サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
トップ 最新情報 政策提言 活動内容 サンフロント21懇話会とは 飛躍 風は東から

 県東部の活性化を考える「サンフロント21懇話会」は本年度で15周年を迎えた。これを記念して「風は東から」では4回にわたり、さまざまな角度から東部の振興策をキーパーソンにインタビューしている。第3回は、東部広域合併について栗原裕康沼津市長に聞いた。聞き手は同懇話会シンクタンクTESS研究員の大石人士静岡経済研究所研究部長。 風は東から

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ3

バックナンバー


地方分権の受け皿整備急務 沼津・三島の歩み寄り不可欠
栗原裕康 沼津市長
■ 栗原裕康 沼津市長
1972年慶應義塾大学経済学部卒業後、三光汽船(株)入社。80年衆議院議員栗原祐幸秘書、91年静岡県議会議員、93年衆議院議員を経て、2008年に沼津市長就任
政令市誕生の機運醸成に市民会議を導入
 大石 県中部、西部に続き、東部でも政令市を望む声は以前から聞かれますが、なかなか実現しません。東部の首長も最終的には政令市を目指すことが共通認識だと思います。一方、市民にとって政令市の必要性は分かりにくいですね。

 栗原 一般的には、政令市は人口が多いという程度の認識でしょう。住んでいる市の職員の対応が良いか、公共施設が整っているか、子ども手当、扶養手当などの公共サービスが充実しているか、などを気にされているのであって、政令市であろうが、人口が少ない町だろうがあまり関係ありません。
 ところが、行政運営の面からいうと、普段皆さんが利用されている都市公園や道路、河川などの多くが国や県の管理下にあります。県道の信号が見えにくいとか、狩野川の河川敷にこんなものが欲しいと思っても、市には手をつける権限がありません。
 もう一つ、間違いなく地方分権が進み、自分たちの地域は自らの手で運営する時代がやってきます。それにはある程度の財源がないと何もできません。政令市になれば権限と財源が手に入り、自分たちの住みやすい地域づくりが可能になる、こう説明すると割合納得してもらいやすいですね。
 政令市は県並みの権限がありますので、合併によって新しい県が東部にできるといえばイメージしやすいでしょう。東部全体で人口126万人、富士岳南を除いても87万人ですから、規模でいうと中堅県レベルになりますね。

 大石 東部の市町、特に沼津、三島を含む駿東地区の生活圏は一体です。一緒にならないほうが不思議ですが、今までそのきっかけ作りができませんでした。

 栗原 裾野、沼津、三島市、函南、清水、長泉町、このあたりが財政的に割合豊かで住民がそれなりの行政サービスを享受しているからでしょう。しかし、少子高齢化に伴う人口減少や、ますます多様化する行政サービスに対処するには、個々の行政単位では難しい。将来的に合併はどうしても必要です。
 また、合併は最終的には市民の皆さんのご意思ですから、市民の意識も啓発していかなければなりません。その手法として、沼津市では単に合併の是非を問うアンケートではなく、合併に関する市民会議を開こうと思っています。
 昨年、環境基本計画づくりを行いました。無作為に抽出した市民1000人を対象に30年後の沼津市の姿について、三択のアンケートをとりました。次に、市民会議を開いて41人の方にお集まりいただき、専門家による情報提供や小集団討論などを行い、再度参加者アンケートをとったところ、当初とはかなり違う結果となりました。
 このように、アンケート調査は膨大な数の回答者を確保できる利点はありますが、市民が本当に望む「生の声」を聞くには市民会議の手法を取り入れた方がいいと思います。


広域合併のカギは三島と沼津の信頼関係
(財)静岡経済研究所 大石人士 研究部長
■(財)静岡経済研究所
大石人士 研究部長 

1979年専修大学経済学部卒業後、静岡銀行入行。82年静岡経済研究所出向。統括研究員、研究部副部長を経て、2005年より研究部長。サンフロント21懇話会TESS研究員

 大石 合併特例法の期限が切れて、国や県からのプレッシャーがなくなった今、ある意味本腰を入れて合併論議ができるようになりました。そうした中で沼津市のリーダーシップが期待されています。

 栗原 今までの合併に向けた動きがすべて失敗している理由は、首長同士の意思の疎通がうまく図れなかったところにあると思います。
 世間の皆さんは沼津にリーダーシップを取れとおっしゃいますが、規模の一番大きな市が指図するのではうまくいきません。できれば三島市さんに表の顔になってもらい、私は縁の下の力持ちの役回りをしたい。そうするとスムーズに進むのではないでしょうか。

 大石 東部が広域でまとまるためには沼津、三島が手をつなげるかにかかっていますね。

 栗原 同感です。三島と沼津が手を組めば、周りの市町は放っておけなくなると思います。
 問題は、三島の皆さんにどう合併をご理解いただくか。三島市民の中には、沼津に吸収されたくないとか、合併すると税金が高くなるといった、対抗心や誤解があるようです。沼津と一緒になると駅の高架事業の借金を背負うことになる、といったお話も聞きます。そういう誤解を丁寧に解いていくことが必要です。
 そのためには首長同士はもちろん、議会、商工会議所、各種団体の信頼関係も大事です。三島商工会議所も以前は合併に消極的でしたが、ここに来て変わりました。今がチャンスだと思います。
 私どもも「さあいらっしゃい、お待ちしています」という受け身の姿勢ではなく、謙虚な気持ちで、三島市民や関係者の方に、東部に政令市を作るためには三島と沼津が手を組むことが第1段階だ、ということを説明しなければいけないと思います。
 それが難しければ小池政臣三島市長がおっしゃるように一気に政令市を、という方法論もあると思いますが、それも三島と沼津の首長が率先して汗をかかないとなりません。私が動いただけでは今までと同じ。人口規模で2番目の三島が一緒に行動してくれないとできない話です。

 大石 三島市は12月に選挙を控えていますから、合併の話はそれが終わってからとなりますね。

 栗原 最終的には市民のご判断ですが、地方分権の時代ですから、東部という大きな枠組みの中で三島市にこういうことを期待している、というメッセージを送ることは必要でしょう。


住・職環境の充実目指すグランドデザインを
 大石 東部広域合併、あるいは政令市をにらんだ具体的なアクションについてはいかがですか。

 栗原 昨年11月に三島市長、函南、清水町長と私で集まり、2市2町が中心となって東部に政令市をつくるよう呼びかけよう、という合意ができました。ところがその後、函南町長選があり、町長が引退され、少し風向きが変わってしまいました。
 同時に、一気に政令市を目指そうという選択肢もありますので、三島、裾野、富士、伊豆の国、伊東市の首長さんに呼びかけ、広域合併を見据えた研究会の立ち上げ準備を始めました。
 大枠ができた段階でほかの市町の皆さんにも声かけをしようと計画したのですが、社会経済情勢の変化を受けて正直、次の手をどうしようか考えているところです。
 といっても、広域合併が東部の課題であることは間違いありません。皆さんが安心して暮らせる地域づくりに向け、継続的な働きかけをしたいと思っています。

 大石 こういう地域を作るなら一緒になったほうがいいね、と市民が思えるような将来像を提示することが必要ではないでしょうか。

住環境と職場環境の充実を目指す地域づくりには、東部一丸の取り組みが必要(写真はイメージです))
■住環境と職場環境の充実を目指す地域づくりには、東部一丸の取り組みが必要(写真はイメージです)
 栗原 各市町に共通するのは、住環境が快適なこと、職場に恵まれていることでしょう。それには三島は三島、沼津は沼津独自でやるより、一緒にやる方がいいし、もっと広く東部で考えた方がさらにいい。
 では何でやるか。ここは観光地です。同時にものづくりも含めて産業の集積がある。ファルマバレープロジェクトが進んでいますし、今後は日本経済をけん引する産業と言われる、先端医療や環境産業などを積極的に振興したい。そうすれば、世界中の人が観光を兼ねて視察や療養に来たくなる地域になれると思います。
 これから韓国、中国、東アジアの人々が、日本と同様に海外旅行をするでしょう。ここは富士山や温泉などの魅力がたくさんある地域ですから、そうした需要も見込めます。
 そのためにも、東部の大型コンベンションセンターや沼津駅の高架化、沼津港の振興などを通じた拠点整備に力を入れたいと思います。幸い、国や県に応援していただいていますので、スピード感を持って進めたいですね。




■企画・制作/静岡新聞社営業局

▲ページトップ
入会案内お問い合わせ事務局案内リンク Copyright(c) SUNFRONT21.ALL RIGHTS RESERVED.