稲取温泉のはまべ荘(鈴木文雄社長)は、栄養士として病院で6年間経験を積んだ息子の弘康さんが板場を仕切る。そのため、糖尿病や肝臓病など、食事に制限のある人も安心して利用できる宿だ。
食事制限のある人から予約が入ると、まず、医者から指導されているカロリーや塩分などの値を聞く。それをもとに栄養管理ソフトで細かな献立表を作り、実際に試作して見た目や味を確かめる。今回は糖尿病の人のための食事を用意してもらった。稲取産の金目鯛の煮付けや伊勢エビの鬼殻焼き、刺身、ところてんなど9品がずらりと並ぶ。これでもたったの570キロカロリー、塩分量は2.4グラムだ。
勤めていた病院に頼まれて食事制限のある人を受け入れたのがきっかけ。それが口コミで広がり、利用者は延べ1500人を超えた。「家族や夫婦で旅行したくても、食事がネックで出来なかった方は多い。単に制限食を出すだけなら簡単だが、せっかく旅館に泊まりに来るのだから、普段の食事より豪華でおいしい料理でもてなしたい」と弘康さん。一般のお客さんと遜色ない献立が並ぶため、同行者も気兼ねなく食事が楽しめると好評だ。はまべ荘では全体の8分の1程度が制限食を依頼する。お客さんから栄養相談もよく受けるという。 |