サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 県東部の経済界、行政、研究機関などのリーダーが集い、躍動感あふれる地域づくりに向けたさまざまな提言を行うサンフロント21懇話会。設立10目を迎え、東部はもちろん、中・西部の経済界、さらには県をはじめとする行政当局からも高く評価されるようになりました。今後も、さらなる発展を目指し、国際観光やファルマバレー構想、市町村合併などの地域の課題に多方面から取り組む予定です。
 これら懇話会活動を紹介する特集「風は東から」。3月は石川嘉延静岡県知事、懇話会代表幹事の岡野光喜スルガ銀行社長、同アドバイザーの大坪檀静岡産業大学学長に、本格的な大交流時代を迎えた静岡県、特に東部発展のシナリオについて伺いました。
風は東から
[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ12
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求められる大交流時代の環境整備 世界を視野に富国有徳の県づくり推進
石川嘉延静岡県知事

石川嘉延 静岡県知事
国際化に向け新たな観光ニーズの掘り起こし急務
大坪 平成16年度を振り返って、将来に向けた静岡県の観光、産業振興についてお伺いしたいと思います。県では国のビジット・ジャパン政策(外国人観光誘客促進事業)を受け、海外PRや地域の受け皿づくり支援などを行ってきましたね。
石川 本年度は、外国人観光客受け入れに対する県民の関心や具体的な動きが随分出てきたように思います。それと並行して、静岡空港への関心も、必要性の認識も高まってきたところです。どうしたら外国人観光客に喜ばれるサービス展開ができるか、地域づくりができるかを、これから地域の人たちと一緒になって取り組む環境が整った一年でした。
大坪 東部の外国人観光客受け入れについてはどうお感じですか。
岡野 富士山、温泉、雄大な自然と、観光資源の多さでは県内でも群を抜いているのが東部だと思います。それに甘えることなくわれわれがどう努力するかがポイントでしょう。ビジット・ジャパンは、皆さん理解されていると思いますが、サイン表示一つ見ても、英語はありますがターゲットとするアジアの言葉、中国語やハングルなどは東部の観光施設には皆無といっていい。アジアの観光客に対して環境整備が不足していると思います。
 また、一冊で静岡県のABCがわかるものがあるかというとそれもない。静岡空港開港をにらんで今からそういうものを準備しておかないと、外国からお客さまが来たはいいが、不満を持って帰られたのでは次に続かない。そうしたソフト面の整備が今後の課題になるでしょう。
大坪 この間ベトナムへ行ったのですが、泊まったホテルが日本人でいっぱいなんです。不思議に思って聞いてみると、副支配人が日本人女性だそうです。彼女が日本人の好みそうな現地の観光スポットやレストランを案内しているというのです。なるほど日本人同士なら好みもわかっているし、何より安心なんですね。日本を訪れる方にも、やみくもに日本の伝統や文化を押しつけるのではなく、何に興味があるかを聞いてしまうのが早道でしょう。例えば韓国から人を呼びたいなら韓国の人に旅行を企画してもらったり、案内してもらったりしたらいい。
石川 文化や社会慣習が違えば、見たいものや関心を持つものが変わるのは当然です。その国の歴史、あるいは日本とのかかわりでも見たいものが変わってくるでしょう。先生がおっしゃるように、台湾や韓国、中国の方に一度静岡県を見てもらい、何に興味を持つのか調べたらいいですね。
岡野 主に県立の高校には外国からたくさんの先生が来ています。県立大学にも留学生は大勢いますので、自分の親や友達が「ビジット静岡」した場合、何が必要で何に興味を持つか、国ごとにレポートしてもらったらいかがでしょう。
石川 次年度に予定されている「伊豆ブランド創生事業」(※1)の中に、外国人アドバイザーの派遣を盛り込むよう検討したいですね。


大交流時代の幕開けへ、実現したい富士山空港
 
岡野光喜 スルガ銀行社長

岡野光喜 スルガ銀行社長
サンフロント21懇話会代表幹事
大坪 外国人観光客受け入れの一つの契機になりそうなのが、F1招致に向けて全面改修を行っていた小山町の富士スピードウェイ(FISCO)の完成と、沼津市と静岡市で行われるユニバーサル技能五輪国際大会(※2)でしょう。
岡野 F1は世界を転戦する自動車レースの最高峰です。チームスタッフは外国人がほとんどですし、それぞれのチームがホテルを一つ借り切るぐらいの規模も考えられます。
大坪 海外では国王が出席したり、空軍がジェット機を飛ばすほど大規模なもので、レースの数日前から参加チームやスポンサーによるパーティー、イベントが頻繁に行われます。そうすると地元のチーズやワイン、肉などの地産地消も始まるんですよ。また、レース場の周辺には車の性能や安全性を研究・開発する企業がたくさん集まって「レース村」ができるんです。
岡野 F1は毎年行われますから、継続的な効果が期待できます。ただ、残念なことにFISCOの周辺にはあれだけのものを受け入れる宿泊施設がない。せっかく大勢の人が集まっても、東京からのピストン輸送では地元への経済効果が薄れてしまう。
石川 そこをどう引き留めるか、工夫のしどころですね。鈴鹿と違い、富士山の麓ですし、富士山がよく見えるシーズンに開催されれば、関係者だけでなく、観客も地元に泊まってレースや観光を楽しめる。周辺道路整備も含め、これから研究する必要がありますね。
大坪 技能五輪についてはいかがでしょう?
岡野 これも世界約40カ国、2500人の選手役員が訪れる大きな大会です。競技期間中の観客数は10万人を超えると予想されています。誰もがものづくりを体感できるいい機会ですし、ものづくり県・静岡としてはこれを機に、21世紀における再出発ができればいいですね。
石川 技能五輪の対象種目ではありませんが、松崎町のしっくいや下田の松脂(まつやに)細工など、地域には多くの伝統技術が存在します。ぜひ地元の模範演技としてお見せしたいですね。
大坪 外国からの交流人口拡大に欠かせないのが静岡空港。開港まであと4年程ですが、最近、静岡空港の名称を富士山空港にという動きが盛んになってきました。こうすると世界だけでなく、県民も自分たちの空港だと認識するのではないですか?
石川 富士山空港となれば、県民はもちろん、山梨県側の方にも身近に感じてもらえて利用範囲が広がると思います。外国へのアピール度も高い。新東京国際空港が成田空港と呼ばれ続け、今や正式名称になったように、静岡空港よりも富士山空港とした方が私はいいと思います。
岡野 富士山エアポートといえば外国の方にもわかりやすい。よく、「自分は年に何度も海外に行くことはないのだから、羽田や成田で十分だ」とおっしゃる方がいます。そうではなく、海外からのお客さまや物流を受け入れることで、産業の活性化につながるのです。
石川 海外との人やモノの行き来は今後、ますます活発になっていきます。また、それを増やしていかないと日本は衰退するでしょう。海外との交流を戦略的に盛んにするためにも空港はどうしても欠かせない”道具“なのです。
岡野 工業製品出荷高、GDPとも高い水準にある静岡県ですから、製品の輸出入にかかる経費も膨大です。今は他の空港を利用していますが、静岡空港ができれば直接、輸出や輸入ができる。企業にとって大幅なコスト削減につながりますし、ひいては私たちの生活に非常にプラスになると思います。

 


大坪檀 静岡産業大学学長

大坪檀 静岡産業大学学長 
サンフロント21懇話会アドバイザー
高い地域ポテンシャル背景に進む産業クラスター構想
大坪 産業面では企業誘致が引き続き好調だそうですね。東部のファルマバレー構想をはじめ、中部のフーズ・サイエンスヒルズ、西部のフォトンバレー(※3)といった地域の特色を生かした産業クラスターの形成も進んでいます。
石川 企業立地件数は2年連続で全国1位になりました。北関東や九州などのライバル地域と地価の面で格差が小さくなったこと、第二東名、静岡空港、港湾整備が着々と進んできたこと、また、東京―名古屋、あるいは大阪圏の中間にあって、巨大マーケットや生産拠点へのアクセスもいい。こうした本県のポテンシャルの高さが再評価された結果と考えています。
 また、企業の研究部門の進出が多いことも本県の特徴です。そういう所に従事する技術者や研究者は住環境への欲求レベルも高い。今後は、医療面はもちろん文化や教育環境を整えるといったところに力を注ぎたいですね。
大坪 中でもファルマバレー構想は県民の健康に寄与するものとして期待が大きいですね。
石川 この構想はいわゆる大規模工業用地の開発ではなく、研究開発機能、あるいはそれをサポートする環境の整備を優先させた構想です。まず、研究開発環境の面で、ファルマバレーセンターを中心に産学官の研究体制を組みやすくしました。また、先導的に新しい薬を開発する土俵づくりとして県内主要28病院、約14000床の静岡県治験ネットワークを稼動させています。さらに、本年度からは創薬探索センターを開設、さまざまな化合物の分析・評価をデータベース化し、医薬品の候補を探しています。
岡野 静岡県が医薬品の生産額全国2位、医療用具3位ということを県民の方は案外ご存じない。なぜ急にファルマバレー構想が出てきたのか不思議に思っている方も多いと思います。しかし、数字が示すようにやはり素地はある。今後はこれらをいかに21世紀のリーディング産業であるウエルネス産業に結びつけていくかが課題です。環境は整備され、静岡がんセンターと東工大、東京農工大、早稲田大などとの医工連携も始まっています。それらを進める中で相乗効果を生み出せばいいと思います。ただ、今までの工業団地の進出と違い、ファルマバレー構想は目に見えにくい部分が多い。県民のご理解を深めるためにも、もっと情報を発信していくことが必要ですね。
大坪 地方の時代とは、自己発見の時代。静岡県が持つ力や特性をきちんと理解し発揮することが、次代の産業基盤形成につながります。目指すは「世界」。大交流時代を迎えて、観光に産業に、今後の静岡県に大いに期待しています。ありがとうございました。


(※1)「伊豆ブランド創生事業」
・・・伊豆新世紀創造祭で芽生えた地域活動の開花支援策として、リピーター客の増加と新規マーケット開拓を目的に、平成17年度に伊豆地域を対象に県が行う事業。
(※2)ユニバーサル技能五輪国際大会
・・・平成19年11月に沼津市と静岡市で同時開催される青年技能者の技能五輪国際大会と障害者の技能競技大会である国際アビリンピックの総称。
(※3)東部のファルマバレー構想をはじめ、中部のフーズ・サイエンスヒルズ、西部のフォトンバレー
・・・県立静岡がんセンターなどを中核として、医療からウエルネスまで世界レベルの研究開発により、健康関連産業の集積を図るファルマバレー構想(東部)、食品・医薬品・化成品産業の集積に着目し、県立大学などと連携してストレス克服食品・医化学品の開発と新産業への展開を目指すフーズ・サイエンスヒルズ構想(中部)、ノーベル賞受賞を支えた光電子増倍管など世界的な光技術を中核として、光技術関連産業の集積を図るフォトンバレー(西部)の3つの産業クラスターを指す。


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