サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 法定合併協議会設置の住民発議が清水町から出された東部2市2町。合併に前向きな沼津市、清水町、函南町議会が次々と合併協議会への参加を決定する中、三島市議会は合併の枠組みや市民の機運が熟していないことなどを理由に否決。県東部の中核市づくりは振り出しに戻った。すでに通勤・通学や買い物、医療など住民の日常生活が一体化している2市2町、同じく生活圏を一にする長泉町を加えた2市3町が合併できない理由はどこにあるのだろうか。
 5月の「風は東から」では、地域の次代を担う若手リーダーに参集してもらい、地域の将来像をはじめ、2市3町合併に向けた次なるステップについて聞いた。
 聞き手は静岡新聞社東部総局の篠原光秋総局長。
風は東から
[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ2
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緊急討論「次代のための合併論議」  県東部に中核市は必要ないのか?
沼津青年会議所 岡田貴之理事長
(社)沼津青年会議所
岡田貴之理事長
一体化進む2市3町。足りない広域構想の視点
 篠原 東部には静岡、浜松のような求心力のある行政体がなく、行政区域が細かいため、同じような公共施設がどの町にもある、あるいは道路整備が突如途切れるといった状況が目に付きます。今後、少子高齢化が進み、地方交付税が削減される中、将来にわたってより良い生活を送るために、この地域に何が必要なのか。そのためには果たして今のような小さな行政単位で本当にいいのか。日ごろまちづくりを推進している皆さんは2市3町の合併についてどう思われますか。
 米山和良 沼津商工会議所青年部副会長 通勤・通学ひとつとっても、この地域はすでに一体化しています。先ほどの道路の話も生活圏が一緒であるから問題になるわけで、むしろ合併しない理由を探す方が難しい。議論すべきは合併の是非ではなく、地域の将来像をどう描くか、ではないでしょうか。確かに将来のことは現時点では分からない。けれど、将来どんな町に住みたいのか、子どもたちに何を残したいのか、市民一人ひとりが具体的な意思を示す時期だと思います。
 落合義朗 三島商工会議所青年部会長 例えば、三島市が作る都市計画は市内で完結しています。ところが三島市というのは可住地面積が20平方キロしかなく、人口密度が県内一高い。そこに何でも入れようとするから無理が出る。地価は上がり、住みにくい地域になる。そのため税収も増やしにくい構造です。ところが、隣の町にはまだまだ利用できる土地がある。行政単位の発想を捨てればもっと自由な都市計画ができるだろう、と考えるのは当然ですね。
 岡田貴之 (社)沼津青年会議所理事長 2市3町が合併すれば、将来的に伊豆市や伊豆の国市も一緒になり、県が推進するファルマバレー構想のウェルネス産業にも弾みがつくでしょう。しかし、こうした広域で地域を利活用しようとする視点がここには足りない。沼津でも2007年に技能五輪国際大会が予定されていますが、行政はその跡地利用をどうするか、という発想です。将来この地域をこう使いたいから、技能五輪ではこうしようといった長期的な視野が欠けていると思います。
 成川勝一 (社)三島青年会議所理事長 ただ、合併を考えると言っても、まだ子どもが小さい私たちの年代は、自分の生活で忙しいのが現状です。仕事、地域活動、土日は子どもの送迎に忙殺され、「まちづくり」という言葉にさえ無関心です。難しい話ややっかいなことは人に任せておけばいいというのが本音でしょう。しかし、合併問題は未来の地域づくりがテーマであって、まさに自分たちの子どもにどういう地域を引き渡すか、彼らの将来にどんな夢を描かせてあげられるだろうかだと思います。その意味で、小さな子どもを持つ私たちこそが、合併論議の中心になっていかなければならない。今後はなるべくわかりやすく夢のある話をすることが必要ですし、若い世代が自分のこととして受け入れられるような情報の提示を積極的に行っていく必要性を強く感じています。



行政規模拡大で実現する、特色ある地域づくり
三島青年会議所 成川勝一理事長
(社)三島青年会議所
成川勝一理事長

 篠原 ところで、合併のメリット・デメリットの議論の中で、よく、合併すると地域の良さが失われると言われますが、みなさんはどうお考えですか。
 落合 旧田方郡中郷村は昭和30年に三島市に編入合併しましたが、未だに地名はありますし、独自の祭りをやっています。旧地名や歴史を全く無視して新たな名前を押しつけるのでは反発も買うでしょうが、地名が残り、祭りが残り、町内会が残っていくというやり方なら共感を得やすいと思います。
 米山 沼津も全く同じです。大正時代に合併した旧楊原村(現・香貫地区)は沼津市内とほとんど一体化していますが、大岡、金岡、大平などはまだまだ地域色が強い。小さな行政体でこぢんまり取り組むよりも、安定した大きな行政体に支えてもらった方が、地域の特色はかえって出しやすいのではないでしょうか。
 岡田 沼津の夏祭りはもう何十年と続いていますし、三島は大社を中心とした歴史ある祭りです。合併をしたからといってなくなることはないでしょうし、お互いが弊害になるわけでもない。むしろ、一つの市になることで相乗効果が期待できるのではないですか。


三島商工会議所青年部 落合義朗会長
三島商工会議所青年部
落合義朗会長

 篠原 特色あるまちづくりのための合併という考え方も成立しますね。
 落合 今、大社の夏祭りに三島市と観光協会は3000万〜4000円の補助金を出しています。合併で財政規模を大きくする一方で効率化できれば、例えば補助金を増やしてもっと大きなイベントに仕立てることもできるはずです。町なかで子どもシャギリをやる人が足りない、ならば中郷地区まで担い手の輪を広げよう。地域文化を保つには、交流範囲を広くして予算や人員を確保することも必要です。 
 篠原 今おっしゃったことは少子高齢化の非常に分かりやすい例ですね。介護にしてもかせぐ人が減って財政的に困難になった時に、パイを大きくすれば補える。文化も一緒。祭りを支える最低限の人数がある。シャギリなどは人がいなくなればできないのだから分かりやすい。年金もそうでしょう。
 落合 スケールメリットが期待できるのは、やはり福祉分野ですね。ここと横浜市とでは高齢者比率があまり変わりませんが、使っている金額を見ると格段に差があります。それだけ横浜市はパイが大きい。福祉にお金をかけられる規模になれるか、なれないかの違いです。
 


石川嘉延静岡県知事
沼津商工会議所青年部
米山和良副会長
合併協設置否決を機に、住民参加の地域論議を
 篠原 これだけ一体化した地域が5つの行政区に分かれている方がむしろ不自然にさえ思えますが、この地域の合併に一石を投じた2市2町法定合併協設置議案は、残念ながら三島市議会で否決されました。
 落合 法定合併協は合併の是非も含めて地域の基本計画を議論する場です。意見があれば調整すればいいし、どうしても賛同できない場合は離脱すればいい。2市2町は当然のことながら、1市3町の枠組みも議論できるのですが、その辺が議会の皆さんに認識されていたかは疑問ですね。
 成川 ですから今回の検証はしっかり行いたいと思います。なぜ三島市議会で否決されたかの理由も明確にして、法定合併協とは何かという定義をもう一度きちんと勉強した上で、任意であれ法定であれ、合併に向けた話し合いの場づくりをしたいと思います。
 米山 住民の方への情報提供も並行して行いたい。今回否決されても発議するところが替われば構わないでしょうし、函南、清水町商工会青年部を加えたわれわれ6団体が結束して、今後どういった手順を踏むか実践的な部分も含めて考えたいですね。
 篠原 いちばん関心を持ってもらいたい若い世代にどうアプローチしていくかも今後の課題ですね。
 米山 やはり財政的なことが一番だと思います。浜松市は地方交付税が約18億円。対して、長泉町は不交付です。両者を比べたときに、都市の規模や公共サービス、また中心部の文化施設など、果たして浜松と長泉のどちらが日常生活への満足度が大きいのか。交付金をもらっていないから財政が豊かで合併が必要ない、などという議論ではなく、本当の豊かさとは何かを住民自らが考え、それを実現するために何をすればよいのかを、真剣に考える時期が来ていると思います。
 篠原 確かに、東部は不交付団体が多いということを、昨今の平成の大合併の機運の中で自慢したり、また合併が不必要といった安易な判断に結びつけてきてしまった節はありますね。
 米山 逆に、僕らが行政に対して、東部は基盤整備が遅れているからやらなければならないと声を大にして言うべきです。また、行政もこれから少子高齢化が進む中でどこから財源を持ってくるのか、それを明確に示してほしい。住民の方にも浜松市や静岡市をよく見てほしいですね。
 岡田 今盛んに地方分権や地域主権と言われる中で、それぞれの行政体が規模に見合ったものをやっていくわけですが、結局、地域主権が行政主権になっているだけで、市民主権になっていない。住民の声を反映させた地域の将来像がないまま、権限だけが移譲されている状態です。
 篠原 今回の合併へ向けた一連の動きは、地域の将来像を真剣に考えるのはほかでもない、ここに住む私たち自身だということに気付かせるものでした。法定合併協設置はかないませんでしたが、今後、合併論議を進める上で、かえって議論のポイントが明確になったと思います。今日はありがとうございました。


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