サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
トップ 最新情報 政策提言 活動内容 サンフロント21懇話会とは 飛躍 風は東から

 県東部地域の活性化に向け、官民一体で提言を行うサンフロント21懇話会は、活動の模様や地域が抱える課題を毎月1回、「風は東から」で取り上げている。本年度は、東部のグランドデザインや道路網整備、ジオパークなどを取り上げた。本年度最後の3月は、川勝平太知事、懇話会代表幹事の岡野光喜スルガ銀行社長を迎え、ファルマバレープロジェクトを核にした地域づくりについて聞いた。聞き手は懇話会アドバイザーで、静岡産業大学の大坪檀学長。 風は東から

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ12

バックナンバー


総合特区が医療産業集積後押し「健康」の視点で地域ビジョン描け
地域活性化総合医療特区に認定
大坪 この鼎談も今年で14回目となりました。まずは、この1年の東部のトピックスをお願いします。
川勝 昨年は、東日本大震災の影響で東部、伊豆の皆さんは計画停電などでこれ以上ないほどの大変な苦労をされたと思います。
 一方、昨年12月に、ファルマバレープロジェクトを積極的に進めている県東部の12市町を対象とする「ふじのくに先端医療総合特区(※1)」が「地域活性化総合特区」に指定されました。
 また、富士山の世界文化遺産登録に向けた推薦書も国連教育科学文化機関(ユネスコ)に送られ、その内容は国の文化審議会で高い評価を受けています。
 さらに、新東名も当初の予定が大幅に前倒しされて4月14日に供用開始です。まるで富士山が「大丈夫だよ、日本の中心はここになるから、元気を出して」と言ってくださっている気がします。
大坪 逆風かと思ったら、追い風が吹いてきましたね。まずは、ファルマバレープロジェクトの現状を伺います。
川勝 昨年から始まった第3次戦略計画では、患者家族の視点に立った「ものづくり」「ひとづくり」「まちづくり」「世界展開」の4つの柱で東部に医療健康産業のクラスターを形成します。
計画開始から10年が過ぎ、素晴らしい成果が出始めています。例えば本県は、医薬品・医療機器の合計生産金額が全国1位(2010年)です。特に医療機器は2005年に比べて2倍になりました。
 しかし、日本全体では、医療器具や医薬は未だに輸入超過、年間2兆円以上を輸入しています。この状況を逆転できる地域として、ファルマバレーが総合特区に指定されたと考えています。
岡野 総合特区に指定されると、革新的ながん診断装置・診断薬の開発や、地域企業が医療関連製品を開発するにあたり、規制緩和や各種支援策が受けられるようになります。今まで築いてきた産学官のネットワークや大学の研究成果がより有効に活用でき、ファルマバレーが力を入れてきた医療機器の開発に弾みがつくのではないでしょうか。
■東部の将来像について意見を交わす(左から)川勝知事、岡野社長、大坪学長
  ■東部の将来像について意見を交わす(左から)川勝知事、岡野社長、大坪学長
川勝 4月から静岡県公立大学法人の理事長に京都大大学院医学研究科特任教授の本庶佑(ほんじょたすく)先生が就任されます。本庶先生は日本を代表する医学界の重鎮ですので、日本中の医学の目が東部にも集まると期待しています。
岡野 情報発信も大切ですね。総合科学誌「ネイチャー」のファルマバレー特集で掲載された企業に海外から問い合わせがあったと聞いています。今回の総合特区指定も国内はもとより世界にアピールしていただきたいですね。





※1 総合特区制度…国の新成長戦略を実現するため、先進的な取り組みを行う地域に対し、規制緩和、税制・財政・金融上の支援措置を総合的に行う制度。「国際戦略総合特区」と「地域活性化総合特区」があり、「ふじのくに先端医療総合特区」は後者となる 


基盤整備が産業集積を加速
川勝 平太 静岡県知事
川勝 平太 静岡県知事

岡野 光喜 スルガ銀行社長 サンフロント21懇話会代表幹事
岡野 光喜 スルガ銀行社長
サンフロント21懇話会代表幹事
大坪 まちづくりについては、JR沼津駅北口に県と沼津市が整備する大型コンベンションセンターの名称が「ふじのくに千本松フォーラム」(愛称「プラサ・ヴェルデ」)に決まりました。富士山があり、千本松原があって、その先に伊豆半島がある。緑豊かなこの地にピッタリの名前でしょう。
川勝 沼津市の新展示イベント施設が13年に、これに県の施設などが加わったプラサ・ヴェルデが14年にオープンします。東部では医療系の学会やイベントがますます増えていくでしょうから、ここがファルマバレーの“情報発信基地”になるような利用法を考えたいですね。
岡野 医療系のコンベンションでは、医療機器の展示もセットで行われることが多くなります。利用者の使いやすさに配慮して、県の施設と市の施設は一体的な運営を行っていただきたいですね。また、年に1回プラサ・ヴェルデで医療機器の展示会を開いたらどうでしょう。それが毎年開かれることで、参加する企業や研究機関の数も内容もどんどん良くなっていくと思います。
大坪 産業の集積にアクセスは重要です。最大の関心事は新東名の開通でしょう。 
川勝 古代・中世の東海道の出発点は京の都から始まり、それが江戸時代になって東を起点に大転換しました。今度の新東名は、静岡県から東西に延びる形になっています。静岡が初めて中心性を持ち、「東海道の新時代の幕開け」です。また、東駿河湾環状道路は13年に天城までつながります。南側の部分についても、河津―下田間の2期区間が事業決定されました。
 富士山静岡空港は海外からの利用者数が全国8位となりました。台湾には週3便の定期便、韓国のプサンには頻繁にチャーター便が飛びます。また去年はハワイ便が1便増便になりました。
大坪 海外の方にとっても魅力的な地域になるのではないでしょうか。
岡野 当社のシンクタンク(財団法人企業経営研究所)は、県内の外国人教師を対象に助成事業を行っています。今年採用したテーマの一つが、伊豆八十八ヶ所霊場を調べて英語にするというものでした。四国八十八ヶ所霊場のお遍路は有名ですが、伊豆にもあるのです。それが外国の方から見てどのように見えるのか、今から研究成果が楽しみです。
川勝 最近では韮山反射炉が近代産業遺産群として世界遺産に入る可能性も出てきました。伊豆半島は世界ジオパークになる可能性があり、花も景観も美しい。韓国の済州島は世界的に有名なリゾートですが、伊豆は決して引けをとらないと思います。


美しい景観が健康を育む
大坪 日本人の「美しい」や「かわいい」という美意識が世界中から支持を集める時代になりました。これだけ美しい風景があり、花があり、富士山が見える半島はありません。
岡野 昔は「沼津垣」という竹で編んだ垣根がありました。それが近代化とともに塀に変わってしまい、今では沼津の御用邸記念公園などでしか見られません。
 下田や松崎にも「なまこ壁」の文化があります。特に夏場は漆喰(しっくい)の白が青空に映えて美しい。漆喰は体に良いと見直されていますし、昔からの日本の伝統技術を今こそ大切にしたいですね。
川勝 伊豆半島全体で統一感を持てるような生活景観が必要です。沼津垣もできるところから復活させたいですね。なまこ壁は費用がかかりますが、ブロック塀も色を塗って上に瓦を置くなどの工夫をすれば、落ち着いた街並みをつくれるのではないでしょうか。
大坪 こうした地域の資源を使ってまちや人が元気に、健康になるヒントをお願いします。
岡野 静岡県は気候にも恵まれていますので、スポーツと健康をつなげた取り組みをするといいですね。箱ものを作るのではなく、「かかりつけ湯」のような地域資源も活用したい。また、市町の枠を超えて協働してやることを考えた方がいいでしょう。
川勝 健康的なまちにするには、旅人にきれいだな、住みたいなと思わせることが第一です。例えば三島市は電柱の地中化を進めていますね。順天堂大学の保健看護学部では人材が育っています。
 JR三島駅周辺や県立長泉高校の跡地なども「健康」の観点から、どのようなものがふさわしいかを考えることが大切です。また、まちの景観を“見る目”を地域が持ちつつあると感じています。意識が変わるだけでまちづくりは大分違ってくるのではないでしょうか。
大坪 檀 静岡産業大学学長 サンフロント21懇話会アドバイザー
■大坪 檀
静岡産業大学学長
サンフロント21懇話会
アドバイザー



■企画・制作/静岡新聞社営業局

▲ページトップ
入会案内お問い合わせ事務局案内リンク Copyright(c) SUNFRONT21.ALL RIGHTS RESERVED.