「将来的には医療機器認定も視野に入れたい」と堤社長は言う。認定されれば販路が拡大する。
だが、医療機器開発には、(1)機器製造に用いる工場への県の認可(隔離された空間であること、洗面台があることなど)(2)製造する企業に必要な人的要件(品質保証、製造責任、事業統括などの人材がいること、医療機器製造従事経験3年以上など)、そして(3)薬事法に定められる製造機器のクラス(不具合があった場合の生命への影響度合いによってクラス1〜4に分けられる)ごとの専門機関による承認―などがあり、簡単に参入できるものではない。
そこでファルマバレーセンターは、さまざまな支援メニューをそろえている。例えば本年度、経済産業省に採択された「川上・川下ネットワーク構築事業」は、県内の中小企業を部品・部材の供給者(川上)として、医療機器メーカー(川下)との仲介をする事業だ。中小企業の高い技術力を厚生労働省出身の薬事コンサルタントや、医療機器業界団体の理事らが目利きし、医療機器メーカーが求めるニーズとマッチングさせることで、部品・部材の発注につなげる。すでに県内のものづくり企業約70社に対し、得意分野と医療機器開発進出への意欲調査を終わらせているという。
このほか、医療機器開発に携わる人材の育成や、薬事法に精通したアドバイザーの派遣、勉強会なども行っている。同センターの植田勝智副所長は「イズラシのような新たに医療機器分野を目指す企業はぜひ、こうした支援を活用してほしい。必要な人的資格は何か、工場の搬入、搬出口をどう取ればいいか、また製造機器のクラスによって難易度が大きく異なる薬事法は、専門家のアドバイスが不可欠」と語る。
認知動作型トレーニングは、行政における健康づくりの普及から民間事業への展開、そしてものづくりと、大きく広がりつつある。今後も第2、第3の事例が生まれることを期待したい。
※1 十坪ジム…10坪ほどのスペースに認知動作型トレーニングマシン数台を設置、認定を受けた有資格者が丁寧に指導する予約制のジム。2006年度経済産業省「健康サービス創出支援事業の委託事業」としてスタートした。
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