サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 1999年4月から始まった「平成の大合併」で、全国の市町村数は同年3月末時点の3232から、来年3月末には1822(減少率43.6%)に減る見通しだ。県内でも国内14番目となる政令市・静岡市がことし4月に誕生、7月には周辺12市町村が合併する新・浜松市が誕生し、2年後の政令市移行を目指している。一方、伊豆の国市、沼津市、西伊豆町が新たなスタートを切ったものの、中核となって地域をリードする都市像は未だ見えない県東部。2年後の技能五輪国際大会、東部で展開中のファルマバレー構想など、広域で連携した受け皿整備が必要なことは誰の目にも明らかだ。
 4月の「風は東から」は、ようやく市町村再編の動きが始まった東部の現状と、新法施行で始まった平成の大合併第2幕について考える。
風は東から
[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ1
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中西部に遅れる県東部の中核市づくり県の関与強め「平成の大合併」は第二幕へ
岡野光喜 スルガ銀行社長
 
合併新法施行。県は合併構想策定へ
 合併特例債や地方交付税の激変緩和策を盛り込んだ合併特例法はことし3月31日に失効。4月1日からは「市町村合併の特例等に関する法律」(通称・合併新法)が施行された。
 合併新法は自主的な市町村合併の一層の推進を基本方針に、今まで合併の目玉だった合併特例債などの財政支援策を大幅に縮小・廃止、都道府県の関与を強くした。
 県は5月の連休明けに出される見込みの国の基本指針に基づき、合併が必要な地域の合併構想を策定する。対象地域は次の3つの類型が想定される。
 (1)生活圏域を踏まえた行政区域の形成を図るための合併
 (2)指定都市、中核市、特例市等を目指す合併
 (3)小規模な市町村にかかる合併
 構想策定にあたっては、大学教授、商工会議所、青年会議所など合併に関する見識の深い有識者からなる「市町村合併推進審議会(仮称)」を設置する。県は審議会の答申をうけ、合併構想を策定。構想対象市町村は、知事が合併勧告を行った場合、議会に合併協議会の設置を付議することが義務づけられる。県総務部合併推進室の山崎章二専門監は「つまり、知事勧告に住民発議と同じ効果を持たせている」と説明する。また、名称などで協議が整わない場合は、知事が合併調整委員をもって調整にあたることができる。
 合併新法は、自主的な合併という線は守りながら、県がもう一歩踏みこめる形にしている。これは5年間の時限法で、「平成の大合併の第2弾はこれで最後だ、というメッセージも込められている」(山崎専門監)。若干の財政優遇政策や特例措置もあり、未合併市町村にとってはこの新法が最後のチャンスと言える。
 6月県議会に審議会設置条例を提案、8月から審議会がスタートし、各種の調査を終え、年度内には構想をまとめる予定。残りの4年間で具体的に合併を進めていく。


行政の足並みそろわず、進まない東部再編
 
人口(人)
面積(km2)
三島市
111,707
62.13
沼津市
207,927
152.18
清水町
31,276
8.84
函南町
38,839
65.13
2市2町計
389,749
288.28
長泉町
37,626
26.51
2市3町計
427,375
314.79
 サンフロント21懇話会では設立当初から、東部に政令市を形成するという目標を掲げ、合併アンケートや広域的な東部のグランドデザインを描くための提言を行ってきた。政令市を視野に、現在は中核となる沼津市、三島市、清水町、長泉町、函南町の2市3町の合併を支援している。ほかにも沼津、三島商工会議所、函南、清水町商工会の「合併を推進する会」が昨年12月、長泉町を含めた広域合併を目指す「駿豆地域市町村合併推進協議会」を設立。また、沼津、三島の両商議所青年部は合同で合併に関する調査研究を進め、3月に成果発表会を行った。
 肝心の行政はなかなか重い腰を上げない。一昨年6月に東部の4市7町1村(当時)で作る「広域都市づくり研究会」が10年後の政令市実現に向けた動きを開始したものの、足並みがそろわないまま今に至っている。そんな中、沼津市、清水町間の「中核市推進協議会」で決まっていた単独合併を清水町・平井弥一郎町長が拒否したことから、合併を前提にごみ・し尿処理を引き受けていた沼津市側が反発、「信頼関係が損なわれた」と同協議会を昨年3月に解消した。清水町は関係修復を模索し、単独合併でなく、広域で合併すべきとの観点から、地域団体、行政が一致。合併に消極的な長泉町を除いた2市2町の枠組みで、合併協設置に向けた住民発議に必要な署名運動が始まった。
 


長期的視野に立ち、自立できる地域を
 清水町の住民発議には県も注目している。この地域はすでに生活圏が一体化しており、合併により中核市への移行も見込めることから、県の市町村合併構想に盛り込まれる可能性も高い。しかし、住民発議は合併への有力な手段。これが否決された場合、この地域を対象に県がもう一度構想を作るかというとかなり難しい。その場合、知事勧告ができず、清水町以外の当該市町からの住民発議を待つしかない。
 2市2町のうち、沼津市は財政力指数が1を超える裕福な市。また、清水・函南町は人口3万人を超す大所帯の町だ。急激な高齢化や財源不足で住民サービスが破たんするというような、小規模市町村の危機的状況を打開するための合併と違い、地域住民のメリットが見えにくい。2市2町が合併すると人口が約39万人となり、中核市に移行できる。保健衛生を独自で行えるほか、養護老人ホームの設置許可や都市計画などに関する事務などが行える。しかし、住民からすれば、提供者が県でも市でも、サービスの質が低下しなければそれでいい。
 ただ、長期的な視野に立った場合、ますます少子高齢化は進展し、都道府県の再編も予測される。道州制に移行すれば、行政サービスは今以上に広域にならざるを得ない。その時、一番身近な住民サービスが果たして今の水準を保てるかは大いに疑問だ。
 すでに中・西部で地方分権の受け皿となる力強い都市が形成される中、東部だけが取り残された格好だ。さらに、激化する地域間競争に勝ち抜くためには、高次都市機能の整備が欠かせない。石川嘉延知事は1月の新春会見で、市町村合併が進まない沼津、三島市などの東部地区の2市2町から、裾野市を入れた3市3町までの範囲で、高次都市機能の整備に向け、県も加わった「広域連合」の結成を求める考えを明らかにしている。
 周辺道路網の整備や新幹線の増発で、ますます首都圏に近くなった東部地域。高度な医療、教育、文化が容易に手に入る首都圏の外縁地域としてこのまま埋もれてしまうのか。


2市2(3)町をめぐる合併に向けての動き

2004年
7月
清水町行政課題検討協議会が2市2町か2市3町の法定協設置を盛り込んだ会長私案まとめ。官民一体で合併推進することを確認
清水町長が沼津市長に文書。「2市2町か、2市3町で法定協設立へ努力」と説明
清水町長ら函南、長泉両町を訪問。函南町長は「2市3町」に賛同。長泉町は慎重姿勢
8月
三島市議会特別委員会 最大会派は1市3町、2派が2市3町
9月
長泉町議会 柏木町長は市町村合併について「当面する緊急課題でない」と答弁、清水町から合併を持ちかけられても断る考えを示した
11月
長泉町長の発言をうけ、清水町「市町村合併を推進する会」は沼津、三島、函南、清水の「2市2町」の枠組みで法定合併協の設置を求める住民発議を行うことを決定
清水町市町村合併を推進する会が署名活動を開始
12月
三島市、市民アンケート結果を発表。7割以上が現状の規模の都市を望むと回答
清水町住民発議の署名活動終了。有効署名は6133
2005年
1月
清水町長が合併協設置議案の議会付議を沼津市、三島市、函南町に意見照会
2月
清水町からの意見照会を受け、3市町長は議会付議を表明
3月
三島市議会 小池市長「合併を目指すなら1市3町が望ましい」
三島市議会合併問題特別委員会最終報告。合併を推進すべきで結論。枠組みは「1市3町」「2市3町」「慎重に対応すべき」の3つを併記
長泉町議会 柏木町長「動きを注視しつつ、将来のまちづくりを考えたい」
5月以降
各議会採決→合併協設置(?)

 一カ月に及ぶ清水町の署名運動は住民発議に必要な町内有権者の50分の(496人)を大幅に上回る6133人分を集めた。平井町長はこの結果を持って沼津・三島両市長と函南町長を訪問、合併協設置について議会への付議を照会した。3首長は付議を表明、今週にも清水町に文書で回答する。今後行われる各議会で1つでも否決されると、合併協設置はご破算となる。


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