青山 新しい交通NWができ、地元の人が外に出る機会が増えた。ほしいものに向かって人は動きます。外から人を呼べるような価値を沿道でどれだけつくれるかが試されますね。
谷口 新しい時代は少子高齢化、グローバル化が進み、それに応じた地域をどう再編していくか、市をどう再生していくかが問われます。地域間競争が激化しますから、街の魅力をどう発揮するか、一次産業、二次産業、三次産業をどのように組み合わせるかを考えないとなりません。
この地域は観光が大きな財産です。寿司、アジのひらき、シラス、わさびなどの一次産業的なものに観光を組み合わせて産業を高めることが大切でしょう。富士山、柿田川といった自然も素晴らしい。歴史では源頼朝、黒船来航の下田、文化なら伊豆の踊子、若山牧水。ジオパーク構想も進んでいます。そうした自然、歴史、文化を生かしながら付加価値の高い産業をつくっていかないと、活性化はままならないと思います。
中島 例えば「スマート観光」というキーワードで伊豆地区を切ってみると、温泉がありますので地熱発電で電力供給をする、地域交通は電気自動車で行う、そういう仕掛けをつくってみる。すると仕掛け自体が新しい観光資源になってきます。
また物流は成長分野ですから、象徴となる企業を誘致することも重要です。千葉県市川市にあるアマゾンジャパン物流センターは浜松のイオンモールと同じ6万平方メートルです。中では相当数の人が働いています。物流センターはハイテクの塊であり、雇用装置でもあります。そういう象徴的な企業、たとえばユニクロの配送センターを誘致する。それが機能したら、他の企業も来るでしょう。
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地域のチーム力を引き出す |
青山 「三島コロッケ」を推進するお立場から、地域を元気にするために何が必要でしょう。
渡辺 もっと地域振興に関わる人が「あなたの求めているものはここにある」ことをしっかり発信することが必要ですね。それには、地域全体のチーム力が欠かせないと感じています。
今年のB-1グランプリは1位、2位、9位に岡山県内のチームが入りました。ご当地グルメをやっているチーム同士が情報交換をしているそうで、現場でのおもてなしの方法も非常にレベルが高いものでした。東北もチーム同士で交流があったと聞いています。東部でも各地でご当地グルメを頑張っている団体がありますが、一つのチームとして地域で売り出そうという気持ちはまだないと感じています。
谷口 地域だけでなく国家としてもチーム力が大切です。国家は国家、地方は地方、コミュニティーはコミュニティー、今はこの役割分担がきちんとなされていない。国家は広域的な交通NWをいつまでにここまでやるという絵をきちんと示す。地方は知事のリーダーシップで個性ある県づくりを目指してもらいたい。
その際、「新しい公」を念頭に、民の知恵と資金を生かすような規制緩和が必要です。事業仕分けのように過去をいくらいじっても未来は生まれません。削ったものを未来にどう生かすかをセットでやらないと未来のビジョンは生まれてきません。未来志向で歩みながら、軌道修正しながら歩んでいくことが重要です。10年先に見えなかったことでも2、3年歩めば方向性が見えてきます。それをきちんと示すのが政治には必要です。
中島 先日、あるシンクタンクが各界の専門家に実施した予想アンケートによると、2012年にヒットするものとして「スカイツリー経済」が1位になりました。ところが新東名は、事業規模からするとスカイツリーに比べてはるかに大きいにもかかわらずベスト10にも入りませんでした。
果たしてこれは良いことなのか、悪いことなのか。逆に、あまり注目されていないということはチャンスでもあります。静岡県民は人がいいので、新東名でひともうけ、と考える人はいないのでしょうが、これでひともうけしようという人がたくさん出てくることが、地域にとってプラスになると思います。
渡辺 住民として道路ができることを喜びたいと思います。沿道の住民が大喜びで見送っている九州新幹線のCMには私も感動しました。物心ついたときにはすでに新幹線、東名が通っていましたので、新幹線が通るってこれほど感動的なものなのだ、と気付かされました。ですから、新東名が出来た時はみんなで喜んで気持ちを盛り上げていきたいと思います。
地域振興に関わる一人として、地域をよく見て、良い部分は過小評価せず、きちんと出していきたい。そうでないと「グランプリ」はとれませんね。 |