サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 東部地域の活性化を考えるサンフロント21懇話会は、活動方針の一つに「広域行政の推進支援」を挙げている。合併第2弾に向けた動きが加速する中、県内では今年4月に浜松市が政令指定都市に移行、人口約82万人の県内最大規模の都市が誕生した。激化する地域間競争に勝ち抜くためにも、静岡、浜松に負けない力のある都市が東部にも求められている。「風は東から」5月は、政令市実現に向けた東部の現状と課題を整理する。 風は東から
[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ2
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生活圏が一体化。合併推進審が3市3町を構想に答申
図1 県市町村合併推進構想に盛り込まれた組み合わせ(東部地区)

 県内には4月現在で、42の市町があり、うち6市町で法定合併協議会が設立されている。協議中の組み合わせで合併した場合、平成22年3月までに39市町(23市16町)となる見込みだ。県はさらなる市町村再編のための合併推進構想を策定。静岡産業大学の大坪檀学長を会長とする県市町村合併推進審議会は、地域活動がすでに一体化している地域として、東部3市3町(沼津、三島、裾野、長泉、清水、函南)を答申。今月17日の石川嘉延知事を本部長とする本部会議で正式に構想に盛り込まれた。(図1)
 石川知事は折に触れて、中・西部に政令市ができる中、県内のバランス良い発展のためには東部への政令市実現が不可欠との見解を述べている。県総務部の市川彰分権担当理事も「東部地域が今のままでは東京の吸引力に負け、相対的に落ち込んでしまう。そうならないためにも政令市を目指すべき。東部の発展はひいては伊豆半島の発展にもつながってくる」と東部政令市の必要性を語る。
 今回構想に盛り込まれた3市3町は政令市を目指す一つのステップとして位置づけられており、しかも「この構想は合併新法が失効する平成22年3月までに実現可能な組み合わせをベースに考えている」(市川理事)。静岡や浜松、他県の事例では、政令市になるには核となる中核市以上の都市の存在が不可欠。3市3町、48万人規模でまずは中核市を形成し、政令市実現に向けて弾みをつけたい考えだ。
 また、3市3町の枠組みの理由として、審議会は生活圏の一体性を挙げた。通勤、通学、買い物、通院など50余りの日常行動の指標を数値化、この地域の一体性が相互に高いことを提示した。


政令市に向けた取り組み。地域の温度差くっきり
 東部では平成15年、現在の5市4町(沼津、三島、裾野、御殿場、伊豆の国、清水、長泉、函南、小山)で作る「東部広域都市づくり研究会」(会長・斎藤衛沼津市長)が、おおむね10年後をめどに政令市を目指すことで一致している。しかし4年が経過し、その間、伊豆の国市や新沼津市が誕生したものの、政令市に向けた具体的な動きには結びついていない。今年1月末に開かれた研究会では、合意事項や実現までのプロセスに、首長間で温度差がくっきり現れる結果となった。
 広域合併推進を支援する懇話会は今月中旬、研究会に参加する5市4町に、研究会が目指す都市の規模、合併時期、手段についてのアンケートを行った。(図2)
 都市の規模については、政令市要件の70万都市と答えた首長が半数を占める中、沼津市は研究会の「5市4町」、伊豆の国市は伊豆・岳南を含む「100万都市」と回答。おおむね10年後に合併とする研究会の合意事項については、4市町が努力目標とするのに対し、沼津市・函南町は「タイムリミット」と答えている。
 また、合併方法については「段階的合併」が4市町、合併には相当な時間と労力がかかり、また効果が出るまで時間を要することから「一気に目指すべき」と答えた市町も4市町あった。
 「政令市実現のために今後どのようなステップが必要か」との問いには、「住民との合意形成」「東部将来像に向けての首長間の意思統一」という抽象的な表現にとどまっている。その中で「外部より東部政令市実現のためのアクションを起こすことが必要」(伊豆の国市)、「一部事務組合など連携協力関係のある市町間で合併の検討を進める」(御殿場市)との意見もあった。
図2 東部広域都市づくり研究会アンケート

東部に欠ける将来ビジョンとリーダーシップ
 4月には会長を務める斎藤市長が研究会再開を表明、今後の動向が注目される。県東部地域支援局の渡邉登局長は「確かに5市4町に温度差はあるが、先日斎藤市長との懇談では『今年は(合併に向け)動いていきたい』という明確な言葉をうかがっている」と同市のリーダーシップに期待する。大坪会長は「次の時代、東京一極集中が終わり、地方の時代が来る。そのときの政治形態は道州制、あるいは別の新しい枠組み」とした上で、「この地域がどう発展していけるのか。それには、合併を目先の損得で考えるのでなく、東部の発展性や魅力をまとめ上げ、そこに住む人々の生活を豊かにするための戦略を長期的な視点に立って考えられるリーダーの存在が不可欠」と語った。
 市川理事は「東部の将来は、第1弾の合併ができるかにかかっている。政令市を実現するためには、今、3市3町の合併が必要。この合併が実現すれば相当力の強い自治体が誕生する。平坦な地形は良質な住環境を可能にし、ファルマバレープロジェクトなどの新産業も興りつつある。観光面、余暇、スポーツ・レクリエーション、すべてが一つの都市にそろっている。全国的に見ても例がないほど充実した都市になる」とこの地域の可能性を指摘する。
 一方、3市3町の答申に対し、県民から広く意見を募るパブリックコメントには「今まで十分にやってきたのだから、合併をする必要がない」との反対意見も寄せられた。財政的に危機的状況にないこの地域では合併に対する住民の関心もまたそれぞれだ。首長アンケートに見られるように、住民との合意形成を図るためにも、一刻も早い地域の将来ビジョンの策定が求められている。


東部に70万政令市を
 地方分権の時代、地域が自立し、魅力ある地域づくりをするためにも、規模の拡大は必要不可欠。「魅力ある地域」とは、市民が住んでいて良かったと思える地域であり、市民がメリットを享受できるようにするためには、地域行政への財源・権限の大幅な移譲を実現しなければならない。それには、特例市(20万人)、中核市(30万人)レベルではなく、県と同等の権限・財源が確保できる政令市となることが必要だ。そのためには東部5市4町に伊豆を含んだ70万人規模の自治体となる必要がある。懇話会は今後も、東部政令市構想を掲げ、各種の調査・研究を行いながら魅力ある東部地域づくりに向けた積極的な提言活動を行っていく。



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