サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 県東部の政令指定都市誕生を目指すサンフロント21懇話会は、「合併 新時代への道」と題した特別シンポジウムを7日、三島市民文化会館で開催した。県市町村合併推進審議会が合併の枠組として示した3市3町(沼津・三島・裾野市、函南・清水・長泉町)の首長と、今年4月、15市町村が合併して政令市となった新潟市の篠田昭市長がパネリストを務めた。9月の「風は東から」は、この特別シンポジウムで見えてきた問題点や課題解決の方策を、県総務部の市川彰分権担当理事に聞いた。 風は東から
[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ6
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政令市実現に欠かせぬ中核市 官民で描け地域の将来像
合併への道のりに温度差。一足飛びの政令市は事実上困難
6首長の本音がぶつかったシンポジウム。約300人が熱心に聴講した
■6首長の本音がぶつかったシンポジウム。約300人が熱心に聴講した

 遅々として進まない東部の合併。その要因はどこにあるのか―。パネル討論では、6人の首長ともに政令市を目指すことでは一致。しかし、「10年以内に政令市を誕生させるには、一気合併がいい」とする三島市と、「3市3町の中核市を経て政令市を目指すべき」とする沼津市、函南町などで、大きく意見が分かれた。

 市川 「法律上の政令市の人口要件は50万人ですが、実際は近い将来100万人になる見込みがあることが条件です(今は合併特例で70万人)。人口要件だけでなく、大切なのは行政の執行能力や社会基盤、そういうものがしっかりしているかどうかです。最も人口の多い沼津市でも約20万人。それ以下の市町が寄り集まって合併しても、一気に政令市になることは非常に困難です。
 また、都市基盤については旧5大都市(※1)に遜色がないかどうかが問われます。人々を引きつける、魅力ある都市基盤、交通基盤が今の東部にそろっているのか。特に道路整備などに遅れが目立ち、政令市にふさわしい『都市の風格』があるとは言いにくい」
  全国に政令市は17都市。平成8年の中核市制度の導入以降、中核市を経ずに一足飛びで政令市になった例はない(※2)。最近の事例では、静岡市(47万人)、浜松市(55万人)、新潟市(48万人)など、中核市として自治能力が高く、都市基盤が整った都市に周辺自治体がくっついた形だ。まずは3市3町で48万人程度の中核市を作った後、政令市を目指すのが現実的な手法になる。


必要な将来ビジョン。経済界の力に期待
「地域づくりを真剣に考えれば、おのずと答えは出る」と語る市川理事
■「地域づくりを真剣に考えれば、おのずと答えは出る」と語る市川理事



 一気に政令市を目指すか、中核市を経ての合併か―。方法論の違いから、議論は平行線をたどる。それを打開する手段として、新潟市の篠田市長は「経済界は媒介役として非常に有効。また、最終決定権を持つ議会に最初から議論に入ってもらうことが重要」とアドバイスした。

 市川 「行政は横の首長の意向を気にしますので、それらを無視して将来ビジョンを描くのは確かに難しい。静岡・清水の合併は、清水青年会議所が最初にアクションを起こしました。浜松も経済同友会の西部地域協議会が当時の北脇浜松市長を動かした経緯があります。
 経済界が地域の将来像を描き、それを行政に投げかけ、議会も巻き込んで議論を進める中で、合併の話し合いの場に首長を載せる、押し出すという感覚がほしい。
 議会も行政のチェック機関というだけでなく、むしろ行政と一緒になって地域の政策提案に参画していくような、一緒に未来を語るような役割を担ってほしい」
 新潟市では経済界、首長、議員の三者一体となった広域懇談会を作り、地域の特性や地域が持つ使命をもとに、新潟政令市が目指す三つの基本理念(※3)を住民に示し、理解を得ている。


加速する地方分権。求められる基礎自治体の能力強化
 話題は、合併から道州制の議論に移る。「今後、県東部をどのような地域にしていきたいか」の問いに対し、複数の首長から「道州制をにらみ、今のうちから力のある自治体を作ることが必要」との意見が出された。

 市川 「確かに将来、道州制ないし連邦制という新たな枠組みは出てくるでしょうが、それにはさらなる検討と国民的理解の醸成が必要です。
 それよりも、住民に最も身近な基礎自治体にどんどん権限を移す。この流れは今後ますます加速します。そのときにある程度の規模や財源、人材は必要ですし、そうでなければ業務を消化しきれない。今のままの規模で本当にやっていけるのか、難しくなる時が来ませんか、ということです」
 7月に発足した国の地方制度調査会(第29次)では、3年をかけ、市町村合併を含めた基礎自治体のあり方や地方行財政制度のあり方など、地方自治の一層の推進を図る観点での議論をスタートさせた。
 6月の自民党道州制委員会中間報告では、基礎自治体について「一定の人口規模・財政規模を有するものに移行すべきであり、市町村合併の推進により基礎自治体の再編を進める」必要があるとし、その役割を「都市計画等のまちづくり、地域コミュニティーの振興、医療・保健・介護、社会福祉、教育、消防、一般廃棄物処理等の基本的な公共サービス」など、政令市に匹敵する幅広いものとしている。


見えてきた課題。財政力豊かな今こそ次のアクションを
 シンポジウムを通じ、(1)政令市をにらみ、さらなる地方分権に備えた基礎自治体の強化(2)地域の将来ビジョンを描くには、経済界や議会など「地域の力」が不可欠―といった課題が見えてきた。
 これに対し、県は、合併推進交付金や合併推進団体支援事業などさまざまな独自の支援策を用意している(※4)。ほかにも、拠点都市づくりを政策的に進めるため、道路網の整備や沼津駅北口整備を推進するとともに、中核市に移行した場合は、自治能力を高めるため、県独自の権限移譲も進めることにしている。
 あす24日には5市4町東部広域都市づくり研究会が開催される。先日のシンポジウムを受け、次のステップに向けた方向性が出るかが注目される。
 市川 「客観的に見て、合併の手法は決まっていると思います。あとは本当に将来の広域都市づくりに腹を据えていけるかどうか、それが今回でしょう。シンポジウムで大きな拍手が沸いたように、まず沼津と三島が一つになってほかを引っ張っていく姿勢こそ重要でしょう。まだ3市3町か、5市4町で政令市を目指すかという議論をしているようでは道半ば。結局は前に進めず、いろいろ話をしたけれどやめないか、ということになってしまう」
 幸い3市3町は財政的には当面心配のない地域。だからこそ、将来を見越したアクションを官民挙げて今、起こすべきではないだろうか。


※1 大阪、名古屋、京都、横浜、神戸市。
※2 さいたま市となった大宮、浦和市は面積不足のため中核市となっていなかったが、実質的に中核市機能(保健所機能)を有していた。
※3 新・新潟市の姿をまとめた合併マニフェストを作成。「世界と共に育つ日本海政令市」「大地と共に育つ田園型政令市」「地域と共に育つ分権型政令市」の三つを基本理念とした。
※4
【市町村合併推進交付金】 合併関係市町数×1.5億円を上限(ただし、4市町を超える場合は1市町増えるごとに1.25億円)とし、助成する。
【合併推進団体支援事業】 合併協議会が実施する調査研究事業に対する助成(補助率2分の1以内、限度額300万円)と、合併推進を図る公共的団体等が実施する事業に対する助成(補助率2分の1以内、限度額100万円)。
【市町フレンドシップ事業】 関係市町、協議会等が実施する合併に関する調査研究等に対する助成(補助率2分の1、限度額5000万円、1市町あたり500万円)など。

  「ファルマバレープロジェクトを地域ビジョンに生かせ」
財団法人企業経営研究所 中山 勝産業経済部部長
■特別シンポジウムでコーディネーターを務めた
財団法人企業経営研究所
中山 勝 産業経済部部長

 各首長が「合併は避けて通れない」と認識しているのが確認できたとともに、来場者に合併に関する首長の考え方が「生で」届けられたことに大きな意義があったと思います。
 この地域の市町の総合計画はどこも目指す方向に変わりはありません。「活気ある産業、豊かな生活、世界レベルの快適空間創造」に集約できる。ならば、まちの規模を大きくした方がわれわれ生活者、企業にとってプラスになると思います。ファルマバレープロジェクト第2次戦略計画では、世界レベルの研究開発もさることながら、健康的、文化的で高度な都市機能を有した地域づくりを目指しています。市・町が一体となり、計画的で効率的な都市づくりをする一方、それぞれの特徴を生かした役割分担と相互補完をすることで国内のみならず、世界の人々の健康に貢献する地域を目指す―こうした将来ビジョンが今求められています。
(サンフロント21懇話会シンクタンクTESS研究員)




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