サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 東部活性化の方策を探るサンフロント21懇話会特集「風は東から」。7月は、13日に行われた東部地区分科会でのパネルディスカッションを取り上げる。パネリストに2007ユニバーサル技能五輪国際大会日本組織委員会の西村公子総務部長、静岡県産業部の牛島聡就業支援局長、沼津市の植松秀年技能五輪国際大会推進局長、沼津青年会議所の小笠原啓之理事長を迎え、4ケ月後に迫った技能五輪国際大会の準備状況や、大会が地域にもたらす効果について聞いた。コーディネーターは静岡経済研究所の大石人士研究部長。 風は東から

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ4

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富士山世界遺産登録は文化創造 癒しの景観つなぎ、選ばれる地域に
静岡県産業部 牛島聡就業支援局長
静岡県産業部
牛島聡就業支援局長

94年労働省(当時)入省。04年静岡県商工労働部就業支援総室長。本年度から産業部就業支援局長として雇用・労働政策の総括を担当。

2007ユニバーサル技能五輪 国際大会日本組織委員会 西村公子総務部長

2007ユニバーサル技能五輪
国際大会日本組織委員会
西村公子総務部長

78年労働省(当時)入省。以後、職業安定行政、雇用機会均等行政などに携わり、03年職業能力開発局能力開発課主任職業能力開発指導官。本年4月から現職。

15万人が訪れる世界大会。開催準備も着々
大石 今日は「翔け 匠のわざ」をテーマに、沼津市で開催される技能五輪国際大会について、大会がどれほどの規模なのか、現在の準備状況も含め伺いたいと思います。

西村 2007年ユニバーサル技能五輪国際大会は、第39回技能五輪国際大会と国際アビリンピックが史上初めて同時開催されます。競技は技能五輪が11月15日から4日間、アビリンピックは3日間の日程です。
 沼津市が会場となる技能五輪国際大会には50の国・地域から800人を超える選手が参加し、日本からは51人が出場予定です。選手の真剣な姿には胸が熱くなります。きっと本物の持つ素晴らしさがあるからでしょう。日本組織委員会では、そうした感動を皆さんに体験していただけるよう準備を進めています。

牛島 県は主に、会場整備、輸送、ボランティアなどを担当します。会場となる門池地区は17の建物で構成されます。すでに四つが出来上がり、残り13の仮設テントを10月初旬までに作ります。
 会期中、約15万人の人出を見込んでいます。周辺は道路が狭く、大きな駐車場もないので、JR沼津・三島両駅と会場までをシャトルバスで結びます。自動車の方は愛鷹運動場にとめていただき、そこからバスを出します。期間中はかなりの混雑が予想されますが、ぜひご理解ください。
 ボランティアは募集を終え、7月末から研修に入ります。技能五輪だけで選手団付きが約140人、会場内や輸送の関係で約600人です。選手団付きの約半数、一般活動の9割以上が東部の方です。応募者が多く、活動日数を短くするといった調整もありました。改めて感謝したいと思います。

大石 地元ではもてなしの準備が着々と進んでいますが、もてなされる側の選手をはじめとする来場者の動きはどうなるのでしょうか。

西村 選手たちは11日ごろに成田空港に続々到着します。今回の大会では御殿場、富士、裾野に選手村を作りました。そこに選手とチームリーダーと呼ばれるまとめ役の人たちが宿泊します。御殿場に800人、富士に60人、裾野に65人となります。12日は沼津市の小中学校で子どもたちと交流し、13日は工具展開といって競技に必要な道具を会場内で確認します。14日はグランシップで開会式。15日からの4日間、延べ22時間の熱い戦いが繰り広げられます。19、20の2日間は、エクスカーション(小旅行)やおもてなしプログラムを楽しんでもらいます。そして、21日、キラメッセぬまづで表彰式と閉会式が行われます。
 大会には関係者も大勢訪れます。各国からエキスパート(審査員)がやってくるのが8日。エキスパートは職種ごとに集まって最終的な競技課題を詰め、審査基準を決定します。そのほか、派遣する国の公式代表や技術代表などがやってきます。大会の公用語は英語、ドイツ語、フランス語ですが、世界各国から来ますので、通訳も大勢います。関係者のほとんどは沼津、三島周辺に宿泊予定です。

大石 15万人とも言われる見学者はどういう形で訪れるのでしょうか。

牛島 入場無料ですので、どこからどれぐらいの方が来るか予想がつきませんが、団体バスは事前に登録していただいており、現在4万2千人です。工業高校、中学校など学校関係が多いですね。一方で、平日ということもあり企業の方の申し込みは現在1万人、今後伸ばしたいと考えています。企業の方はお金もありますので、地元に及ぼす経済効果も期待できるのではないでしょうか。
 また、県外から来られる方が9千人程度です。日帰りの方もあれば観光しながら泊まっていく方も多いと思います。
 


市民総参加のおもてなし。一校一国サポートで深まる国際理解
沼津青年会議所 小笠原啓之理事長
沼津青年会議所
小笠原啓之理事長

92年大学卒業後、国際電信電話(現KDDI)入社。98年宇徳通運入社。99年青年会議所入会、06年副理事長、07年理事長。


沼津市 植松秀年技能五輪国際大会推進局長
沼津市
植松秀年技能五輪国際大会推進局長

71年沼津市役所入り、市民福祉部障害福祉課長、建設部街路課長、産業振興部次長を歴任し、06年から現職。
大石 大会の規模がお分かりいただけたでしょうか。期間中は本当に大変なことになると思います。次に、ホストエリアとして沼津市の取り組みを聞かせてください。

植松 昨年の市民意識調査では約7割の市民が大会を知っていると答えるまでになりました。現在、市民参加型総合歓迎キャンペーン「ごきげん、ぬまづ。」を展開しています。
 大会期間中は門池公園に、「おもてなし会場」を作り、お祭り広場、国際交流などのイベントを予定しています。また今大会を沼津市だけでなく、東部全体で盛り上げ成功させようと、東部7市6町の自治体、観光協会、商工会議所の皆さんと一緒に、おもてなし会場で物産展やイベントを開催することになりました。
 閉会式会場となるキラメッセぬまづでは、駐車場に企業PRブースを設け、東部の最先端技術を持った企業の参加を予定しています。さらに環境美化や花いっぱい運動にも多くの企業、市民に参加していただいています。
 また、4月にはPR活動の一環で子どもたちからポスターを募集しました。東部各地の児童生徒から応募があり、とてもいい作品が集まりました。沼津青年会議所を中心に進めているのが一校一国サポート事業です。市内の全小中学校が参加国の中から応援する国を決め、メッセージ交換や、その国の料理を作るなど理解を深めています。

小笠原 一校一国サポートは、各校好きなことをやってもらっています。今はインターネットがありますので、それで調べてもわからないことは支援します。例えば大使館あてのあいさつ文はこちらで用意しています。また、共通課題として、選手村に飾るパネルを作りました。パネルには母国語で書かれた応援メッセージや、国旗が描かれています。

大石 子どもたちの活動で面白いものはありますか?

小笠原
 自分たちでクイズを作り、正解を競い合っています。クイズを作るにはその国のことを知らなければなりませんので、文化面まで踏み込んで調べていると聞いています。国歌の意味を調べている生徒もいるそうです。また、修学旅行のルートに大使館を組み込んだ学校もあれば、逆に大使を沼津にお招きして交流を深めている学校もありました。活動は「ごきげん、ぬまづ。」のブログなどで紹介しています。
 沼津は商業都市とよく言われますが、ねじ産業や医療機器など世界に誇るものづくり技術も多い。この大会をきっかけに、沼津市のものづくりや日本人が忘れかけているものづくりの大切さも子どもたちに浸透させたいと考えています。



静岡経済研究所 大石人士研究部長
静岡経済研究所
大石人士研究部長

79年静岡銀行入行後、82年静岡経済研究所出向。統括研究員、研究部副部長を経て05年から現職。サンフロント21懇話会シンクタンクTESS研究員。

大会開催は大きなチャンス。地域全体で国際交流、人材育成目指す
大石 この大会は単に技能という面だけでなく、地域にとっても重要な大会です。それぞれのお立場から、この大会を今後の地域づくりに生かすためのアドバイスをお願いします。

小笠原 一校一国運動を通して、子どもたちの職業への興味や国際交流に対する意識を高めたいと思います。大人も国際交流という言葉に身構えることなく、外国の方にあいさつするなど簡単なことから始めてほしい。先日、役員の方が沼津にお見えになり、夜、カラオケにお連れしました。外国人が大勢来たと不安そうだったお店の方も、最後は一緒になって盛り上がりました。大上段に構えず、まず一歩を踏み出す、そうした市民の意識改革が必要と感じています。

西村 とにかく会場に足を運んでください。人間ってすごいなぁ、こんなことができるんだというのを、特に若い人に見てもらいたい。それがこの静岡の明日の基盤づくりにつながると思います。また、外国の方とぜひ触れ合ってください。彼らは世界中に帰っていきます。沼津は良い街だったという話が一つの点から大きな面になることを願っています。

牛島 99年に本県で開かれた技能五輪の全国大会には県内から120人の選手が出場しました。ところが3年後の大会では9人に激減しました。こういうことを繰り返してはいけないと思います。大会終了後の建物には県の技術専門校が入ります。近隣には国立沼津高専も県工業技術支援センターもありますので、ある意味で人材育成の集積地になると考えています。技能五輪開催地として多くの人材を輩出する地域になることを期待しています。

植松 22歳以下の世界を代表する選手たちが一堂に会する大会です。ぜひ子どもたちを会場に連れていってください。日本全体に言えることだと思いますが、子どもたちのものを大切にする気持ちが希薄になっています。若者が一生懸命挑戦する姿を見て、ものづくりの楽しさ、苦しさ、大切さを感じてほしいですね。

大石 技能五輪国際大会は、今まで首都かそれに類する大都市で開かれてきました。それが沼津市で開かれることに大きな意義があります。このチャンスを生かすには組織委員会、県、市、何にもまして市民の協力が不可欠です。ぜひ、大会を通じて世界各国の方に「真心」を伝えてください。まずは、一人でも多くの方に会場に行っていただくことをお勧めします。
 


「翔け 匠のわざ」  会場では、技能五輪で実施される3種類のデモンストレーションが行われた。
洋菓子製造 嶋村早織さん(浜松調理菓子専門学校)
メカトロニクス 山添将志さん、林浩和さん(日産自動車)
金属屋根葺き 久保拓也さん(久保板金)
洋菓子製造
嶋村早織さん(浜松調理菓子専門学校)

会場ではピエモンテと呼ばれるあめ細工を披露。技術力は言うに及ばず、作品のテーマに沿った表現力、デザイン力が試される
メカトロニクス
山添将志さん、林浩和さん(日産自動車)

生産現場を想定し、装置の設計、組み立てやプログラミングの速さと正確さを競う。2人の無駄のない、息の合った動きが見どころ
金属屋根葺き
久保拓也さん(久保板金)

久保さんは日本代表として技能五輪国際大会に出場する。板金手工具、折り曲げ機などを使い、指定された溝幅の屋根(立平葺き)を、美しく、正確に製作する


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