サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 モータースポーツの最高峰、F1日本グランプリがいよいよ1カ月後に開幕する。3日間で国内外から約28万人が訪れる世界レベルのビッグイベントだ。会場となる小山町の富士スピードウェイは、約200億円を投じ、世界最長(約1.5キロ)の直線コースはそのままに、最新鋭の高速サーキットに改修された。30年ぶりの開催に地元小山町をはじめ近隣市町は受け入れ準備に躍起となっている。8月の「風は東から」は、世界を魅了してやまないF1の魅力と、F1開催を契機とした地域活性化のヒントを探る。 風は東から
[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ5
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未体験のスピード感。感動と興奮のF1レース
新しく生まれ変わった富士スピードウェイ
■新しく生まれ変わった富士スピードウェイ

 オリンピック、サッカーワールドカップと並ぶ、世界3大スポーツイベントのひとつF1。世界約180カ国でテレビ放映され、毎戦1億5000万人が観戦する。メーカーの開発費、イベント費用、放映権、開催地での経済効果などを合わせるとワンシーズンに1兆2000億円が動くといわれる。
 F1の魅力は何といってもその臨場感にある。時速300キロを超えるスピードと、独特の甲高いエンジン音、レーシングカーが通り過ぎた後のタイヤやオイルが焼けるにおい―。サーキットには日常では決して感じることのできない興奮と華やかさが満ちている。
 世界的な大手自動車メーカーが技術の粋を集めたマシンは、スタートから2秒台で時速100キロ、5秒半で200キロに達する。コーナーを曲がったり減速したりする時にかかるG(重力加速度)は実に体重の5倍。地球上にたった22人の選ばれたドライバーだけがピットに立てる、まさに究極のモーターレースだ。


盛り上がる小山町。懸念される周辺の交通渋滞
100日前カウントダウンイベント。地元の幼稚園児をはじめ、大勢の関係者が集まった
■100日前カウントダウンイベント。地元の幼稚園児をはじめ、大勢の関係者が集まった



 お膝元の小山町は30年ぶりのF1開催とあって盛り上がりを見せる。
 町役場では国内外からF1を見にやってくる人々を温かくもてなそうと、商工会、観光協会と連携し「小山町F1日本グランプリ協力会」を立ち上げた。「感動が駆けめぐる町―おやま」をキャッチフレーズにさまざまなPR活動を展開。6月20日には、道の駅「ふじおやま」でF1マシンを持ち込んだ100日前カウントダウンイベントを行った。夏恒例の小山町金太郎夏まつりでは、「F1日本GP開催イベント」と題し記念グッズなども配布した。さらに、区長会や企業懇話会など地域の団体などに声をかけ、地域ぐるみでF1開催をバックアップする基盤づくりに努めている。
 小山町の高橋宏町長は「F1に訪れる方を熱く出迎え、『F1の町』として定着させることで小山町のイメージアップを図るとともに、小山町の情報を広く発信したい」と「F1効果」に期待する。
 最も心配された交通対策は、愛・地球博で成果が上がった「チケット&ライドシステム」を採用。一般来場者のサーキットへの最終アクセスをすべてバスとした観戦チケット販売方法だ。富士スピードウェイ(FSW)の加藤裕明社長は「富士山を望む日本有数の観光地。しかもハイシーズンということで、周辺道路はF1がなくても交通渋滞の起こる場所。その渋滞に拍車をかけないよう、このシステムに決めた」と語る。来場者の反発は予想されたが「これだけの大きなイベントは地元の協力なしには開催できない」(加藤社長)と地元への負担軽減を第一に手法を検討。小山町もFSWとともに国土交通省や防衛省に足を運んだ。
 その結果、開催中は国道246号や138号などの主要道路を避けるため、一部自衛隊の占有道路を利用したり、演習場内にモータープールを置いたりするなどの対策や、東名高速足柄サービスエリアをバス専用の臨時インターチェンジとして開放することが決まった。


地域にもたらされるF1効果。経済波及の試算は135億円
 今回、「チケット&ライドシステム」に一定の成果が上がれば、他の大型イベントや観光シーズンの渋滞緩和策として、地域に定着する可能性も高い。周辺の県道や町道では、国道との結節点の改良や、部分拡幅、隅切りなども進んでおり、交通需要が今まで以上に増えれば整備が一段と早まることも考えられる。
 このほか、F1開催中の救急医療体制の確保については、レース場内の救護所開設をはじめ、支援医療機関との連携など、御殿場市医師会が全面的な支援を行っている。
 また、ドクターヘリの出動など、関係機関との調整には小山町も加わり救急医療体制の確立を図っている。町はこうした取り組みが地域の防災システムとして活用できるのではと期待を寄せる。
 世界約180カ国でテレビ放映されるため、PR効果も絶大だ。延べ28万人が訪れる会場内には静岡、山梨、神奈川の3県や、富士山周辺の複数の観光協会からなる富士地区観光協会のPRブースも設置され、地域の名所や特産品を紹介する。
 最も気になるのが経済効果。静岡大学とトヨタ自動車、FSWの共同研究チームのまとめによると、F1日本グランプリが日本経済に及ぼす効果(入場料売り上げ除く)は135億4500万円。うち、静岡県内へは31億8700万円。地元2市1町では、小山町13億3800万円、御殿場市4億4000万円、裾野市2億4000万円となっている。内訳は、宿泊、運輸輸送、小売商業、金融保険、広告情報、廃棄物、サービスその他と広範囲だ。


地元のやる気が新たな観光需要を掘り起こす
 とはいえ、「チケット&ライドシステム」では指定駅や駐車場から現地まで近くてもバスで約25分、中には1時間以上かかるため、鈴鹿のようにサーキット周辺に臨時駐車場が出現したり、街中が観客であふれ返ったりといったことがない。地元にとっては目に見える経済効果が分かりにくいといえる。しかし、「交通誘導を成功させるのが第一の目的。鈴鹿でさえ20年で徐々に今のスタイルを築いてきた。富士も今年が1年生という気持ちで始めたい」と小山町企画総務部の小林拓生副主任。来年からはシャトルバスの発着点を少しでも会場周辺に近づけるなど、より経済効果が出るような仕立てを考えていきたいという。
 F1のチケットは決して安いものではない。裕福な中高年男性の人気も高く、加藤社長は「サーキット周辺には温泉はもちろん、ゴルフ場やアウトレットもある。モータースポーツを中心にした新しい観光スタイルが生まれるのでは」とF1を核とした滞在型の楽しみ方を提案する。今後は周辺の観光協会などを積極的に回り、F1に対する理解を深めてもらうとともに、地域資源とF1をつなげる働きかけをする予定だ。
 世界が注目するビッグイベントをどのように地域に根付かせ、活性化に結びつけるのか。首都圏という巨大なマーケットに向け、いかに魅力的なメニューを提示できるか。地域の知恵の絞りどころだ。


  「地元と協力し、F1を新たな観光資源に」
富士スピードウェイ加藤裕明社長
富士スピードウェイ
      加藤裕明社長

 単に興行が成功すればいいというのではなく、F1開催で地域が今以上に活性化し、気が付けば交通の便が良くなったとならなければ本当の成功ではないと思っています。あせらず、地域の皆さんと一緒に盛り上げ、F1を新たな観光資源として、長きにわたり活用していただきたいですね。
 静岡県は県民所得や製造品出荷額が全国トップクラスの豊かな県。首都圏を控え、自然も豊富で工業や観光業などの縦糸がしっかりしています。交通基盤さえよくなれば今後ますます発展する地域です。F1は細い横糸の一つですが、こうした縦糸をつなぎ、新たな魅力をこの地域に織り込みたいと思います。

  「F1契機に、交流人口の拡大図る」
小山町高橋宏町長
小山町高橋宏町長

 遠くから来られた方にF1だけでなく、小山町の素晴らしさを経験して帰ってもらいたい。小山町を印象深く思ってもらうことがこれからの交流人口拡大につながると考えます。それにはまず、町民一人一人がF1の魅力を理解し、同時におもてなしの心を持てるような働きかけをしたいと思います。
 例えば「小山町F1日本グランプリ協力会」の対象を町内で活動する団体すべてに広げ、町全体で協力会を作りたい。来年は予算も拡大し、記念グッズや歓迎方法なども工夫しようと思っています。この輪を広げることこそが、町にとってF1を一番生かせる力になると思います。


観戦チケットは一部の席で購入可能です。
F1チケット申込専用サイト http://fswf1.jtb.co.jp



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