや体の不自由な方のためにバリアフリーを積極的に導入している、あるいは、天城山のガイドつきツアーが楽しめる、提携する農家で野菜の収穫体験ができるといった”得意技“を持った宿も大歓迎だ。おもてなしの心をベースに、自分の宿の特徴を生かした癒しと健康につながる環境が提供できていれば、それが応募条件となる。
 今回募集するモデル施設を核に、今後は構想の推進母体を組織化し、来年4月の本格稼働に向けて事業計画などについての具体的な検討に入る。
 ファルマバレーセンターは、ことし6月「かかりつけ湯」の商標登録を済ませ、今後参加施設に対し、無償で利用してもらい、他施設との差別化を図るという特典も用意している。また、本年度と来年度で広く「かかりつけ湯構想」をPRするために、パンフレットやチラシの作成、ホームページの開設などを予定している。推進母体が定まる来年度以降は、県や国の補助制度を積極的に活用し、新たな観光商品の企画や販売に繋げたい考えだ。


「かかりつけ湯」 
たとえばこんな 宿
静岡県理事兼健康福祉部技監 土居弘幸氏
熱海シーサイド・スパ&リゾート
(熱海市東海岸町)  
0557-82-8111
和風旅館に西洋の宿泊スタイルを取り入れた「T(Tatami)&B(Breakfast)」。和のくつろぎはそのまま、必要なサービスだけをリーズナブルに利用できる。
http://www.atamiseaside.com
必要な接客技術の高度化と多様化
 昨今の温泉に対する不当表示や効能の誇張は、多くの利用者の不信感を招いた。数年前に宮崎県で起こったレジオネラ菌による死亡事故なども記憶に新しい。かかりつけ湯構想では、利用者の不信・不安をなくすために、安全面、衛生面、成分表示などの独自のルールづくりを行っていく。同時に、簡単な温泉の入り方の指導や、健康に関する情報の提供も行えるような仕組みを整える。
 この構想の成否を握るのが、基本理念にもなっている「おもてなしの心」。一口に「おもてなし」と言っても感じ方は千差万別。何もない、宿の人に煩わされないことを喜ぶ人がいる一方で、仲居さんが何くれとなく常に気配りをしてくれることを快適と思う人もいる。かかりつけ湯構想が目指すおもてなしの評価基準は今後、具体的に決めていくが、「もう一度来たいと思わせることはもとより、今回は山、次回は海のかかりつけ湯に行きたいと思ってもらえれば大成功」と山口総長は言う。
 かかりつけ湯構想はいわば伊豆温泉のブランド化につながる。「お客さまの視点を重視し、もてなしの心でサービスを提供する」ことを共通認識として、それぞれの宿の特徴に応じたウエルネスを提供する。構想に参加する宿のレベルアップには利用者の視点と厳しい自己改革の意識が必要となる。こうした質の向上への支援も欠かせない。構想を推進する中で、「定期的な温泉入浴や健康食の提供に関する講習会の開催、人材の育成、利用者へのアンケート調査などを通じてかかりつけ湯全体レベルの底上げを図っていきたい」とファルマバレーセンターの小櫻充久企画部長は語る。
 伊豆の風土・文化・自然は地域によってさまざまで、どの温泉場を見ても二つと同じものがない。山海の幸の恵みは言うに及ばず、短時間の移動で山から海へ、海から高原へ、全く異なる風景に出合えるのも伊豆の魅力。四季折々の風景とともに眼前に広がる富士の雄姿は多くの人の心をとらえて離さない。
 立地の優位性に加え、気持ちのいいおもてなしが期待でき、温泉や健康メニューで心身をリフレッシュさせるかかりつけ湯。首都圏から一番近い温泉リゾートとして、何度でも来たくなる、いつ来ても癒される地域づくりに向け、志ある温泉宿泊施設をネットワーク化する新たな挑戦が始まる。


「かかりつけ湯」モデル施設の募集について

応募条件

次に掲げる基本理念に賛同し、次の特徴を有する伊豆地域の温泉宿泊施設が募集対象です。
選定にあたっては、温泉、観光、健康づくり、医療、栄養などの分野の専門家の意見を聴く予定です。

<基本理念>
(1)お客様に温泉による癒しと健康増進のサービスを提供する
(2)お客様の視点を重視し、もてなしの心でサービスを提供する
(3)施設の衛生管理や安全性を十分確保し、適正な温泉の表示や情報提供を行う

<施設の特徴>
(1)かけ流しの温泉など、温泉による癒しを十分に提供する施設。
(2)平日の連泊客などの割安料金や健康に留意した食事の提供など、リピーターに対して十分に配慮された施設。
(3)温泉を活用した健康増進プログラムを提供する施設。

*基本理念に賛同し、3つの特徴すべてを有することが望ましいが、応募時点では少なくともつに該当していること。

応募方法

応募用紙はファルマバレーセンターのホームページ(www.fuji-pvc.jp)からダウンロードできます。
応募用紙に必要事項をご記入の上、下記あてFAX又はE-mailでお送り下さい。月3日(月)締め切り。
〒411-8777 駿東郡長泉町下長窪007
(財)しずおか産業創造機構 ファルマバレーセンター(企画部)
FAX:055-980-6320 TEL:055-980-6333  E-mail:mail@fuji-pvc.jp


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