サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 【富士地区分科会パネルディスカッション】
 年間約30万人が登山をする大衆型登山のメッカ富士山。登山だけでなく、すそ野ではゴルフ、テニス、ハンググライダーをはじめあらゆるアウトドアスポーツが行われ、スポーツのフィールドとしても魅力ある地域だ。2月の「風は東から」は、18日に開かれたサンフロント21懇話会富士地区分科会のパネルディスカッションを取り上げる。パネリストに富士市ホテル旅館業組合の安藤肇副組合長、ナチュラルアクションアウトドアツアーズの佐野文洋代表、山梨県富士吉田市陸上競技協会の渡辺正志会長、富士市議会議員の小池智明氏を迎え、スポーツを通じた人づくりや富士山の魅力、地域活性化策などについて議論した。コーディネーターは静岡総合研究機構の影山武司研究部長。
風は東から

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ11

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富士山と心のつながりが人を呼ぶ、スポーツ軸に「環富士山」実現を
安藤肇富士市ホテル旅館業組合副組合長
■ 安藤肇富士市ホテル旅館業組合副組合長
駒沢大学経営学部卒業後、協同宣伝媒体企画部入社。1991年比佐志代表取締役就任(2007年比佐志からフジコムインターナショナルへ社名変更)。03年竹里館代表取締役就任。現在、富士商工会議所青年部会長も務める

渡辺正志富士吉田市陸上競技協会会長
■ 渡辺正志富士吉田市陸上競技協会会長
1999年から2期山梨県議会議員を務める。97年から富士吉田市陸上競技協会会長。2002年山梨陸上競技協会副会長就任。富士山の麓を利用した「富士登山競走」「火祭りロードレース」「マウント富士ヒルクライム」などを行っている
富士山麓で繰り広げるスポーツコンベンション
 影山 今日は富士山の魅力、ロケーションを生かし、スポーツを通して多くの人が集まる仕組みづくりについて考えたいと思います。最初にスポーツコンベンションの取り組みをご紹介ください。

 安藤 10年ほど前からアメリカンフットボールとバスケットボールの要素を併せ持ったフライングディスクのアルティメット競技を推進しています。一般的にはマイナースポーツの分野ですが、年間四つの全国大会を開催しています。海外チームも招へいし、今ではオリンピック競技の種目候補になりました。
 私はホテル経営をしておりますが、富士地区の宿泊施設はビジネスユーザーの方が多く、平日忙しく週末はがらがらです。宿泊客の減少に伴い、新しくて継続性のある誘客事業を行おうと思ったのが大会誘致のきっかけでした。大会の運営や準備にはホテル旅館業組合の組合員が参加・協力をしています。設備やハードではなく、宿の手配、芝の整備、大会の運営などソフトの部分に力を入れたことが誘致につながったと思います。

 佐野 われわれは富士川でラフティングという急流下り体験をしています。ほかにも、マウンテンバイクで富士山周辺を滑走したりカヌーのツアーをしたりしています。長期休暇には家族連れや小グループが中心ですが、関西、中京方面から中学校の修学旅行生を多く受け入れています。毎年、約1万人の方に富士川の自然を楽しんでもらっています。
 私はウインドサーフィンのワールドツアーで世界各国を回りました。旅を続けるうちに、自然のすばらしさや人々の多様性を肌で感じ、人と自然の間にいい関係を結ぶきっかけをつくりたいと考えました。芝川で生まれ育ち、家業は林業で、自分の会社は桜海老漁の船を持っています。山、川、海という自然のフィールドの中で静岡の自然や季節ごとの仕事を仲間としながら、そうしたつながりを作っていこうとしています。

 影山 続いて山梨県から富士吉田市陸上競技協会の渡辺さん、お願いします。

 渡辺 私たちの陸協は六つのイベントを主催しています。うち五つは富士登山競走などの「走る」イベントです。唯一、「マウント富士ヒルクライム」は富士吉田から富士山の5合目までを自転車で走るイベントです。
 なぜ陸協が自転車のイベントをやっているのか。実はマラソンをする方には自転車も好きな方が多く、このすばらしい富士山の景色の中で自転車を走らせたい、という話から始まりました。しかし、やってみると大変で、有料道路の富士スバルラインの使用許可獲得など、調整に1年かかりました。
 競技開始が朝7時のため、参加者は全員前泊、前日はウエルカムパーティーで盛り上がります。そのかいあって参加者約5千人のうち、リピーター率は70%です。今では日本で一番大きなヒルクライムの大会になりました。

 影山 小池さんは市会議員としてコンベンションの推進などに力を入れていますね。

 小池 富士市には2003年の国体を機に、国際大会ができる県営水泳場ができました。シンクロ、飛び込みの日本代表チームが毎年合宿をしています。選手は市内のホテルに分散宿泊し、バスなどで送り迎えをしたり、朝早くからプールを開けたりするなど配慮をしました。今では水泳合宿のメッカとなっています。
 また、ソフトボールも富士宮市の県営山宮ソフトボール場を中心に、2007年3月から全国高等学校選抜大会の開催が10年間決定しています。拠点になる県営施設を活用しながら、地元のスポーツ振興、子どもたちのスポーツを通じた育成など、地域に根ざした活動も続けています。
 


1億3千万円の経済効果「マウント富士ヒルクライム」
佐野文洋ナチュラルアクションアウトドアツアーズ代表
■ 佐野文洋ナチュラルアクションアウトドアツアーズ代表
静岡県立農林短期大学卒業。1992年プロウインドサーファーとなり、世界各地を転戦。98年ナチュラルアクションアウトドアツアーズ設立、代表に就任。ラフティング協会専務理事、レスキュー3ジャパン事務局長、静岡県消防学校非常勤講師

小池智明富士市議会議員
■ 小池智明富士市議会議員
千葉大学大学院園芸学研究科(造園学専攻)修了後、県内のまちづくりコンサルタントに23年勤務。この間、県内市町の総合計画、観光交流まちづくり計画等の策定に従事。2007年から現職
 影山 次に、スポーツコンベンションが地域にもたらす効果やメリットについて伺います。

 渡辺 経済効果など考えず陸協の運営資金のために始めたイベントですが、やってみて驚きました。マウント富士ヒルクライムは宿泊代だけで6千万円を超えます。食事、おみやげ代を合計すると1億3千万円の効果です。六つのイベントを合わせると年間約6万人、家族を含め7万人の方に富士山のふもとにお越しいただいている計算になります。市や県の推計には出ていない、スポーツを通じた大変な経済効果がもたらされていると思います。
 マウント富士ヒルクライムでは参加者7800人のうち40%が市内の民宿やビジネスホテルに泊まってくれました。もともと施設数が少ないので大変な数です。また、テントや食品などすべて市内、あるいは近隣の業者にお願いしました。これからは経済効果も考えていくことが必要だと感じました。

 影山 間接的波及効果は1.7〜1.8倍といわれますので、2億円を超える効果ですね。

 安藤 3月に行われるアルティメットの大会は日本で一番大きく延べ4千人が3日間泊まります。小さな大会では300〜500人。これ以外のスポーツを含めると年間で2万5千人くらいの集客があります。
 富士・富士宮の宿泊のキャパシティは3500人程度ですので、静岡市清水区の旅館とも連携しています。また、1泊2食つきが一般的ですが、アルティメットは朝食だけ、それも朝の5時といった早い時間ですが、全旅館に対応していただいています。夜は町に出て食べてください、ということをしています。

 影山 経済効果だけでなく、スポーツが持つ効果をどのようにお考えですか。

 佐野 1997年に米国・オレゴン州のフットリバーでアウトドアスポーツの大会がありました。ラフティングとの出合いもこの大会です。
 夜は公園でパーティーが開かれ、スポーツを愛する人がたくさん集まり、ビールを飲みながらスポーツの話をしました。いつしかコロンビア川が富士川に見え、万年雪をかぶったマウントフットが富士山に見えました。いつか富士山のふもとでこんなことがしたい、と思ったのが今の私の原点です。
 それから毎年大会が続き、フットリバーはアウトドアの聖地になりました。大会がない時も大勢の人が訪れるようになりました。今でもみんなが幸せになる、元気がなくなったらそこに戻りたい、と思う場所の一つです。経済も大事ですが、人が幸せを感じるのは心の部分であり、心の温かさに触れられる場所だと思います。富士山もその一つだと思います。


影山武司静岡総合研究機構研究部長
■ 影山武司静岡総合研究機構研究部長
1979年京都大学法学部卒業後、静岡県庁入庁。93〜98年静岡総合研究機構に出向。その後県庁で企画部政策企画室、生活文化部観光交流室などを経て、2006年から同機構に再出向。現在研究部長。サンフロント21懇話会TESS研究員
静岡・山梨両県が連携し、環富士山のイベント開催を
 影山 スポーツコンベンションは富士山の魅力があって初めて成り立っていると思います。それをさらに生かす、また環富士山で取り組むアイデアをお聞かせください。

 安藤 マウント富士スポーツゲームコミッションを作らないかと5、6年前から提言しています。スポーツというコンセプトで串刺しにした観光振興です。コースの問題など、一つの地域ではできないことが多いので、強いコンセプトを持って地域連携をしていきたいと思います。

 小池 環富士山という枠組みの中で地域の情報発信や、人を呼び込む仕掛け、企業の集積を図る必要がありますし、そのリーダーシップは富士市がとっていくべきだと考えています。
 富士山観光交流ビューローには各団体の調整役を期待したい。例えばホテル旅館業組合とスポーツ施設が情報交換できる場づくりをするとか、環富士山の取り組みも警察、地域の体協、いろいろな組織との調整があります。ぜひビューローを通じた連携が図れればと思います。

 渡辺 富士山をぐるりと回る駅伝やマラソンができたら、それこそ日本一です。ただ、道路の問題など二つの県にまたがるので結構難しい。しかし、夢を夢で終わらせないことが大事だと思います。富士北麓において、私たちは困難に立ち向かいながらこれほど多くのイベントをやってきました。働く皆さんが一致団結して取り組んでいった、そのパワーが行政を動かし、県を動かし、警察を動かしました。
 今日を機会に、富士山にまつわる大きなイベントを実現できたらうれしいと思います。




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