サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 深刻な観光渋滞、また近年集中豪雨などによる通行止めが頻発する伊豆の道路網。今後、新東名の開通、富士山静岡空港の開港やファルマバレープロジェクトが進展するなど、交流人口の拡大が期待されるなか、伊豆に観光客を呼び込むためにはスムーズなアクセスの確保が欠かせない。また、災害や救急医療などの面からも、道路整備は地域にとって喫緊の課題だ。12月の「風は東から」は、伊豆半島の背骨となる伊豆縦貫自動車道の整備状況について、国土交通省沼津河川国道事務所の福島眞司所長に聞いた。聞き手は静岡新聞社・静岡放送の谷川治東部総局長。 風は東から
[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ9
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縦貫道開通で安全、便利な半島に 早期実現に欠かせぬ「伊豆はひとつ」
伊豆の背骨、伊豆縦貫自動車道。全線開通で、沼津―下田間が60分に
伊豆縦貫自動車道の概要図

 谷川 きょうは、長い間懸案となっている伊豆縦貫自動車道(縦貫道)の整備についてお話を伺います。現在、東名沼津インターから下田まで130分、南伊豆まで150分かかる状況ですが、道路の整備状況はいかがですか。
 福島 縦貫道は、東名沼津インターから下田までを結ぶ約60キロの高規格幹線道路です。現在整備を進めているのは大きくは、沼津インターから三島市街を迂回(うかい)し、函南を抜けて伊豆中央道に至る東駿河湾環状道路(約15キロ)、修善寺道路の延長からトンネルで天城湯ヶ島インターまでを結ぶ天城北道路(約6.7キロ)、最南端にあたる河津下田道路(約13キロ)です。また、天城湯ヶ島から天城峠を越えて河津に抜ける区間についても基本計画を策定しています。
 谷川 東駿河湾環状道路や天城北道路では、目に見える形でだいぶ工事が進んできました。
 福島 まず、東駿河湾環状道路は全線で工事が進んでいます。沼津インターのある沼津市岡宮から三島市塚原までの約10キロについては平成21年春、つまり富士山静岡空港開港と同じ時期の供用を目指しています。その先の、伊豆中央道につながる函南町までの区間については、用地取得も90%以上終わっています。ここは、オオタカの生態調査などの関係で数年遅らせての供用を考えています。
 次に、天城北道路ですが、修善寺から大平までの約1.6キロについては来年3月末の供用開始です。その先も用地の取得を引き続き進めていきます。
 河津下田道路については、都市計画、環境アセスメントの手続きなど、事業着手に向けた調査を進めています。夏に大型車の通行止めをしている箕作(みつくり)峠の改修や、国道135号、136号、414号が合流する伊豆急下田駅前の交差点渋滞、この二つの解消を図ります。
 事業すべてが完了すると、現在、沼津インターから下田まで130分かかるところを約1時間で到達できるようになります。


東西を結ぶ肋骨道路。広域で連携し、早期整備を
伊豆半島の地図を前に整備状況を説明する福島所長(左)と、聞き手の谷川局長
■伊豆半島の地図を前に整備状況を説明する福島所長(左)と、聞き手の谷川局長



 谷川 観光渋滞も問題ですが、雨量規制、がけ崩れなどで年平均34回もの通行止めが起きるなど、決して信頼感のある道路とは言いがたいのが現状です。
 福島 実際、賀茂郡から第三次救急医療施設(※)である順天堂大学医学部付属静岡病院(伊豆の国市)まで、1時間以上かかります。ドクターヘリも配備していますが、昼間だけの対応ですし、悪天候の場合飛ぶことができません。また、順天堂以外の病院も輸血の必要なケガや手術の場合、沼津市の血液センターから1日おきに血液が運ばれていますが、災害時にはストックが足りなくなることが懸念されています。
 谷川 急病人の搬送など、命に直結する重要な道路ですから、その整備は住民にとって切実ですね。
 福島 しかし、縦貫道はいわば背骨であって、縦貫道から離れれば離れるほど、どうやってそこまでたどり着くかが問題になります。肋骨となる東西方向の道路整備が進まなければ、本当に便利になったとは言えないと思います。
 谷川 伊豆で合併や広域連携がなかなか進まないということが、道路整備においても弊害になってはいませんか。
 福島 やはり縦貫道を整備することと、広域で肋骨道路の整備をすることが相乗効果を生んで、地域全体がより良くなっていくと考えます。往々にして合併というのは、地域住民からすると分かりにくいものですが、沼津と戸田を結ぶ峠の整備や修善寺―土肥間の改良のように合併効果が目に見えると、住民の方も実感としてとらえやすいのではないでしょうか。例えば松崎と河津がつながるとか、西伊豆と東伊豆がつながるといったことが期待として出てくるのであれば、合併への認識も違ってくると思います。
 道路が安全・安心で円滑に走れることは基礎中の基礎ですので、ぜひ、将来を見据えた地域の在り方を考えていただきたいと思います。


地元の取り組みを積極発信。官民挙げての誘致活動を
 谷川 空港が開港すると富士山を目指して海外から観光客が来ることが予想されますが、こうした人々を招き入れたい気持ちは伊豆でも当然強い。しかし、道路網が不十分という理由で、ほかの観光地に取られてしまうといったことにもなりかねない。ようやく景気の底は見えたというが、なかなか右肩上がりにならない伊豆の状況を見ても、道路網整備が喫緊の課題であることは間違いありませんね。
 福島 道路整備を熱望する地域は全国にたくさんあります。予算確保という意味ではライバルですし、その中には観光地も多く存在します。ぜひ、縦貫道ができることを見越した積極的な地域の取り組みを発信してほしい。東部、伊豆地域全体としての取り組みがあって、道路ができるのを待つというのが理想です。それがいろいろなところに声として伝われば、地域がこんなに頑張っているのだから、われわれももっと力を入れましょう、となります。
 谷川 地元では、県と関係市町などでつくる建設促進期成同盟会(会長・石川嘉延知事)と商工・農漁協・観光の民間団体でつくる建設推進期成同盟会(会長・萩原聰治下田商議所会頭)が継続的な活動をしています。伊豆が一つになってこうした声を上げていくために、伊豆の観光協会を束ねる伊豆観光推進協議会にもぜひ積極的に動いてもらいたいですね。
 福島 すでに、伊豆地域の青年会議所(JC)などがまとまった推進活動をされています。自治体の合併を待つより、JCや農協などの団体が合併し、道路整備を望む声がさらに大きくなれば、地域を動かす力になるでしょう。道路に対する強いメッセージをわれわれだけでなく、マスコミや有識者と言われる人々に対して積極的にぶつけていただくことが結果的に相乗効果になると思います。
 私自身、全国各地に赴任しましたが、伊豆ほど観光地としての財産が凝縮されている地域はありません。それゆえ、あまり努力しなくても観光客がやってきた時代もあったのでしょうが、全国的に観光地化する中で、関東から見れば、那須に行こうか、房総か、伊豆かというときに、決め手の一つになるのがアクセスの良さだと思います。また、格安の海外ツアーも多いなか、今までと同じでは人は呼べません。縦貫道の早期実現はもちろん望まれるところですが、地域がさらに魅力を高める取り組みがあって初めて道路整備が生きてくるのではないでしょうか。


※第三次救急医療施設
脳卒中、心筋梗塞、頭部損傷などの 重症患者を受け入れる病院


  「縦貫道整備実現に向け、伊豆をひとつに」
伊豆観光推進協議会 赤尾十五郎会長
■伊豆観光推進協議会
赤尾十五郎会長

 今秋に、伊豆縦貫道建設推進期成同盟会が現地見学会を行いました。バス2台、約100人で、東駿河湾環状道路や天城北道路を視察し、工事がだいぶ進んでいるという印象を受けました。未着手の河津下田区間でも、杭が1本でもいいので、目に見える形で工事が始まると地元は盛り上がると思います。
 海あり、山あり、豊かな自然があるといっても、やはり基本は道路網。最近では少子高齢化の影響で、車いすや介助が必要な高齢の旅行者も増えています。万が一、来る途中に具合が悪くなった場合、道路渋滞が命取りになりかねません。また、2年後に迫った富士山静岡空港の開港までに全線供用はかないませんが、1年でも早く開通することで海外誘客の追い風にしたいと思っています。
 縦貫道の全線開通は伊豆にとって悲願です。協議会でも来年度の事業計画の柱の一つに、伊豆縦貫道の早期実現に向けた活動を盛り込む予定です。




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