サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 「平成の大合併」が終わり、合併に至らなかった地域が目立つ県東部。行政主導の合併協議に限界もある中、経済圏・生活圏により即した「暮らしやすい」「安全、安心な」地域の将来像を求める声は依然強い。こうした背景から、東部のグランドデザインを描こうと経済界が立ち上がった。沼津商工会議所の市川厚会頭、三島商工会議所の諏訪部敏之会頭、静岡経済同友会・東部協議会の赤堀肇紀代表幹事が三島市内で鼎談(ていだん)し、東部のグランドデザイン構築に向けて活発に意見を交わした。進行役は静岡新聞社・静岡放送の谷川治取締役東部総局長が務めた。
風は東から

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ2

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民間主導のグランドデザイン 経済力高め豊かな地域づくりを
将来への焦燥感が経済界をまとめた
東部のグランドデザインについて、踏み込んだ意見が交わされた
■東部のグランドデザインについて、踏み込んだ意見が交わされた(左から、赤堀代表幹事、諏訪部会頭、市川会頭、谷川東部総局長)
 谷川 平成の大合併が昨年3月で終わりましたが、県東部は中西部のような再編は進みませんでした。
 市川 県の合併構想で示された3市3町(※1)の枠組みは定量的な裏付けはありましたが、歴史や文化、住民感情への配慮が不足していました。地域の将来像もほとんど示されないまま、合併という言葉だけがひとり歩きした感があります。また、この辺は不況に強い地域です。農業、工業、商業などのバランスがよく一職種に偏らないため、生活が困窮することがないのも背景にあると思います。
 谷川 静岡経済同友会・東部協議会は経済界主導で東部のグランドデザインを描こうと呼び掛けていますね。
 赤堀 われわれ市民は、まとまりのある中西部に比べ、東部はこのままで大丈夫なのかといった焦燥感や不安感を持っています。同友会は長年、この問題に取り組み、経済団体であれば行政の枠組みを越えた東部のグランドデザインを描くことができると考えました。2月に首長を招いたセミナーで、8市町(※2)のグランドデザインをつくろうという合意形成もできています。
 諏訪部 将来、道州制が導入された場合、われわれは関東圏を希望しますが、地域に発言力がなければ名古屋圏の端になってしまうでしょう。それもグランドデザインが望まれる理由の一つです。
 赤堀 各市町のそれぞれの強みを持ち合って、この東部地域を活性化していきたい。活性化というのは、結局は経済力を高めることで、今はもう単独市町ではできないと思います。

諏訪部敏之 三島商工会議所会頭
■諏訪部敏之
三島商工会議所会頭
1937年生まれ。67年丸善工業入社。90年社長、2008年会長。10年会頭に就任

市川厚
沼津商工会議所会頭
市川厚
沼津商工会議所会頭
1934年生まれ。56年石川建材工業入社。90年社長、2006年相談役。10年会頭に就任
10市町を核に医療健康産業クラスターを形成
 谷川 さまざまな産業が集積している東部・伊豆は、市町ごとに異なる機能をもち、歴史や文化、自然があります。3年前、サンフロント21懇話会はこうした東部の特性を生かした「多極分担型の地域づくり」を進めるべきと提言しましたが、進展せず非常に残念な思いがありました。
 今回の圏域形成はどうお考えですか。
 諏訪部 おっしゃる通り東部は大変恵まれた地域です。このポテンシャルを生かした「ファルマバレープロジェクト」は東部を貫く大きなテーマで、県の総合計画をベースに、医療健康産業のクラスター化が進んでいます。これをグランドデザインに落とし込んでいったらどうでしょう。
 東部には医療健康関連のグループが数多くあります。中小医療系ものづくり企業群、大手の医療関連企業群、沼津高専などの産学連携群、遺伝学研究所を中心にした研究グループ、メディカルツアーやかかりつけ湯などの観光関連群、商議所・商工会、行政―それらをファルマというキーワードでつなげれば産業クラスターの形成は難しくありませんね。
 市川 また、相当精度が高く、具体性、実現性のある内容にしないといけません。短期、中長期の目標設定と住民が参加しやすく、地域の一体性を醸成するようなテーマを示すことが大切です。
 短期では、平成26年春オープンの東部コンベンションセンターを地域住民が遊び、楽しみ、自分の生活や地域のことに生かしてもらえるような施設にしてほしい。また、観光マップも市町ごとにばらばらです。これを統一して、一冊で東部地区がすべて網羅されるものをつくるべきでしょう。
 中長期では、沼津−三島間の電車のシャトル運行。これをもう少し延ばして東は函南から西は富士田子の浦まで15分間隔で行けるような運行をお願いしたい。また、沼津港には年間130万人が訪れます。このにぎわいを中心市街地や三島まで回遊する仕組みを、低床式路面電車(LRT)などを活用して実現したい。新幹線静岡空港駅の活用も当然、グランドデザインに落とし込むべき項目です。
 将来像だけでなく、ごみ処理、し尿処理、火葬場など、足元の課題解決にもつながるようなグランドデザインの構築を市民目線で進めたいですね。
 谷川 一部事務組合などの広域行政だけでは限界がきています。都市同士がより連携して解決できる道筋をつくりたい。その足がかりにもなると思います。
 赤堀 現在8市町にグランドデザインを描くことで合意してもらいましたが、狩野川流域圏として文化や災害の歴史など共通項が多い伊豆市、伊豆の国市も含めた10市町を核に進めたいと思います。東部コンベンションビューローの区域とも一致します。
 また、SKY圏(静岡・神奈川・山梨)、環富士山、賀茂地域にまで調査範囲を広げ、この地域の位置づけを考えていかないと、全国、あるいは世界を相手にできないと思います。



1年かけて方向性を提示
赤堀肇紀 静岡経済同友会・東部協議会代表幹事
赤堀肇紀
静岡経済同友会・
東部協議会代表幹事

1949年生まれ。76年赤武エンジニアリング入社。90年常務、96年社長。2011年代表幹事就任

谷川治 静岡新聞社・静岡放送 取締役東部総局長
谷川治
静岡新聞社・静岡放送
取締役東部総局長
 谷川 東部グランドデザインの中心はやはり沼津と三島。どうしたら2つの地域が連携できますか。
 市川 実は沼津・三島両商議所は15年も前から忌憚(きたん)のない意見を交わしてきました。沼津商議所は三島の分室でもいいんだ、というところまで来ています。
 ただ、その先は経済団体だけでは進みません。住民はもちろん、行政、議会の協力が必要です。
 ですから、この議論には市長や議員への説明はもちろん、議員からも代表を出してもらう仕組みが大事です。こうした活動の中でグランドデザインができれば、将来的に1つの街になることに異論はありません。
 諏訪部 特に各首長の同意をどう得るか。それには20年、30年後の子どもたちのために良い街をつくろうという共通の目標が必要です。そうでないと総論賛成各論反対になってしまう。
 また、現時点の利害関係でなく、数字に裏付けされた将来の状況認識が欠かせません。このままでは数年後に財政破綻してしまう、という試算は当然市町はしているはずです。そこは包み隠さず提示してほしいですね。
 市川 東日本大震災を目の当たりにし、自分の市町だけでは対応できないことを市民は痛切に感じています。首長、議員に一歩前に出てもらい、行政の立場や枠を超えて進めていく必要があります。もっといろいろなことを市民の目線に立って取り組むことを、グランドデザインをつくる際にはお願いしたいと思います。
 諏訪部 また、具体的な内容については若い世代の意見をどんどん入れたいですね。土俵はわれわれがつくりますが、相撲を取るのは若いみなさんです。沼津・三島両商議所の青年部は密接に連携していますし、青年会議所や商議所の女性会など、幅広い意見を盛り込みたいと考えています。
 赤堀 各首長と議長に経済団体が一生懸命やるので協力してほしい、という書面を連名で出そうと考えています。われわれは市民ですから、「市民の声」がこれだけありますよ、というのをお示ししたいですね。
 具体的なスケジュールはこれからですが、スピード感をもって進めたい。まずは体制づくりをし、1年かけて方向性を出そうと考えています。
 谷川 20年、30年後に子どもたちが幸せに暮らせる地域を目指す東部のグランドデザイン。民間が主導し、かつスピード感をもってつくっていこうという動きを懇話会も応援団の一員となって協力します。


●注釈
※1 沼津・三島・裾野市、長泉・清水・函南町を指す
※2 沼津・三島・裾野・御殿場市、長泉・清水・小山・函南町を指す

東部合併の主な動き



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