サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 県東部の活性化を考える「サンフロント21懇話会」は本年度で15周年を迎えた。これを記念して「風は東から」では4回にわたり、さまざまな角度から東部の振興策をキーパーソンにインタビューしている。第4回は、東部のコンベンション機能の促進について県東部地域コンベンションビューローの後藤全弘会長(沼津商工会議所会頭)に聞いた。聞き手は同懇話会シンクタンクTESS研究員の野村浩司静岡総合研究機構主席研究員。 風は東から

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ4

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高いポテンシャルで学会誘致 建物の早期実現を地域が熱望
後藤全弘 県東部地域コンベンションビューロー会長
■後藤全弘 県東部地域コンベンションビューロー会長
中央大学商学部卒。1956年ゴトー洋服店入社。ゴトー社長、会長を歴任し、2005年から相談役。沼津商工会議所副会頭を経て、07年から会頭。08年から中心市街地活性化協議会会長、県東部地域コンベンションビューロー会長
医療・研究関連の学会向けに滞在型コンベンションを
 野村 人、もの、情報が交流する新しい地域の起爆剤として、東部コンベンションセンターが平成26年度、沼津駅北にオープンします。各種展示会やイベントが開ける沼津市の総合展示施設と、約1300人を収容する国際会議場や、大小の会議室からなる県の施設、またバンケットなどに対応するホテルと立体駐車場を併設した複合施設になる予定です。
 建物より先に、コンベンションを誘致する東部地域コンベンションビューローができました。ビューローの役割と実績、今後の展開をお聞かせください。

 後藤 東部地域コンベンションビューローは今年で発足3年目を迎えます。医療機能や研究開発型企業・研究所の集積と豊かな自然環境の中で歴史、文化、観光地を県の広域的な連携を使って最大限活用することを目標に、6市4町(※1)が協力して設立しました。しかし、今はまだ中心となるコンベンション施設がないので、直接的な効果をどこも実感できない状況です。
 そんな中、ビューローのアドバイザーで静岡がんセンターの山口建総長にご協力いただき、昨年は第36回ポルフィリン研究会、静岡マンモグラフィー講習会、静岡がん会議2009など医療系のイベントを東部で6回開催しました。

 野村 コンベンションには、地域のイメージアップや観光振興の促進などの効果があり、その経済波及効果は、直接効果(※2)の1.5〜1.7倍という調査報告もあります。そこで、いかに地域にコンベンションを誘致するかがカギとなりますね。

 後藤 東部では静岡がんセンターを中心に、ファルマバレープロジェクトが進んでいます。三島には世界的な研究機関の国立遺伝学研究所もあります。こうしたところが行う医療、研究系のコンベンションを中心に、また、伊豆を控えていますので、東京近辺の大きな会場で1日で終わるコンベンションではなく、会議終了後はゆっくり観光を楽しむリゾート型、滞在型のコンベンション誘致を考えています。
 加えてアクセスの良さも魅力です。沼津の駅前ですから、三島まで新幹線で来て、東海道線に乗り換えれば1駅、5分です。高架化が進めばもっと利便性が高まりますし、箱根まで車で30分。東名高速があり、新東名や伊豆縦貫道の整備が進めば、下田まで沼津から1時間。富士山静岡空港を利用するお客さまには、フェリーを使ったアプローチも喜ばれるでしょう。
 このように、施設規模に見合った中規模の大会で滞在型のコンベンションにターゲットを絞り、訴求していけば相当数のコンベンションを誘致できると考えています。


伊豆の魅力を最大限活用。課題は観光情報の一元化
野村浩司 静岡総合研究機構主席研究員
■野村浩司 静岡総合研究機構主席研究員 
1987年静岡県庁入庁、96年財団法人静岡総合研究機構に出向。その後県議会事務局調査課、清水港管理局企画振興課を経て、2008年から現職。サンフロント21懇話会TESS研究員

 野村 コンベンションセンターがない中で、既存の施設やネットワークを活用した誘致活動が数多く実を結んでいると聞いています。

 後藤 昨年ビューローが開催支援をした大会で、主なものだけでも、第1回観光立国教育全国大会(参加者数930人)、第27回日本肝移植研究会(450人・2日間)、建築とまちづくりセミナー(130人・3日間)、還暦野球大会(700人・5日間)、全国市区選挙管理委員会連合会理事会・研修会(600人・2日間)、中部医学検査学会(550人・3日間)、曹洞宗全国大会(1200人・3日間)などが挙げられます。
 一番評価が高かったのが全国ろう高齢者大会。伊豆市で4日間開催され、700人が参加しました。この大会では、地元の協力体制が高く評価され、静岡ならではのおもてなしが演出されているか、話題性があるか、これまでの規制を取り払っているかなどを基準にした昨年の「静岡県コンベンションおもてなし大賞」で最優秀賞になりました。ビューローはこの大会の企画段階からかかわりました。
 ただ、今はこうした活動があまり話題にならないのが残念です。

 野村 数日に及ぶ開催で、企業のミーティング、協会の会合、スポーツ系のイベントなど対象も幅広いですね。

 後藤 こうして訪れる方の何割かは伊豆に泊まっていると思います。私の想像ですが、これだけ幅広い団体が滞在型のコンベンションを開いているのは、伊豆の温泉や富士山の景観、箱根へのアクセスの良さなど、東部のポテンシャルの高さが評価されているからだと思います。
 下田にはペリーの開国の歴史があり、天城湯ヶ島には伊豆の踊り子など文人墨客の足跡がある。文化、歴史だけでなく、稲取には稲取のよさ、河津には河津のよさがある。これだけの魅力がそろうところはあまりありません。
 しかし今は、そうした魅力を一つにして売り出すことができません。なぜなら、市町が細かく分かれている上に、伊豆には13もの観光協会があるからです。伊豆地域の振興という総論では理解していただいても、各論になるとまとまりにくい状況です。
 この地域には、コンベンションを通じた活性化の可能性を非常に強く感じますので、コンベンションセンターができ、宿泊客が増え、おみやげを購入するなどの直接的な効果が目に見えてくればコンベンションへの理解も深まるでしょう。同時に、各地の観光協会がそれぞれの良さを売り物にして、ビューローがそれを一つにまとめ上げてPRできれば、川勝平太知事が言われる「日本の伊豆半島を世界の伊豆半島にする構想、伊豆は一つ」も実現するのではないでしょうか。


地域が潤う仕組みを構築。地道な活動が理解に
 野村 観光だけでなく、コンベンションは企画・運営、印刷、建設設備、警備や運輸まで関連する産業の幅が広いので、その誘致と並行して地域、産業が潤うような受け皿・仕組みづくりが重要ですね。

 後藤 まずは6市4町にコンベンションをもっと理解してもらうことですね。ビューローのスタート時は沼津だけでやっていました。手探りの努力を続けていく中で、最近はだんだん理解が広がってきています。今では、大きな大会を開く時には、地元の行政をはじめ、観光協会にも協力していただいています。
 また、賛助会員の宿泊施設には、大会参加者向けに割安な料金設定をしていただきました。バス会社にも、主催者から要望があれば割安で対応していただけるよう、お願いしています。このように、私たちから賛助会員に情報を提供し、実験・実践していく中で効果を感じてもらっています。

 野村 発注が地元企業にくれば波及効果も大きいですし、それがビジネスチャンスになっていきます。今は既存の施設で実績を積み、コンベンションへの理解を深めていく段階ですね。

 後藤 ただ、ビューローが先行しているだけで、肝心な建物ができていない中では、東部の企業に賛助会員で協力してくれと言ってもなかなか理解してもらえません。今は沼津の企業が多くを占めている状況です。
 しかし、ある大手企業が新製品の発表場所に困ったとか、大きな会合が開けずほかに決めたという話は、表には出てきませんが実際にはたくさんあります。コンベンションセンターができればこういうものが一気に表に出てくると思いますし、地域も一気に活性化するでしょう。
 そうすれば、沼津だけのためでなく、コンベンションセンターが東部地域全体の顔なんだ、ということをご理解いただけるでしょう。世界に誇る富士山の景観があり、伊豆地域は野菜も海産物も新鮮なものが食べられる。交通網の整備が進めば、ほかに例を見ないほどすばらしいコンベンション開催の適地になると思います。
 そういう意味でも一日でも早くコンベンションセンターができることを熱望しています。

伊豆市で行われた全国ろう高齢者大会。修善寺総合会館や天城ドームを会場に、700人が集った
■伊豆市で行われた全国ろう高齢者大会。修善寺総合会館や天城ドームを会場に、700人が集った

※1 6市4町・・・沼津市、三島市、御殿場市、裾野市、伊豆市、伊豆の国市、函南町、清水町、長泉町、小山町を指す
※2 直接効果・・・コンベンションの開催に伴い新たに発生する参加者の宿泊・飲食・交通費や主催者の会場・設備費などの消費支出の合計



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