中山 「動物の愛護と福祉のセンター」(仮称)の計画が伊豆の国市で持ち上がっています。施設の概要を教えてください。
山根 日本では年間約30万頭もの犬が殺処分されています。一方、ドイツでは動物保護の観点から、犬の頭数は厳格に管理され、殺処分ゼロを実現しています。
この施設は人間と動物の共生と「殺処分ゼロ」の社会の実現を目的に、飼えなくなった犬や猫を保護し、動物愛護団体などと連携して啓発や普及活動、獣医師や看護師の教育などを行うものです。
伊豆の国市は日本の中心で、気候も良く、新幹線や高速道路など交通の便もいい。以前から関心のあったファルマバレープロジェクトをきっかけに、ここでの計画が持ち上がりました。
中山 企業や大学誘致とは違った地域の新しい核づくりといえますね。交流人口の拡大も期待できます。
出野 伊豆の基幹産業である観光業を取り巻く環境は大きく変わってきています。団体客が減り、個人客が主となりました。団体客を囲い込み、旅館やホテルだけが潤った時代から、地域全体がおもてなしの心でお客さんを受け入れる、そういう時代になっています。
宿泊客数も1991年の1900万人をピークに、2009年には1000万人にまで落ち込みました。ここ数年1200万人で推移していましたが、震災直後、伊豆で30万人分のキャンセルが出たのは記憶に新しいところです。
県は国際会議やイベント、展示会など、コンベンションによる交流人口の拡大を目指しています。新東名、東駿河湾環状道路などの建設が進み、富士山静岡空港も開港しました。JR沼津駅北には中西部に負けない大型のコンベンションセンターが整備されます。こうしたインフラ整備は伊豆にとって追い風です。あとはいかに地域の皆さんが汗をかくかにかかっています。
大川 日本はどこも人口減少、高齢化の中でもがき苦しんでいます。原発事故や東日本大震災の影響で日本人の精神面にも大きな変化が生じました。
今回の震災の影響は一時的だと思いますが、そうでない場合もあります。阪神・淡路大震災のあと、北陸や鳥取県で観光客が減りました。関西方面に人気のエリアだったからという調査結果でしたが、5年、10年経っても客足が戻りませんでした。きっかけは震災ですが、その後の社会構造の変化に追い付かず、淘汰されたと考えられます。
加えて、公共団体、国の財政ひっ迫も大きな影を落としています。社会構造が変わり、財源が減る中でまちづくりをどうするかが問題になっています。
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