サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 技能五輪国際大会の閉会式会場となり、世界の若き技能者たちの熱気を包み込んだキラメッセぬまづ。東部のにぎわいの拠点として、開設以来約380万人が訪れている。現在、この地区一帯に大型コンベンション施設の整備事業が計画されている。11月の「風は東から」は、沼津駅北拠点にふさわしい整備の方向性とは何か、また今見えている課題について関係者に聞いた。 風は東から
[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ8
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沼津駅北に大型コンベンション 東部大交流時代の幕開けに期待
研究会が提言。交流を生み出すコンベンション機能
キラメッセぬまづとその周辺は、新たなにぎわいの拠点としてコンベンション施設の整備が提言された
■キラメッセぬまづとその周辺は、新たなにぎわいの拠点としてコンベンション施設の整備が提言された

 真っ白いかまぼこ型の屋根がまぶしいキラメッセぬまづ。平成10年、東部唯一の大型展示場として沼津駅北口に誕生した。年間に行われるイベント数153件、年間集客数約30万人(ともに平成18年度)、平均稼働率74.3%と高い数字を誇る大集客装置だ。
 キラメッセぬまづがある旧国鉄操車場は現在、県と市が所有している(県有地0.8ヘクタール、市有地1.4ヘクタール)。隣には都市再生機構が取得した土地(0.5ヘクタール)に映画館やアミューズメント施設を併設した商業ビルが開業している。昨年11月にはJR沼津駅の鉄道高架事業が国に認可され、駅南の再開発ビルも来年3月にオープンするなど、周辺一帯では沼津駅周辺総合整備事業が進んでいる。
図1 沼津駅北地区導入 施設の立体イメージ図
■図1 沼津駅北地区導入 施設の立体イメージ図




  県と市は、所有する土地整備の方向性について、昨年7月、地元企業や有識者をメンバーに「沼津駅北拠点施設整備構想研究会」(会長・千谷基雄日本大学短期大学部商経学科長)を発足させた。1年をかけた協議の末、提言書をまとめ、今年8月に石川嘉延知事、斎藤衛沼津市長にそれぞれ提出した。
 提言は、東部を取り巻く状況や今までの検討を踏まえ、当地区を東部地域の広域的な拠点に位置づけた。その上で、国内外から 広く人、もの、情報が交流するための中核的機能・施設として、「大型コンベンション施設」と、キラメッセぬまづの後継施設となる「展示イベント施設」を整備すべきとしている。
 また、これらを補完・連携するための、宿泊やバンケット、レストランなどを含む多機能型「ホテル」の誘致や、市民などが気軽に交流できる「市民交流施設」「行政サービス施設」、それらを支える「駐車場」「多目的広場」を盛り込んだ。さらに、民間活力を積極的に導入する施設として、「商業施設」「オフィスビル」「マンション」などを挙げている(図1)
 施設整備には膨大な事業費がかかる。そこで研究会では、民間資金の積極的な導入を図るため、公共団体の土地を民間事業者に一定期間賃貸し、民間事業者が建物を建てる「定期借地方式」や、公共サービスの提供に着目した「PFI方式」など、整備手法の検討も行われた。


東部地域の拠点に。地元沼津市も意欲的
図2 施設立体イメージ
  ■図2 施設立体イメージ



 今回の提言を受け、県建設部の大橋徳治理事は「21年3月には富士山静岡空港が開港し、人、もの、情報が今以上に交流する。ファルマバレープロジェクトでは次々と成果が生まれ、それに伴い長泉町を中心に関連企業の進出なども期待できる。国立遺伝学研究所や静岡がんセンター・研究所などの研究機関も多く、この地域が活況を呈してくれば東京でなく、この周辺での学会やコンベンション活動が活発化することが予想される。特に、富士山は外国人に人気が高く、伊豆の観光資源見直しとともに、地域の魅力を世界に発信する絶好の機会だ。ぜひ国際レベルのコンベンション機能を沼津の街なかに導入し、東部全体の活性化に寄与したい」と大型コンベンション施設の整備に前向きだ。
 地元・沼津市はキラメッセの後継施設となる大型展示場と、それに併設する市民交流施設や立体駐車場を担当する。市は提言を受けると同時により詳細な検討に着手、キラメッセで課題となっていた音響など設備的な制約のある部分の見直しを行っている。市民交流施設などの機能は展示場の吹き抜け部分を囲むように、階層ごとにぐるりと回廊状のスペースを確保して配置するとともに、立体駐車場とも結ぶことが検討されている(図2)
  「市民交流施設については、市民アンケートで要望の多かった市民ギャラリーなどの導入を検討している。また、イベント時やその前後に休憩できるようなカフェなど、今のキラメッセに足りない機能を補いたい」と沼津市の秋山精太郎都市計画部長。
 完成時期は未定だが、県・市ともここ数年のうちに開業にこぎつけたい、としている。県は、庁内横断の検討委員会を立ち上げ、本年度中に施設の概要やスケジュールなどを盛り込んだ基本構想を発表する。市も同様に、来年3月までに基本構想をまとめ上げたい考えだ。


浮かび上がる課題。ハード先行に懸念
 県西部にはアクトシティ浜松、中部にはグランシップ、ツインメッセといった大型のコンベンション施設が交流拠点として大きな役割を果たしている。東部にはそれに匹敵する規模のコンベンション施設はなく、今回の計画は東部にとって大きなチャンス。しかし、課題がないわけではない。
 県有地は県、市有地は市がそれぞれ基本計画を策定するため、一体での開発が難しい。「県と市の担当部局が常に情報交換し、各施設の機能やデザインに違和感がないように配慮していく」(沼津市)としているが、最近のコンベンションは、展示場、会議棟、ホテルがセットで利用されることが多く、運営や施設の仕様がばらばらでは利用しにくくなる恐れが出る。
 また、ハード面の議論が先行し、大型コンベンションの誘致や観光連携などソフト面での検討が置き去りにされている。コンベンション施設の営業窓口になる可能性が高い「静岡県東部地域コンベンションビューロー」は22日に設立総会が開かれたばかり。職員も沼津市から派遣されるなど営業能力は未知数だ。
 キラメッセは開設の1年以上前から関係者による運営協議を行ってきた。浜松や静岡のコンベンションビューローは、空港開港をにらみ中国への営業をすでに開始している。コンベンションの誘致合戦が全国的に激化する中、今のままでは「ハコモノはできたが、閑古鳥が鳴く」ことになりかねない。キラメッセぬまづ運営協議会の青山茂委員(サンフロント21懇話会シンクタンクTESS研究員)は「どのような会議やイベントを想定するのか、市場調査に基づく事業戦略をきちんと立てた上で、それを建物整備や施設運営に反映させるべき」と助言する。


将来ビジョンから機能を考える。東部全体で協議の場を
 懇話会アドバイザーで静岡産業大学の大坪檀学長は、「東部全体をどうしたいのか、その議論が欠けている」と指摘する。
 東部には、新幹線、東名高速、国道1号などの大動脈が通り、新東名も建設中だ。伊豆というリゾート地を控え、北駿地区にはトヨタやキヤノンなど大手の研究所が立ち並ぶ。世界的なイベントであるF1日本グランプリも開催された。まもなく富士山静岡空港が開港し、アジアに向け大きな空の窓が開く。
  「この地域は国際化できる条件がそろっている。県内一の住環境があり、東部100万都市になる可能性を秘めている。この地域をどうしたいのかという将来ビジョンがあって初めて、どんな機能が必要で、それにはこうした施設を整備するべき、といった筋道ができる。沼津駅北口地区は100万都市の“へそ”となる場所。ぜひ、東部全体で利用計画を考えてほしい」と大坪氏はエールを送る。
 東部地域の念願ともいえる大型コンベンション施設整備。恵まれた地域資源を最大限に活用し、この地域がより輝きを増すために、沼津市だけでなく、周辺市町や民間が参画する運営協議の場づくりが急がれる。




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