サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 経済界主導で東部のグランドデザインを描く機運が高まっている。今月24日には静岡経済同友会東部協議会、沼津商工会議所、三島商工会議所など10以上の経済団体が「東部地域グランドデザイン策定支援会」を発足させた。6月の「風は東から」は、支援会に参画する沼津青年会議所の高木恵市理事長と三島青年会議所の井伊寛隆理事長に、意気込みや具体的なアイデアを聞いた。あわせて6日に沼津市内で開かれたサンフロント21懇話会総会での川勝平太知事の講演内容を紹介する。
風は東から

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ3

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世界を視野にグランドデザイン描く 観光と健康を柱に子どもに誇れる地域を
井伊寛隆 三島青年会議所理事長
■井伊寛隆
三島青年会議所理事長
井伊不動産代表取締役。1999年三島JC入会。2009年副理事長、11年理事長。田方郡函南町出身、38歳

高木恵市 沼津青年会議所理事長
高木恵市
沼津青年会議所理事長
高木酒店専務取締役。2003年沼津JC入会。10年専務理事、11年理事長。沼津市出身、38歳
都市計画に足りない広域の視点

― 地域の問題としてどのようなことを感じていますか。

 高木 沼津市内で酒店を営んでいます。配達エリアは南は修善寺、北は富士、箱根と広範囲ですが、常々感じるのは道路事情の悪さ。夜、車で走れば5〜10分の距離が、昼間は40分かかる。時間が読めないし、効率的に回れません。市町間で道路網がうまくつながっていないので都市間の結びつきが非常に弱いと感じます。
 井伊 不動産業をしている関係でJR三島駅周辺に、大手が手掛ける商業施設を誘致したところ、駅の乗降客が少なく現状の道路網では広域から人を呼べないと断られました。新幹線駅にもかかわらず周辺整備の遅れで広域拠点の役割を担えずにいます。
 駅前再開発一つとっても、三島市だけで考えていては外から人を呼べるようなものは作れませんね。
 高木 人口が減っている今、経済力を維持するには圏域を拡大するしかありません。当然、市町ごとの計画は必要と思いますが、広域的な計画も作っていかないと経済圏が小さくなるのは目に見えています。そういう意味で東部のグランドデザインは必要不可欠です。

― 経済団体が描くグランドデザインは10市町(※1)を圏域としています。

 高木 私たちは200万人SKY圏を広域連携の範囲と考えています。富士・箱根・伊豆のパワーがそろえば世界に引けをとらないと思うからです。ただ、今回の10市町は、特に沼津と三島がしっかり連携することが、圏域をまとめる絶対条件と考えています。



キーワードは「ファルマ」と「観光」

― グランドデザインに盛り込みたいアイデアを聞かせてください。

 井伊 県東部ではファルマバレープロジェクトが進んでいます。県立静岡がんセンターを核にしているので、どうしても「病気を治す」というイメージが強いのですが、病気にならない取り組みのすそ野を広げていくことが大切だと思います。
 たとえば、今は特定健診で生活習慣病などのリスクが高い人を見つけ出し、病気にしないよう指導していますが、これからは一般の人に健康的な生活の大切さを広めることが結果的に医療費の抑制につながると言われています。こうした取り組みがグランドデザインに落とし込まれるといいですね。
 高木 観光も大きなキーワードでしょう。これから伸びる余地がある分野で、日本だけでなく海外まで含めた60億人を相手にできる産業です。何よりすそ野が広い。
 そこに健康が加わることで、例えば、この地域に1週間滞在して、専門家の指導で食事が楽しめて温泉も入れて、各種の検査が受けられる。ここに来れば10年寿命が延びるよ、というキャッチフレーズが似合う場所になると思います。

― ファルマでは各種の学会も期待されています。JR沼津駅北口の大型コンベンションセンターの開設が待たれますね。

 高木 この地域がほかに比べて優位なのはアフターコンベンションに最適なロケーションがあることです。特に海外の方は家族を連れてきますので、そういう人たちのために豊富な地域資源を使った魅力的なツアーがアレンジできます。
 そんな観光コンシェルジュをつくりたいですね。富士・箱根・伊豆の広域圏で見たら、当然その役割はこの地域が担うと思います。
 井伊 そのスポーツ版がスポーツコミッションと呼ばれるものです。練習場所の確保からトレーニングメニューまで、またケガをした人向けに専門家と組んだリハビリメニューも提供できます。しかも温泉もある。高所トレーニングまでできるのは東部だけでしょう。



グランドデザイン策定の一翼を担いたい

― グランドデザインをつくる上で青年会議所(JC)が担う役割を聞かせてください。

 井伊 8市町(※2)が首長レベルでグランドデザインの策定に合意したことで、市民やわれわれJCが自発的に行動する時が来たと強く感じています。
 経済団体の先輩方が設けた「東部地域グランドデザイン策定支援会」に参加させていただきますので、JCは「まちづくり委員会」を窓口に連携していきます。
 高木 グランドデザインを無難にまとめ上げるのではなく、僕らは「若気のいたり」を武器に大きな花火を上げるつもりです。地域のポテンシャルは世界を相手にできるほど高い。その可能性を最大限、追求したいですね。
 井伊 子どもたちの将来のためにも今、私たちが頑張らないといけない。子どもたちにいつまでも「ふるさと」を大切に思う気持ちを持ってもらいたいし、この地域で働ける環境がもっとたくさんできればなおいい。そのためにファルマや観光があって、それぞれのまちが独自のカラーを出せる地域づくりができればと思います。
 どのくらいの役割をいただけるか分かりませんが、積極的に関わっていきたい。支援というより実行部隊となって議論に参加したいです。

●注釈
※1 沼津・三島・裾野・御殿場・伊豆の国・伊豆市、長泉・清水・小山・函南町を指す
※2 沼津・三島・裾野・御殿場市、長泉・清水・小山・函南町を指す


サンフロント21懇話会総会 ― 記念講演―
県東部の将来像〜「場の力」生かし美しい地域づくりを
川勝平太 知事
川勝平太 知事 静岡県は日本の真ん中、太平洋の正面玄関だ。京都、大阪、名古屋など西日本の中心と首都圏の間にあり、浜名湖から東は箱根、伊豆半島、富士山などの自然が豊かな地域だ。
 東部、伊豆半島には「場の力」がある。年間数千万人が訪れる伊豆は、東日本大震災直後の旅館・ホテルのキャンセルが30万人出た。裏を返せばものすごい数の人が予約しているということで、この土地が人を引き付ける魅力を持っているからにほかならない。「場の力」を生かし、東部は健康、伊豆は観光が地域の核になる。両方ともに共通するのは美しさ。これからの地域づくりは「美」を意識したものでなければならない。
 静岡がんセンターを核としたファルマバレープロジェクトは本年度から第3次戦略計画に入り、「ものづくり」「ひとづくり」「まちづくり」「世界展開」の4つの戦略を展開している。昨年暮れには慶応大と協定を結び、人づくりへの期待感が増したところだ。
 一方、統計では人口10万人あたりの医者の数は全国平均を下回っている。最先端のがんセンターがあるにもかかわらず、医療全体の人手不足は明らか。医学生の数もしかり、下から数えた方が早い。ゆえに医学部はどうしても必要だ。幸い候補地は東部にいくつかあるので、しっかり誘致をしていきたい。
 他方、観光面では自然景観を大切にしないといけない。伊豆半島も富士山のふもとの自治体も十分配慮しているとは言い難い。富士山の世界文化遺産登録もそろそろ射程に入ってきた。山梨側の富士五湖も一体になった、本県の柿田川も天然記念物になる。
 政令指定都市より強力な自治権をもつ「特別自治市」の議論が本格化すれば、都道府県制度自体の見直しが始まるだろう。そうすると広域圏の中で東部は中部に入るのか首都圏に入るのか、いずれにせよどちらかに吸収されてしまう。そうならないためにも、県の権限、財源、人材を移譲していき、基礎自治体の力をつけるようにしていきたい。西部、中部は放っておいても発達するだろう。しかし小さな自治体が集まっている東部では広域的なものの整備が遅れることになりかねない。
 東部、伊豆が一体になれば政令指定都市の人口要件を満たす。富士山が世界文化遺産になった暁(あかつき)には、健康と観光を柱にした、美しい桃源郷のような理想郷をつくりたい。


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