サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 サッカーワールドカップや、大規模なコンサート、国際会議など、国内外から大勢の人が集まるコンベンション。少子高齢社会を迎え、交流人口の拡大が地域活性化のカギを握る現在、コンベンション機能の強化は欠かせない地域戦略の一つだ。人・もの・情報が集まることで地元での消費活動はもちろん、長期的には新産業が生まれ、雇用機会が拡大する。全国各地でコンベンションビューローが立ち上がり、誘致合戦が過熱する中、県中部、西部から遅れてようやく東部にもビューロー設立の機運が高まっている。1月の「風は東から」は、東部での設立の動きを追った。 風は東から
[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ10
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コンベンションビューロー設置へ高まる機運 交流人口拡大に欠かせぬ東部の広域連携
東部で増えるコンベンション
 昨年11月、三島駅北の東レ総合研修センターで第3回日本褥瘡(じょくそう)学会中部地方会学術集会(会長・青木和恵静岡がんセンター副看護部長)が開かれた。集まったのは看護師を中心に医療関係者約600人。宿泊のあっせんや学会のホームページ製作、印刷物などはファルマバレーセンターとぬまづ産業振興プラザ、沼津観光協会、しずおかクリエイティブ協同組合で構成する「東部学会誘致支援研究会」が請け負った。
 静岡がんセンターが開設して5年。世界中からがん研究者を招いての「静岡がん会議」も今年で9回目を数える。同センターの山口建総長は「学会運営をサポートする地域の受け皿がないため、職員が忙しい業務の合間を縫ってツーリストとの交渉や宿泊の手配などを行っているが、すでに限界」と語る。同研究会はこうしたニーズに応えて誕生した学会運営支援組織だ。


コンベンションにはうってつけの環境
静岡がんセンター関連の学術集会(下)に、各地から集まった参加者(上)
■静岡がんセンター関連の学術集会(下)に、各地から集まった参加者(上)。東部ではこのような大規模な催しが相次いで開かれている


 学会や業界、組合などの関係者が一堂に会する国内大会・国際大会をはじめ、行政、企業が行う研修会・セミナー、シンポジウム、また見本市や展示会、各種イベントなどを総称して「コンベンション」という。それは「人が非日常的に共通の目的をもって一定の場所に集うこと」を意味する。
 開催地にとってのメリットは大きく、人・もの・情報・マネー・文化などの移動が生まれ、地域に経済的、社会的効果がもたらされる。
 また、宿泊、飲食、みやげ物購入などを伴うことで観光関連産業を活発化し、アフターコンベンションでの周辺観光による直接的効果も見込めることから、交流人口を生み出す新たな分野として観光との相互補完が期待されている。
 すでに県中部、西部ではコンベンションの誘致や開催の支援を専門に行う「コンベンションビューロー」が立ち上がり、年間300を超えるコンベンションを受け入れている。ビューローは主に、(1)主催団体に対する誘致(2)コンベンション開催に対する各種支援(会場や関連業者の紹介・あっせん、開催準備資金の貸し付け、パンフレット・グッズの提供、アトラクション、エクスカーションの紹介、機材の貸し出しなど)―を行っている。県も一昨年、生活・文化部内に静岡県コンベンション推進センターを立ち上げ、地域と一体でコンベンションの誘致強化を図っている。昨年5月には日本平にAPEC(アジア太平洋経済協力会議)観光作業部会の誘致に成功、国内外のマスコミに大きく取り上げられた。
 観光・コンベンションを担当する静岡県生活・文化部の中村善行理事は「県内のバランス良い発展を考えると、東部にもビューローがあった方がいい。東部は、富士山、温泉、海といった豊富な自然と、遺伝学研究所、静岡がんセンターなどの国際的研究機関、大手企業の研究所、開発部門などが集積している。首都圏からも近く、宿泊施設もそろっている。コンベンションを開催するにはうってつけの地域だ。観光にも結び付けやすい」と語る。


8市5町が研究会、設立に向けて大きな一歩
 県は東部各市町を回り、コンベンションビューローの必要性を訴えてきた。当初は富士山を囲む6市(沼津・三島・富士・富士宮・裾野・御殿場市)を予定していたが、検討する中でもっと広域で行おうと、伊豆・伊豆の国の2市と、小山・長泉・清水・函南・芝川の5町を加えた8市5町の枠組みが決定した。
 昨年1月の会合では市町で理解度の差もあり、いきなりビューローを設立するのではなく、まずは勉強の場としての研究会を立ち上げることで一致。事務局を沼津市が担い、温度差を埋めるための講演会を3月に行った。こうして、昨年5月「東部地域コンベンションビューロー研究会」が立ち上がった。
 研究会は各市町、商工会議所、商工会、JC、観光協会などからなる。幹事会と三つの委員会を置き、幹事会は東部にふさわしいビューローの形態を、委員会はそれぞれ(1)コンベンション開催が地域にもたらす効果(2)会場、宿泊施設、交通機関といったコンベンション開催に求められる環境整備(3)コンベンション開催効果を地域活性化につなげるための観光との補完性―についての研究を行っている。
 昨年10月には、石川嘉延県知事と研究会に参加する首長、助役による懇談会を開催。席上石川知事は「中部、西部にはしっかりしたビューローがあるが、これから富士山静岡空港、第二東名が整備される中で広域的に連携し、交流人口を増やさなければいけない。そのためには東部地域にビューローが必要。県も支援を考えているので、沼津市を中心にぜひ進めてほしい」と早期の設置を要望した。出席者から異論は出ず、ビューロー設置に向けて大きな一歩が踏み出された。

受け皿整備に必要な広域的視点
斎藤市長
■ビューローの11月設立に向け、意欲を見せる斎藤市長

 しかし、東部唯一の国際会議場「東レ総合研修センター」がある三島市は、富士・箱根・伊豆観光の拠点ともなるビューローを2年後に完成予定の三島駅北口再開発ビル(仮称)に置きたい意向を持っている。同市政策企画課は「設立準備会には参加するが、場所については立地や市場性、交通、産業、観光資源など必要な調査をした上で決めてもらいたい」と慎重姿勢。新幹線駅という地の利を生かし、用途地域見直しによる駅北口周辺の再開発を通じてコンベンション機能の強化を図りたい考えだ。
 もともとビューローはコンベンションの誘致や開催の支援を行う「窓口」。どこにあってもいい。ただ、利便性の面から大型コンベンションホールに隣接・近接していることが多く、将来的に東部に大型のホールを設置するとなった場合、ビューローを持っている方が誘致に有利との見方も働く。
 こうした状況に県の中村理事は「東部に大型のホールがあってもいいが、ハード整備は次の段階。今はコンベンションを数多く受け入れ、経験を積むことが大切。その上で、地域が一体となってグランシップのような大規模ホールが必要と合意できれば、県としてもお手伝いできると思う。ビューローイコール大規模ホールと考え、ビューローの誘致合戦をしているのでは、いつまでたっても前に進まない」と苦言を呈する。
 沼津市の斎藤衛市長も「ビューロー設立は地域の活性化から言って急務。西部、中部では10年も前に立ち上がっている。研究会メンバーの意向は尊重しながら、3月には研究会を設立準備会に格上げし、11月設立に向けた合意形成を急ぎたい」と語る。その上で、「設置場所の提供や市職員の派遣など、積極的なリーダーシップを発揮したい」と意欲的だ。
 山口総長も、「ぬまづ産業振興プラザを中心にイベント開催や学会運営のノウハウも積み上がってきている。三島駅北口ビルが未整備である以上、まずビューローを沼津に置き、東部・伊豆のコンベンション・観光連携のシステムづくりを進め、この地域の活性化に役立てるべき」と主張する。
 ビューローが活動を始めれば、コンベンション誘致は進む。音楽イベントならロゼシアター・ゆうゆうホール、見本市はキラメッセぬまづ、スポーツイベントなら裾野の運動公園、会議は東レ総合研修センターや企業の研修施設など、コンベンション主催者に適切な施設の情報を提供できる。宿泊施設として温泉場を積極的に紹介することも可能だ。こうしてビューローは、コンベンションを通して地域の価値を高める役割を果たす。
 この秋にはF1日本グランプリや技能五輪国際大会の開催を控えている東部地域。2年後に富士山静岡空港が開港すれば、さらに多くの人やもの、情報がこの地に集まるだろう。狭い市域にとらわれず、こうしたチャンスを生かすためにも、交通網の拡充やコンベンション関連産業の育成など、広域的な視点での受け皿整備が望まれる。


コンベンション開催による経済波及効果の一例

経済波及効果(A+B) 3億1,822万円
  (A) 直接的経済効果 1億1,686万円
    参加者 8,200万円
    主催者 3,486万円
  (B) 間接的経済効果  2億135万円 
その他間接的経済効果
    所得形成効果 6,297万円
    税収増大効果 833万円
 
大会概要
【第54回全国ろうあ者大会】
会期 2006年6月7日〜11日(5日間)
会場 グランシップ
(静岡県コンベンションアーツセンター)ほか
参加者数 3,028人
平均宿泊日数 1.54泊
宿泊者一人平均消費額:31,764円
(内訳:宿泊費11,314円、土産代5,657円、交通費4,345円、食事代4,505円ほか)

(静岡コンベンションビューロー調べ)

訂正
2006年12月28日付朝刊東部版「風は東から」掲載の小林製作所(長泉町)は日幸製作所(長泉町)の誤りでした。お詫びして訂正します。


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