「それではまいりましょう」―。元気のいい掛け声とともにリュック姿の中高年男女約20人が伊豆箱根鉄道田京駅を出発した。一行は、伊豆八十八カ所をウオーキングで巡るグループ。思い思いのペースで最初の目的地である十一番札所、長源寺(伊豆の国市)に向かった。
世話役の田中康男さん(伊東市)は定年退職後の趣味として四国八十八カ所巡りを計画したが、体調を崩し断念。同じころ、知人の話から伊豆八十八カ所の存在を知り、5年ほど前から寺巡りを始めた。今回は、すべての行程を徒歩で回り、昨年12月から月1回のペースで、全25回を予定している。毎回20人前後が参加する。
春真っ盛りの伊豆。黄色い菜の花、色とりどりのチューリップ、気の早い芝桜が濃いピンクのじゅうたんを広げる。あまりの美しさに一行は何度も足を止める。庭先で植木をせん定している地元住民に気軽に花の名前を尋ね、しばし歓談する場面も。
小一時間歩いた後、長源寺に到着。あらかじめ連絡を入れてあるので、寺の応対もスムーズだ。あいさつ後は本堂に上がり、納め札とさい銭を納めて住職の読経に全員で唱和する。時間があれば、住職の説法や寺の由来などを聞くことができる。その間、参拝した証として納経帳に朱印を押してもらう。寺を回るごとに朱印が増えていくのがお遍路の楽しみの一つだ。
田中さんが代表を務める伊豆霊場振興会の会員は現在180人。多くが地元だが、県中西部はもちろん首都圏からの参加も多い。九州に住む会員もいて、頻繁には来られないため田中さんが情報を提供している。年齢層は40代後半から80代と幅広い。横山博さん、周子さん夫妻は伊東市から参加した。博さんは「健康づくりが目的。同じ趣味を持つ仲間と知り合ったり、住民とのふれあいが楽しい」。周子さんも「寺院に何気なく安置されている鎌倉時代の仏像を見ると心が洗われる」と語る。
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