サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 2000年に行われた伊豆新世紀創造祭から5年。創造祭をきっかけに芽生えたさまざまな地域活動の支援と、多様化が進む観光ニーズに対応するクラスター型観光地への転換を目的に、県は今年から3年計画で「伊豆ブランド創生事業」をスタートさせた。多様な観光商品をつくりだし、メディアを中心とした総合的な広報活動を行うことで、伊豆観光ブランドの育成と観光客の増加を狙う。
 9月の「風は東から」は、伊豆ブランド創生事業の概要と、シンボリックイベントに選ばれた「伊豆市まるごとTO-JI博覧会」を例に、新しいステージに突入した伊豆観光の将来像を探る。
風は東から
[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ6
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提案型観光地を目指す創生事業 ブランド化図り伊豆ファン獲得へ
伊豆サイクルフェスティバル
域外誘客イベント転換促進事業に選ばれた「伊豆サイクルフェスティバル」。
ツアーオブジャパン開催を核に、さまざまなイベントが行われた
伊豆ブランド化に向けた第2ステージが始まる
 バブル崩壊後の景気低迷が続く中、観光客の旅行ニーズやスタイルの変化への対応に後れを取った伊豆観光の振興を目的に、2000年に行われた伊豆新世紀創造祭。地域に埋もれていた、優れた観光資源を掘り起こす一方で、さまざまな地域活動の芽が育まれた。市町村自慢づくりで掘り起こされた多くの情報は、イベントや旅行商品の素材として有効活用され、へだSAKANAまつり、中伊豆「大楽校」、修善寺「桂座」など、地域に密着したイベントが多数生まれた。観光事業者だけでなく、地域住民も巻き込んだ新時代にふさわしい観光の仕組みづくりは、ワカガエルステーションでの情報提供やパーク&ライドをはじめとする交通システム整備などに結実している。
 こうした地域資源や人材・サービスに、さらに磨きをかけ、観光誘客の促進と新規マーケットの開拓を図るのが「伊豆ブランド創生事業」だ。総予算は3億円。イベントや観光商品づくりの補助と、顧客ニーズの調査に基づく新聞・テレビ・雑誌などのメディアを使った一貫性のあるマーケティング・PR活動が大きな柱。県生活文化部観光交流室の小林哲男主幹は「創造祭で多くのイベントや新たな資源が発掘できたが、当時は商品化までこぎ着けなかった。今回の事業はこうした資源をいかに商品化し、誘客に結び付けるかを具体的に試みる機会」と語る。創造祭を伊豆のブランド化に向けた第1ステージとすれば、今回の事業はいわば第2ステージ。創造祭以降、磨かれてきた伊豆の魅力の観光商品化と継続的に提供できる体制づくりに加え、明確なコンセプトにもとづく情報発信を行うことで、伊豆ブランドの構築を通じ、具体的な集客力を伴った足腰の強い観光地への転換を図る。


地域の多彩な魅力を結集
PR広告
静岡県が新聞やチラシ、ホームページなどに掲載したPR広告。
「訪れる人それぞれが楽しめる伊豆」を表現している

 地域からの公募で行われる伊豆観光活性化推進支援事業には、滞在型、周遊型観光商品を生み出す「伊豆メッカづくり推進事業」と地域イベントをグレードアップし、域外からの誘客を図る「域外誘客イベント転換促進事業」を用意する。行政、観光協会、民間、NPOなどの団体から49事業がエントリー、32事業が採択された。誘客の手法が明確なこと、ターゲットへ情報発信が的確なことが採択の決め手となった。
例えば、稲取温泉旅館協同組合の「エコツーリズムのメッカづくり事業」は、町全体で取り組むリサイクル活動を首都圏の学校に総合学習体験の場として売り込む。また、土肥温泉旅館協同組合では、土肥港と清水港を結ぶフェリーに着目、県中部の大学生をターゲットに恋人の里としてPRする。ほかにも、伊豆サイクルフェスティバル(同フェスティバル運営協議会)など愛好家を中心に効果的な集客につながる事業が採択された。
 マーケティング・PR活動では、首都圏向けに全国有力紙上で広報を展開。「伊豆半島まるごとテーマパーク宣言」をキャッチコピーに、伊豆の多様性を「訪れる人の数だけ楽しみがある」伊豆ならではの魅力として訴える。さらに伊豆での思い出や自分が行ってみたい旅行プランを提案する「あなたの伊豆時間コンクール」や、「小学生記者伊豆取材ツアー」などのキャンペーン事業を通じて、観光客の目線を大切にする伊豆の姿勢をアピール。あふれんばかりの多彩な魅力と、身近で親しみやすいテーマパークとしてのブランドイメージの形成を進めていく。
 


求められるワンストップ型の旅行代理店機能
 伊豆の宿泊客数は平成3年の1993万人をピークに平成15年には1270万人に減少したが、依然として県内宿泊客数の約65%を占める。割安な海外旅行、新興観光地の台頭、旅行ニーズの細分化で長らく低迷が続く伊豆観光を再び活性化させ、誘客が図れれば、県全体の交流人口拡大にもつながる。
 伊豆ブランド創生事業がブランド形成の基盤づくり、コンテンツ整備だとすれば、次に来るのは伊豆ファンの組織化だ。県が目指す「伊豆倶楽部」では、ダイレクトな情報発信を継続し、顧客を囲い込むことで安定したリピート需要の喚起を狙う。
 それには「地域の魅力を商品に仕立て、地元から積極的に提案し、売り込むといったワンストップ型の旅行代理店機能を地域自らが持つことが大切」(小林主幹)。例えば、長野県の南信州観光公社は、南信州の自然を生かしたエコツーリズムやグリーンツーリズムをはじめ地域の人々との交流を中心とした約160のプログラムを用意。大手旅行代理店に積極的に売り込むことで、首都圏の小中学校の体験教室や企業研修、各種セミナーを多く受け入れている。
 お仕着せの観光メニューではなく、顧客のニーズに柔軟に対応できる観光プログラムの創造―求められるクラスター型観光地への転換には、こうした情報の編集と発信、受け入れが同時にできる拠点を伊豆各地に作ることが欠かせない。
 一度では味わいきれない伊豆の魅力。豊富な観光資源と首都圏に隣接する立地の良さを武器に、顧客依存型の観光地から自立型の観光地にシフトできるのか、伊豆ブランド創生事業は、ブランド化に向けた”伊豆の実力“を消費者に直接問う実践の場となる。


ウエルネスのメッカづくり「伊豆市まるごと TO-JI博覧会」 10月1日〜30日開催
伊豆市まるごとTO-JI博覧会

温泉療養からストレスケア、心身のリフレッシュまで…。「温泉健康サービス先進地」をめざす伊豆市が元気の素・満載!の体験メニューをご用意して、お待ちしています。

お申込は―伊豆市役所総務部企画課ウェルネスセンター
●電話で〈専用コールセンター〉0558-85-2617
●インターネットで http://www.to-ji.com


 「伊豆メッカづくり推進事業」のシンボリックイベント「伊豆市まるごとTO-JI博覧会」。「TO-JI」とは、古くからの温泉療養だけでなく、癒しやリフレッシュ、運動、自然体験など、伊豆市ならではの体験プログラムを加えた21世紀型の「新しい湯治の形」。豊かな環境を生かしたウエルネスプログラムを通じて、訪れる人々に心身ともに健康になってもらおうという試みだ。
 事務局は伊豆市のウエルネスセンター(天城支所)。昨年4月に誕生した伊豆市は旧4町(修善寺・天城湯ヶ島・中伊豆・土肥)が持つ豊富な観光資源を「健康」の視点でくくり直し、観光を機軸にしたウエルネス産業の創出と、市民の健康づくりへの貢献を柱に、地域のウエルネス化を進めている。同センターはその要として、ことし4月に設立された。
 同センターは行政、観光関係者、農業関係者などから構成するTO-JI博覧会実行委員会を設立。市内全域で行われている体験プログラムを集約し、テーマ別に分類、42のプログラムから観光客が自由に選択できるシステムを導入した。集まったプログラムを組み合わせ、新たなメニューも創り出した。修禅寺境内を舞台にした「朝の太極拳」はその一つ。市民が行っている太極拳を伊豆の名刹(さつ)修禅寺で体験することで、観光客にも魅力的なイベントに生まれ変わった。また、森林ボランティアと天城流湯治体験を組み合わせた「森林&温泉セラピー」など、今まであまりなかった森林型プログラムも開発した。
 誘客は主に、旧4町の観光協会と強力なパイプを持つ旅行代理店各社と、市内の温泉宿泊施設が提携する県内外の健康保険組合を通じて行う。健康ブームを追い風に健保組合の反応も上々という。
 博覧会準備の過程で、新たなプログラムの発掘や人材の育成なども進んでいる。今回はほとんどが事前予約だが、フリーの観光客でも気軽に参加できるプログラムの開発や、交通手段の確保など、即に次の課題も見えてきた。「こうした反省を繰り返して3-4年後にはセンター機能を民間へ委託したい」と同センターの鈴木正所長。そのためにも「異業種間の連携が大切」と語る。
 会期中、温泉を使ったリラクゼーション、変化に富んだ自然を楽しむウオーキング、ワサビ漬け作りやシイタケ収穫体験、陶芸や手すき和紙などの工芸体験、文化財級の日本旅館の見学ツアーなど、42のプログラムが日替わりで楽しめる。
 


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