ファルマバレープロジェクト第2次戦略計画は次の五つの戦略を軸に展開している。
■ 戦略 1 患者・県民の視点に立った研究開発
■ 戦略 2 新産業の創出と地域経済の活性化
■ 戦略 3 プロジェクトを担う人材育成
■ 戦略 4 市町との協働によるまちづくり
■ 戦略 5 世界に向けた展開
特に、患者とその家族、医療現場から出るニーズを実現するための高度な研究開発(戦略1)と、そこから生み出された成果を新たな産業や事業に結び付ける取り組み(戦略2)に重点を置いている。
診断薬の開発を手がけるビーエル(沼津市)は、インフルエンザウイルスを初期の段階で短時間で検知できる診断キットの販売を開始した。このキットには金コロイド粒子(液体中に分散した金微粒子)の表面に白金コロイド微粒子をコーティングする金・白金コロイド技術が使われている。同社が静岡県と包括的事業協定を結ぶ東工大の大倉一郎教授、沼津高専の蓮見文彦教授とともに3年をかけて開発した。野中浦雄社長は「ファルマバレープロジェクトによって人脈が広がり、製品開発に結び付く機会が増えた。この技術をベースにさまざまな診断薬の開発を行いたい」と語る。
医療現場のニーズを製品化したのが医療器具製造のホリックス(沼津市)の骨腫瘍検査セットだ。長さ15センチの針を直接患者の骨に刺し、がんが疑われる部分の組織を取り出す。従来品はサイズが大きく、患者への負担も大きかったため、静岡がんセンターの高橋満副院長のアドバイスを受け、より小さなサイズを開発した。堀内利雄専務は「小型化に加え、組織を柱状に、かつ、診断に十分な量が取れるよう何度も改良を重ねた」と苦労を明かす。また、器具には自動車部品製造のビヨンズ(富士市)が、県富士工業技術支援センターと共同開発したダイヤモンドライクカーボン(DLC)加工(※1)をほどこしている。
精密ネジや医療用ネジを製造する東海部品工業(沼津市)は、災害時や救急医療の現場で、自発呼吸ができない人に容易に人工呼吸ができる呼吸補助器を量産化した。5年前、産学官で医療機器の開発を目指す「富士山麓医療関連機器製造業者等交流会」で試作を始めたが、300個作った時点でプロジェクトが解散。交流会に参加していた盛田延之社長は「せっかく多くの人がかかわって完成したのだから、きちんとした形でやり遂げたい」と第二種医療機器の製造販売ができる同社で構造や製造方法などに改良を加え、コストダウンを図り量産に踏み切った。
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