サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 平成16年4月に誕生した伊豆市。狭い地域ごとにまとまる伊豆半島で、海、山、温泉と広大な市域を背景に多様な魅力を包含する伊豆観光の中核市として大きな期待が寄せられている。
 一方、観光市場では「ウエルネス」という新たな流れが注目されている。社会の高齢化、高ストレス化が進む中、癒しや健康といったものに対する消費者の関心はますます高まっている。
 伊豆市はこの流れにいち早く着目、市の基幹産業である観光と市民の健康増進施策を連携させ、ウエルネス産業として育成する試みに乗り出した。2月の「風は東から」は、合併後1年を経過した伊豆市の観光を検証するとともに、新しい観光振興への取り組みにスポットを当てる。
風は東から
 
[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ1
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キーワードは地食健身のまちづくり 食文化創造のカギ握る市民参画革
豊富な観光資源組み合わせは無限大
 夏の海水浴と水平線を真っ赤に染める夕日の土肥。文学と緑深い天城連山をいただく天城湯ケ島。ワサビ田や豊富な自然を生かしたグリーンツーリズムが楽しめる中伊豆。1200年の歴史のたたずまいが、しっとりとした温泉場の風情を醸し出す修善寺。異なる個性を持つ旧4町は、観光市場でしのぎを削ってきた。伊豆市となって約1年、合併はどんな効果を生みだしたのか。
 一つはスケールメリットの発揮だ。観光協会が一元化され、ポスター・チラシ、イベントなど、広報宣伝面は町域を超えた連携で効率化を進めている。それ以上に大きいのが、旧4町の資源を共有できること。伊豆市観光商工課の勝呂真人課長補佐は「伊豆市となったからこそ、各旅館が提供できる引き出しの多さ、これが格段に増えている」と指摘する。実際、合併前には、各旅館が隣の町の観光資源を活用することはあまりなかった。それが同じ市になったことで資源が増え、また、それらの組み合わせも無限に広がる。海があり、山があり、歴史や文学にも事欠かない。「それが伊豆市の強み」と勝呂課長補佐は自信をのぞかせる。
 さらに伊豆市の魅力を一層深めているのが、海の玄関口となる旧土肥町の存在だ。ここ数年、清水港と土肥港を結ぶカーフェリーの利用者が増え、ことしからは2船体制に増便となる。「海上交通路を持つことで、従来弱かった県中部地区を直接ターゲットにできる。また、静岡空港開港で増加が予想される観光客に対し、陸路、海路からのアプローチが可能となるので、これを利用した交流人口の拡大を図りたい」と同企画課の杉山健太郎係長。渋滞もなく、海から富士山を眺めながら海路で65分は大きな魅力だ。


新たな視点「ウエルネス」での地域おこし
 
伊豆市3月のイベント
わさびまつり
3月5日(土)
萬城の滝キャンプ場


「ワサビの華キャンペンガール」の募集、ワサビの収穫と植え付けの体験など楽しい催しがいっぱい。
問い合わせは、中伊豆山葵組合事務局(0558‐83‐0102) へ。
わさびの花まつり
3月6日(日)
昭和の森会館駐車場

ワサビ創作料理食べ比べや、生ワサビのつかみ取りなど、お得なイベントが目白押し。
問い合わせは、伊豆市観光協会天城支部(0558‐85‐1056) へ。
恋人岬ホワイトデー スペシャル
3月14日(月)
恋人岬駐車場


特製オリジナル限定版恋人宣言証明書の発行や、タキシードとウエディングドレス姿での写真撮影サービスなど。
問い合わせは、伊豆市観光協会土肥支部(0558‐98‐1212)へ。
 こうした合併効果に加え、伊豆市が新しい観光の魅力付けとして取り組むのが、地域のウエルネス化。つまり健康増進の視点で従来の観光に新しい付加価値を見いだそうとする試みだ。
 少子高齢、高ストレス社会といわれる現代において、日々の暮らしを快適に過ごすための健康維持、増進や心の平穏を保つ癒しへの欲求は世代を超えて広がっている。そこで改めて見直されるのが伊豆市の多様な自然と、日本を代表する温泉地としての歴史、関連施設の豊富さだ。
 温暖な気候と海、山、川などの豊かな自然は、森林浴や海水浴、ウオーキングといった健康的な活動に最適。また温泉旅館や日帰り入浴施設などに加え、温泉をリハビリテーションに利用している医療機関や、天城温泉会館を拠点に研究、実践が進む温泉療法など健康増進のための温浴ノウハウの蓄積も進む。県内で最もウエルネス環境が整っている地域といってもいい。
 同時にこういった健康の維持、増進や癒しへのニーズは単に旅行者だけのものではなく、伊豆市民にとっても同じこと。市民の7割が何らかの形でかかわる観光産業を核に、地域全体をウエルネスな地域にしていくことは、新しい産業の振興として市民生活の向上にもつながっていく。
 こういった視点で、現在伊豆市では、温泉をはじめとする既存の観光資源を「健康資源」としてとらえ直し、健康維持やストレス解消、あるいは病後のリハビリなどが必要な人々に向けたサービスの提供についての調査・研究を行っている。今後成長が見込める健康マーケットに参入し、首都圏に至近の立地を最大限に生かした将来を担う主力産業として育てていく予定だ。


横軸通し、地域が自立できる仕組みづくりに着手
 今までの行政は、健康づくりは健康福祉部門、観光は観光部門、農林部門が農業振興としてグリーンツーリズムを推進するといったいわゆる産業別の”縦割り“が主流だった。しかし伊豆市は「ウエルネス」という、サービスを受ける側の視点での横軸を通すことで、観光振興や健康増進を図ろうとしている。4月からは市庁横断的な組織を立ち上げ、ウエルネス産業振興を強力に推進する予定だ。「接着剤機能さえ作れば、資源の豊富さには絶対的な優位性がある。それをどう生かすかを官民一体で考えていきたい」と杉山係長。
 具体的には、(1)観光を基軸にしたウエルネス産業の創出(2)市民の健康づくりへの貢献―を二つの大きな柱に、それを進めるためのブランドづくり、プログラムづくり、体制づくりを行う。
 既に地域のウエルネス資源の把握を目的に、関係者にヒアリング、市内の宿泊施設や温泉施設にアンケート調査を実施した。こうして得た結果を今後の戦略に活用するため、市民、健康関連企業、病院、観光協会、温泉組合、NPO団体、行政などからなる「ウエルネス産業検討会議」を開催。今後の戦略として、健康保養地としてのイメージを確立するための広報宣伝、温泉を利用した健康増進プログラムの調査・体系化、ツーリズムメニューの開発、健康に配慮した食メニューの開発、またそれらを支える人材の育成や人材バンクの整備などが話し合われた。
 昨年10月には、ウエルネスを通じた地域づくりを理解してもらうための湯治イベントが天城温泉会館で行われ、多くの市民が温泉を活用したウエルネスメニューを体験した。また、3月上旬には首都圏の健保組合担当者を対象としたウエルネスツアーを企画している。
 今後も市が中心となり、各種調査・研究、人材育成などウエルネス産業の基盤づくりをしていくが、2年程度で地域が自立できる仕組みをつくり、その後は観光協会やNPO、民間団体を事業主体にしたい考えだ。「主役はあくまで民間の方。きっかけは市が作るが、民間の方の積極的な参画をお願いしたい」と勝呂課長補佐。
 観光市・伊豆が取り組むウエルネスビジネスの創生は、民間事業者を巻き込んだ第2段階に移行する。


多彩な自然資源を生かす市民の創意工夫に期待

伊豆市長・大城伸彦氏

 伊豆市の重点施策として三つ挙げたい。一つは健康、ウエルネス産業の振興。ファルマバレー構想と連携し、温泉や地元の健康な食材で、住民だけでなく訪れる人を健康にしたい。特にそれらを通じた旅館などの宿泊施設の活性化を考えている。二つ目は、これだけの自然環境だからこそできる、食と健康を結んだ地場産業を盛り立てていきたい。三つ目がエコタウン構想、新エネルギー開発だ。ソーラー発電や、西風の強い土肥地区、あるいは別名風早峠といわれる仁科峠での風力発電。また、県営放牧場でのバイオマス整備などを通じ、地球に優しい地域の創造を目指したい。
 今挙げたことはすべて観光に集約されてくると考えている。
 今、首都圏は新幹線や自動車での日帰り圏だ。観光、特に旅館業は大変な時代になっている。しかし、好むと好まざるとにかかわらず、観光業も新しい環境に対応した形にしなければならない。
 それには、いかに滞留時間を長くするか、リピーターを獲得するかが課題と考えている。例えば、若い女性の小グループをターゲットに、伊豆の踊子にふんして道を歩いてもらう。次に新婚旅行、そしてフルムーンと、何度もここに来てもらう仕掛けを考えられないか。定例のイベントにしても、毎年同じことをするのでは飽きられやすい。歴史的、伝統的な本旨はしっかり守りながら、付録の部分にちょっとした目新しさやサービスを付け加える工夫が必要だ。
 IT化が進む中、拠点ごとに情報端末を置き、いろいろなテーマで地域の情報が検索できるようにしたい。一度では満喫できない、伊豆市の多様な魅力が生きてくるだろう。
 先日、ふじのくに食感フェアで伊豆わさび漬け食べ比べを企画した。市内のわさび漬け店に呼びかけ、8軒の「こだわりのわさび漬け」が少しずつ楽しめるセットを700円で販売した。イベント用に200箱つくったが、40分で売り切れた。
 右肩上がりの経済成長が見込めない今、観光を活性化していくには自ら汗をかく気構えがないと衰退するばかりだ。アイデア次第でいくらでも可能性は広がる。また、自分のところだけでなく地域全体を考える意識が必要だ。ただ「お客が来ない」、「政治が悪い」と言っているだけではだめだ。トライ&エラーをしていく中で、必ず光は見えてくると思う。


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