サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 東部地域の活性化に向け、企業と行政が一体で提言を行うサンフロント21懇話会は、活動内容や地域が抱える課題を毎月1回、「風は東から」で取り上げている。本年度は、伊豆の観光振興や環富士山での地域連携を模索した。本年度最後の3月は、川勝平太知事と懇話会代表幹事の岡野光喜スルガ銀行社長を迎え、今後の東部発展に向けたヒントを探った。聞き手は懇話会アドバイザーで、静岡産業大学の大坪檀学長。 風は東から

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ12

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健康長寿で地域の一体感醸成、世界の伊豆目指しジオパーク推進
川勝平太 静岡県知事
川勝平太 静岡県知事
東部に力のある中核都市を。来年度懇話会活動の柱は四つ
 大坪 サンフロント21懇話会は、平成7年の発足以来、東部の活性化についてさまざまな提言を行ってきました。まずは今後の活動計画をお話しください。

 岡野 22年度は四つのテーマを考えました。まずは広域行政の推進です。沼津、三島を中心に中核都市をつくろうと提言しています。
 次に、ファルマバレープロジェクトの推進です。高度な医療技術の提供や、健康増進と癒やしを提供するかかりつけ湯など、今まで個別に進んできたものを、ソーシャルキャピタル(社会関係資本)という形で推進し、ウエルネスツーリズムを発信したいと考えます。
 もう一つは観光の活性化です。富士山静岡空港が開港しましたが、伊豆に行くには道路網の整備が欠かせません。伊豆縦貫自動車道(東駿河湾環状道路)が早く伊豆の中心まで延びれば、さらに外国人観光客も来やすくなるのではないでしょうか。
 また、各市町や観光協会が観光サイトを持っていますが、「富士山」と入力すれば富士山情報がすべて分かる、「桜」と入力すればどこの開花情報も見られるような、ユーザーの視点に立った横断的な観光情報サイトが必要でしょう。将来的には「環富士山」での観光推進につなげたいと思います。
 最後に、東部の核になるものを支援したいと思います。一つはコンベンション機能。もう一つは東部に県立の医科大学設置を推進したい。特に、陽子線の先端医療は海外からも患者や研究者に来ていただけるでしょう。こうしたことを中心に活動していこうと思います。

 大坪 15年間の懇話会活動は多くの成果を生み出しましたが、一方で依然進まないのが市町の合併です。核になる自治体が東部にはなかなかできませんね。

 岡野 懇話会は当初からこの地域にEUのような都市連合をつくり、それぞれが独自性をもって発展し、一体化する、という考えを持っています。沼津、三島市をはじめとした東部2市2町の首長が県東部全体で合併機運を盛り上げようと話し合ったと聞いていますので、懇話会も支援するつもりです。

 川勝 東部の広域行政を考えたとき、すでに人々のイメージでは沼津、三島市は一体です。両市が一つになれば1足す1が2でなく3以上の力になると思います。そうした市町がまとまっていただきたいと思いますし、沼津市のリーダーシップに期待しています。
 


ファルマバレープロジェクトは「第3のビジットふじのくに」
岡野光喜 スルガ銀行社長
岡野光喜 スルガ銀行社長
サンフロント21懇話会代表幹事

 川勝 かつて自動車産業を軸にして産業のすそ野が広がったように、静岡がんセンターを中心に、医療が、そして異業種が参入し、健康医療の新しいシステムができつつある。しかもそれは「もの」ではなく、人々を幸せにするための、不老長寿に近づくための健康産業です。不老長寿は東洋の理想ですし、富士山には「不死の山」という意味もある。その現代の形がファルマバレープロジェクトだと思います。
 また、このプロジェクトこそが第3のビジット“ふじのくに"キャンペーンだと思います。富士のすそ野にいらっしゃい、ここには不老長寿がある、と。そのためには交通網の整備など課題も多くありますが、懇話会には今まで培った人的ネットワークを駆使して、東部に健康を核とした地域の概念づくりをお願いしたいですね。

 大坪 プロジェクトが進むといろいろな人が訪れ、会議を開く。また、商談や交流をするためのコンベンション施設が必要ですね。

 川勝 プロジェクトの核である静岡がんセンターには三島駅から車でおよそ15分で行けるようになりました。沼津を含むあの一帯でコンベンションが開ける会場と一流ホテルが必要です。それをつくるには駅に近い方がいい。空港から、あるいは新幹線で来て、降りて泊まることを考えると選択肢は三島か沼津です。
 しかし、三島にはまとまった土地がありません。その代わり楽寿園という素晴らしい公園があります。少し手を加えれば最高のもてなし場になると思います。沼津にはありがたいことに土地がありますから、沼津らしい外観を持った建物をつくりたいですね。

 大坪 景観学で一番重要なのは「期待景観」。駅を降りたときに期待した景観と違う風景が広がっていると、その後の印象が悪くなってしまう、ということです。

 岡野 そういう意味でも自然と共生できるような、また沼津の千本松原や港や富士山が見える、オンリーワンのコンベンションセンターをつくるべきでしょう。

 川勝 デザインはよほど考え抜かないとなりません。富士ヒノキをはじめ、伊豆にも天竜にもいい木材は眠っていますから、ふじのくにの最高の木材を多用した「鉄筋木造コンクリート」として活用したい。もちろん、快適で、景色もよく、コンベンションができる、市場まで出かけて生きのいい魚が味わえる、そんな場所ならば沼津駅は東部の中核になるでしょう。100年、200年後をしっかり見据えたコンベンションホールと、考えうる限りの最高級のホテルをつくりたいですね。


大坪 檀 静岡産業大学学長

大坪 檀 静岡産業大学学長
サンフロント21懇話会アドバイザー

住んでよし、訪れてよし。「咲きにほふ半島」目指して
 大坪 懇話会の発足以来、議論しているのが、伊豆の活性化です。

 川勝 首都圏から大勢の観光客がやってきますし、伊豆を知らない人はいないでしょう。すでに「日本の伊豆」になっていますが、私はこれを「世界の伊豆」にしたい。伊豆は世界で最も美しい半島です。イベリア半島、バルカン半島、朝鮮半島など世界各地の半島を見れば、伊豆がどれ程平和で緑にあふれているのかが分かります。
 それを別の言葉で表したのが「ジオパーク」です。なじみの薄い言葉ですが、静岡大学の小山真人教授にご協力いただき、徐々に活動が広がっています。先日も、伊豆6市6町の首長との会合で、皆さん「ジオパーク」という言葉を使っていました。これからは、ジオパークとしての見どころをピックアップし、線でつなぎ、面で広げていく活動を加速させます。
 もう一つは自然エネルギー。とかく地震が取りざたされますが、生きた半島の生命力、自然力をエネルギーに換えて役立てている最先端の技術があります。温泉の温度差や地熱を利用して発電する方法です。また、自然エネルギーを大事にする世界の潮流がありますから、こうした取り組みには世界中から研究者が集まってくるでしょう。

 大坪 温泉とともに伊豆で欠かせないのが花。1月の熱海の梅園から始まり、2月には河津桜が咲き出します。1年中花があり、花を見て回るのは何にも勝る楽しみです。南伊豆町にマーガレットラインと名付けられた道路がありますね。そこで、河津桜街道やランの道、菜の花街道というように道路に花の名前を付けたらどうでしょう。

 川勝 素晴らしいアイデアですね。伊豆は百花繚(りょう)乱の半島です。年明け早々に熱海の梅をいただき、とても感動しました。石廊崎の端にユウスゲの公園があります。皇后陛下がお好きな花なのですが、今は荒れています。また、テレビなどで活躍するイギリス人ガーデナーも度々伊豆を訪れているそうです。ここはそういう魅力的な場所ですが、むしろ住んでいる方に気づいてもらうためにも、花の半島にしたい。まずは伊豆にあるすべての花を網羅したリストを作りたいと思っています。

 岡野 意外に知られていないのが、松崎の大島桜。食用の桜葉ですが、全国シェアの7割を占めています。また、修禅寺のアヤメも美しい。観光客は回遊しますから、市ごと、町ごとではなく「花・フラワー」と入力すると花情報が全部見られるような、ワンストップでいろいろな情報が手に入るサイトが必要でしょう。

 川勝 回遊してもらうには道路整備も重要です。例えば、西伊豆スカイラインと伊豆スカイラインをU字形で結んだらどうでしょうか。国立公園内は開発が難しいとのことですが、二酸化炭素を出す車は通行できなくするなどの策はあると思います。電気自動車で回遊し、ジオパークを楽しみ、花を愛(め)でる。それぞれの場所に花があり、旬の食文化があり、その素晴らしさに触れた人々は住んでみたいと考えるでしょう。しかも全国トップレベルの病院があり、それを支える健康産業がある。そこで働く人にとっても生活しやすい地域になると思います。

 大坪 花街道、花半島、ジオパーク。いろいろな夢が描けそうです。

 岡野 沼津の御用邸には「咲きにほふ」という名前の干菓子があります。御用邸の西付属邸のかざり金具を表現した干菓子で、「咲きにほふ 花の下道行くほどは 馬にもむちを うつな諸人」という大正天皇の御製から名付けたそうです。花咲く伊豆半島の名前にぴったりではないでしょうか。




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