サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 スポーツが地域にもたらす影響は幅広い。全国大会や大型のスポーツイベントになれば、交流人口の拡大や地域経済への効果も期待できる。県中部、西部に比べ大型のスポーツ施設が少ない県東部でも、近年、全国から多くの人が参加するスポーツ大会が開催されるようになった。10月の「風は東から」は沼津市と伊豆市の事例から、スポーツを地域振興につなげる方法について考える。 風は東から
[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ7
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コンベンションセンター整備始まる、東部80万都市のにぎわいの核に
コンベンションスポーツを実現しプロスポーツ誘致を ―沼津市
加藤会長
■将来的には「清水エスパルスやジュビロ磐田、浜松・東三河フェニックスのような地域が沸くプロのスポーツチームを東部につくりたい」と語る加藤会長

 NPO法人沼津市体育協会の加藤眞久会長が提唱する「コンベンションスポーツ」。身体的、生理的な面はもちろん、精神的にも、そしてまちづくりや市民の活性化、ひいては医療費の削減にもスポーツが役立つことはいうまでもない。しかし実際は市民一人ひとりがスポーツにかかわる機会は多くない。コンベンションスポーツとは、「素晴らしい舞台で一流選手によるプレーを見て、感動してもらうことで自分もスポーツをしてみたい、かかわってみたいと思う人を増やす」という試みだ。
  その格好の舞台となるのが、沼津市が静岡県と整備を進める沼津駅北のコンベンションセンター。東部80万都市のにぎわいの核になることが期待されている。「キラメッセ沼津」の後継施設には、会議、見本市、展示会などの機能とともにスポーツ機能が盛り込まれる予定だ。加藤会長はここを「一流のスポーツを県民、市民に見せるショーウインドー」と位置付ける。
  一流のスポーツ観戦が動機付けとなり、自らも一流を目指す、あるいは生涯スポーツとして楽しむためのインドア・アウトドアの施設整備や、イベント、スポーツプログラムを展開する体制も必要だ。現在、沼津市は老朽化した市営総合体育館の建て替えを予定している。加藤会長はこうした施設整備をはじめ、大会開催や人材育成を安定的に支える体育協会の財団法人化、地域スポーツを支える総合スポーツクラブの創設に奔走する。


豊富な施設数生かし「伊豆魅力(三力)プロジェクト」始動 ―伊豆市
ツアージャパン
■5月に行われたツアーオブジャパン。カラフルなウエアに身を包んだ選手が、修善寺駅からサイクルスポーツセンターまでの長い上り坂をパレード走行する

 伊豆市内の天城ドームはソフトボールの全国大会や合宿のメッカとなっている。女子ソフトボール日本代表が北京オリンピックで金メダルに輝いた際は、合宿地として町中が盛り上がった。今年の春休みには高校生の全国大会が開かれ、市内の旅館が割安な料金設定をしたにもかかわらず、宿泊費や弁当代など経済波及効果は1千万円を超えた。  ソフトボール場9カ所、グラウンドゴルフ場9カ所、多目的グラウンド10カ所など、4町が合併した同市は多くのスポーツ施設を持つ。これら施設を有効活用し、スポーツ観光を核に地域活性化や市民の健康づくりに取り組む「伊豆魅力(三力)プロジェクト」が進んでいる。菊地豊市長は「伊豆市のスポーツ施設のレベルではプロを呼ぶのは難しい。横浜や平塚、御殿場などに立地では勝てないが、施設の種類が選べ、しかも温泉がある。ほかの地域に比べて伊豆市は何が強いかをしっかり考えていけば、うちらしい売り込み方ができる」と自信をのぞかせる。
 そのため施設整備に1億5千万円をかける。天城ドームの人工芝を張り替え、少年野球ができるよう内野を拡幅。また、土肥にある丸山スポーツ公園の硬式野球場やその周辺も整備する。硬式野球場、サブグラウンド、屋内練習場の三つをそろえた施設は大学などの合宿にうってつけだ。天城ふるさと広場の野球場を使えば大会も期待できる。  施設整備と並行して、同市はNPO法人市体育協会や市観光協会などと連携してスポーツ施設や宿泊予約、弁当手配などを一元的に行うシステムの構築を図っていく。


役割分担と地域連携でスポーツ振興
菊池市長
■日本スポーツマスターズに出場した菊地市長。「自転車が盛んな伊豆市を全国にPRでき、スポーツとしての自転車の魅力にも目覚めた」と語る

 全国レベルのスポーツ大会を呼び込むには「地域の特徴を生かしたスポーツに着目すべき」と加藤会長はいう。沼津市は海岸を使ったウインドサーフィンの全国大会を30年にわたり開催。過去にはトライアスロンの全国大会も開かれている。伊豆市には日本唯一の競輪選手養成学校があり、地元から日本トップクラスの選手を輩出している。日本で最大級の自転車国際公認レース「ツアーオブジャパン」も沿道で観客が楽しめるよう、現在よりも長いコース設定を関係各所に働きかけていく予定だ。また、土肥海岸を活用したビーチスポーツ振興にも着手する。
  一つの市町でなく東部全体を考えたスポーツ振興の視点も必要だろう。
  例えば、立地的に優位な沼津市など東部の中心部はプロスポーツに対応できる施設を整備し、伊豆半島はアマチュアスポーツに特化する。また、大きな大会は一つの市町で受け入れるのでなく、周辺の市町が協力して競技場確保に努めるなどの連携も必要だ。
  今月行われた全日本還暦野球大会は、全国から48チームが参加。会場を伊豆市と伊豆の国市に分散して開催された。
  菊地市長は「うちにないサッカー場や陸上競技場は近隣の市町でお借りし、野球場や自転車レースなどは伊豆市の施設を使ってもらうなど、相互利用を進めたい。伊豆の首長が集まる伊豆半島サミットなどの機会に近隣市町と話をしたいと思っている」とスポーツを切り口にした市町間連携を模索する。
  スポーツがもたらす恩恵は幅広い。地域おこしの新たな素材「スポーツ」を通じた役割分担、地域連携の視点とそれを話し合えるテーブルづくりが求められている。



        
伊豆マラソン 
 
「まちおこしイベント」へ  さらなる飛躍を期待
伊豆マラソン
■県内外から約1700人が参加した伊豆マラソン。沿道からも多くの声援が飛んだ

 伊豆マラソンは伊豆ナンバーの創設を記念して3年前に始まった。今年2月の第2回大会は修善寺駅から三嶋大社まで21キロのコースで行われ、約1700人が参加した。健康ブームやマラソン人気、観光地伊豆での開催に加え、箱根駅伝で注目される日大陸上部のギタウ・ダニエル選手が3キロコースに出場するなど話題性も高く、次回大会の問い合わせが県内外から連日のように大会事務局に入る。第2回大会はコースが3市1町にまたがり、出発地の伊豆市で前泊したり、ゴール後三島市内で飲食をしたりするなどの経済効果も見られた。
  日本大学国際関係学部内にある伊豆マラソン事務局は「行政をはじめ、警察、体協など多くの支援をいただいた。また、景気の低迷にもかかわらず地元企業からの協賛金も順調に集まった。まさに地域の協力なしには開催できない大会」と振り返る。
  一方で、東京マラソンのような全国規模の大会にするには、フルマラソン化や一流選手の参加が不可欠だ。しばらくはハーフマラソンで実績を積み上げていく予定だが、それらを現実のものにするには大会を「まちおこしイベント」と位置付け、開催市町や体協などが積極的に事務局をサポートし、観光事業者や商店街など地域一丸で盛り上げることが必要だ。

●問い合わせ
伊豆マラソン大会事務局 電話 055-980-0843


東部での全国規模のスポーツイベント事例
日本スポーツマスターズ
35歳以上を対象にしたスポーツの総合祭典「日本スポーツマスターズ」。富士山静岡大会が9月16〜22日に開催された。水泳競技、サッカー、テニス、バレーボール、ボウリング、軟式野球など13競技が行われ、東部ではバドミントン男女(富士宮市)、自転車競技(伊豆市)を開催。
ツアーオブジャパン
日本のツール・ド・フランスと呼ばれる自転車の国際大会。国内では最大級の国際公認レース。今年は海外から77チーム、国内9チームが参加した。東部での開催は伊豆コース(伊豆市)と富士山コース(小山町)の2会場。
Mt.FUJI  エコサイクリ ング
富士山静岡空港開港を記念して開催された。自転車と富士山、エコをテーマに富士山一周約120キロを走破する。日本だけでなく海外からも多くのファンが集まる。ファミリーコースや障害者を対象にしたタンデムコースなど間口が広く、参加者は年々増え続けている。





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