カワチ 先ほどのサロンやそれを支えるボランティア活動、また公民館など、日本には実にさまざまなソーシャルキャピタルがあります。私自身、子どものころに隣組によるお祭りや行事を経験しました。それらが日本のソーシャルキャピタルのベースではないかと思います。
共同研究では、1市につき40歳以上の男女1000人をランダムに選び、地域の結びつきや地域に対する考え方についてアンケートを行います。その結果と住民の健康度を掛け合わせ、関連性を調べます。
土居 すでに海外ではこうした調査に基づき、ソーシャルキャピタルを高める取り組みが行われているそうですね。
カワチ アメリカでは退職した方をボランティアで、都市部の幼稚園や小学校に先生として派遣しています。彼らから教育を受けた子どもは成績が上がり、高齢者は生きがいを見いだせると、双方にとって良い結果が出ています。こうした具体例はたくさんあります。今回の共同研究を通じて、日本社会にふさわしい方法論を考えたいと思います。
望月 平成の合併は良かった面もありますが、同時に、地域の結びつきに格差が生まれたように思います。当市も学校や幼稚園、保育園におじいちゃん先生を派遣しています。一緒に作った野菜で子どもの野菜嫌いがなおったり、世代間交流を図ったりしています。こうしたことはたくさん求められているのに、コミュニティーに格差があることでそれが十分にできない地域がある。次の時代を担う子どもたちに何を教え、良いものをどう残していくかを、教育の場だけでなく行政の立場で考えていかなければならない。これらの答えが共同研究で明らかになってくれればと思います。
大橋 須山地区のような事例を他の地域でどうしたら構築できるか。イベントや祭りなどの大きなことも必要ですが、もっと小さな結びつきを地域に作りたいと、おじいちゃん、おばあちゃんが子どもたちに竹とんぼやお手玉を教えたり、餅つきなどをしたりする「ふれあい塾」を開催しています。先生のお話を聞き、世代間の交流が地域のきずなを強め、それが健康につながるのではないか、という思いを強くしました。この研究成果を、ファルマバレープロジェクトと連携したまちづくりに結び付けていきたいですね。
菊地 3月で81歳になる私の母は、一昨年まで30年間一人暮らしでしたが全く不幸そうな顔をしていない。土肥の八木沢地区で天草採りをしているおばあちゃんも全然寂しそうに見えません。自分の居場所があることがどれだけお年寄りに力を与えているか、それを実感しつつあったところです。地域の力や人と人との関係、まさにソーシャルな財産が健康に直結するという考え方は非常にわくわくします。伊豆市のキャッチフレーズ「人あったか
まちいきいき 自然つやつや 伊豆市」を具現化できる試みが目の前にあるという感じがしています。
土居 これからハーバード大学、岡山大学、3市による、ある意味世界最先端の研究が始まります。県のファルマバレープロジェクトにも合致する取り組みでしょう。地域の人が幸せを実感し、それを共有でき、ほかの地域にも展開可能なこのプロジェクトに期待しています。
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