サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
トップ 最新情報 政策提言 活動内容 サンフロント21懇話会とは 飛躍 風は東から

 東部地域の活性化に向け、企業と行政が一体で提言を行うサンフロント21懇話会は、活動の模様や地域が抱える課題を毎月1回、「風は東から」で取り上げている。本年度は、6月の富士山静岡空港開港をにらんだ地域振興への取り組みにスポットを当てた。3月は、石川嘉延知事と、同懇話会代表幹事の岡野光喜スルガ銀行社長が、今後の東部発展へのヒントなどについて語り合った。聞き手は静岡産業大学の大坪檀学長。 風は東から

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ12

バックナンバー


空港開港で変わる地域経済、逆風を好機とする創意工夫を
空港をビジネスチャンスに生かす取り組みが期待される(写真はイメージです)
■空港をビジネスチャンスに生かす取り組みが期待される(写真はイメージです)

石川嘉延 静岡県知事
■ 石川嘉延 静岡県知事
医看工連携で続々と新製品。健康長寿県を発信
 大坪 6月にいよいよ富士山静岡空港が開港します。本年度、懇話会では空港開港をいかに地域振興に結びつけるかについて、さまざまな議論をしてきました。東部発のファルマバレープロジェクトもいまや全県に広まり、空港開港で一段と弾みがつきそうです。

 岡野 ファルマバレープロジェクトでは、医療現場や患者、家族の声から生まれた新たな製品が数多く登場しました。全国でもトップクラスの静岡がんセンターとあわせ、静岡県の医療水準の高さを発信できたと思います。東京大学名誉教授の小林寛道先生による「認知動作型トレーニング」も東部だけでなく磐田市、袋井市などで導入され、ここ数年で健康な県というイメージができたのではないでしょうか。

 石川 地元では当初、このプロジェクトはどこかに大きな工業団地ができ、そこに先端医療産業が集積するのではないかと受け止められていました。しかし、しばらくそうした動きがないので、プロジェクトに対する東部地域の熱が冷めた時期がありました。そういう中でファルマバレーセンターを中心に地道に産業界に働きかけ、医看工連携を進めた結果、具体的な製品がこの2年ほどで次々に出てきています。このような動きは、長年日本の課題であった産業構造の転換にも結びつくのでは、と期待しています。

 大坪 医薬品・医療機器の生産金額も大阪を抜いて日本一になりましたね。新幹線に乗ったり高速道路を走ったりして目に付くのが、製薬会社の看板です。新しい産業を作り育てた結果がこうしたところに表れていると思います。

 石川 新薬の開発に必要な治験の委託費を見ると、静岡がんセンターだけで5億円を超えています。今までにがん関係の新薬として、数種類の薬が承認され、使われています。一方で県内の公的病院29施設1万4000床を結んだ治験ネットワークは、あらゆる病気について必要な症例を獲得できるのですが、なかなか利用が拡大しません。アメリカなどでは普及していますが、この分野における情報の公開度が問題になっています。これが徐々に解けてくるといいと思います。
 また、富士フイルムや三菱電機などとの共同研究が実用化されると、プロジェクト全体が一段と活性化すると思います。

 大坪 今回の不況は、今まで繁栄を誇ってきた自動車、電機、機械産業に部品を供給していた会社が、自社の持つ高い技術力を医療、介護分野に転用できることに気付くきっかけにもなりました。

 石川 自動車産業は雇用や経済を支える基幹産業であることは間違いありません。しかし、付加価値率で言うと、例えば製薬、化学・化成品などの産業には及びません。本県が得意とする製造業の力を医療や介護分野に導入すれば、日常製品に技術を転用するよりも高い価値が生まれる。しかも、医療機器や医療器具はひとつひとつの国内市場は非常に小さいため、大企業が参入しにくいが、世界規模で考えれば相当巨大ですから、日本の中小企業が狙うにはいい分野です。
 


空港開港で活発化する人々の動き。新たな需要を開拓
岡野光喜 スルガ銀行社長 サンフロント21懇話会代表幹事
■ 岡野光喜 スルガ銀行社長
サンフロント21懇話会代表幹事
 大坪 ものの付加価値を高める、新しい産業を興すという点でも空港は期待できますね。

 石川 先日、就航先の石川県・谷本正憲知事の訪問を受けました。石川県はすでに小松空港がありますが、5年ほど前に能登空港が開港し、思わぬ利用の仕方が出始めています。特に能登空港は台湾、香港のお客が多く、台湾からチャーター便が年間50便も入るようになりました。これはうれしい誤算だそうです。また、小松―福岡間は一日2便で搭乗率が8割だそうです。人口規模、産業力から考えても、静岡―福岡便は需要の高い路線だと思います。こうした先発地域の体験談を聞くと大変励まされますね。

 岡野 人口やGDPが、3県を合わせても静岡県の7〜8割に過ぎない北陸3県に三つも空港があることの意味を、われわれももっと考えるべきでしょう。例えば今、福岡では、国内で宴会をするよりもウォン安の韓国に1泊2日で宴会に行く方が安上がりです。空港があることが、人々の活動をさまざまに変化させるきっかけになると思います。

 石川 交通の専門家に聞くと、「シームレス」という言葉をよく聞きます。継ぎ目がないという意味ですが、目的地をできるだけ直接結ぶことが非常に大事だと聞きます。そういう意味で静岡空港は遠隔地とシームレスで結べる大きな武器になると思います。

 大坪 空港ができてアクセスがよくなると、スポーツの国際試合や国際会議などもやりやすくなりますね。

 岡野 東部では沼津駅北に国際会議場、大型展示場、ホテル、マンションなどからなるコンベンションセンターの計画が、県と沼津市の共同で、民間事業者からの提案を公募する方式により進んでいます。県と市の施設のデザインの一体性や利用者にとって利便性の高い動線などが検討され、結果として、東部のにぎわいの核となるコンベンションセンターができ、大きな国際会議も可能な施設になることを期待しています。


大坪 檀 静岡産業大学学長 サンフロント21懇話会アドバイザー
■ 大坪 檀 静岡産業大学学長
サンフロント21懇話会アドバイザー
富士山は大いなる魅力。急がれる二次交通整備
 大坪 今度、静岡産業大学が沖縄県名護市にある大学と提携することになりました。1年のうち1週間程度、ゼミの交換をする予定です。なぜうちの学校を選んだのか理由をうかがったのですが、「富士山がある」ことも大きく働いているようです。

 岡野 北海道出身の作家・渡辺淳一さんがスルガ平(長泉町)に別荘を建てた理由は「富士山と駿河湾が一望できるから」。いつも見慣れているわれわれは気付きませんが、富士山は大きな観光資源になります。

 石川 北海道のゴルファーは冬場、千葉や福島に行っていたけれど、富士山を見ながらプレーできる静岡は絶対受ける、と北海道のゴルフ場関係者が言っていたそうです。特に東部は富士山に向かってティーショットする、オンを狙うゴルフ場がたくさんありますし、温泉もありますから、人気が出るのではないでしょうか。

 岡野 逆に静岡の人たちがスキーに行く先は長野など本州のスキー場が主でしたが、これからは北海道のパウダースノーで滑れるようになります。今まで行きにくかったところにダイレクトに行けるようになるので、スキー需要は高まるのではないでしょうか。
 とはいえ、空港からいちばん遠いのも東部・伊豆ですから、空港からのアクセスをどうするかが今後の課題だと思っています。空港が開港すれば、行き来が盛んになることが実感できるはずですので、マーケットの動向を見ながら、また、検証しながら二次交通の整備を働きかけていくのがいいと思います。

 石川 地域の鉄道やバス会社には、おおいに考えてもらいたいですね。もう一つは、駿河湾の海上交通利用。東海バスと伊豆急行、駿河湾フェリーがセットになった「伊豆ドリームパス」が商品化されましたが、今後、例えばカーフェリーとレンタカーの組み合わせや、清水港側にモータープールを整備し、観光地はバスやレンタカーで回れるような海上交通を絡めた交通手段を、もっと考えないといけないと思います。

 大坪 最近の景気悪化は空港を活用する人の往来が停滞するのではないかと逆風を感じている人もいるようですが、「ピンチはチャンス」、かえって何とかしなければという気持ちをかき立てるいい機会です。そうしたところから創意工夫は生まれてくる。大学の連携、企業の連携、知識や情報、アイデア、ものの交換、人の交流、それにチャンスの共有など、空港活用の方法を一つでも提案してもらえれば、静岡県全体を奮い立たせる大きな起爆剤になると思います。




■企画・制作/静岡新聞社営業局

 
▲ページトップ
入会案内お問い合わせ事務局案内リンク Copyright(c) SUNFRONT21.ALL RIGHTS RESERVED.