野村 次は食と観光の融合という切り口で、この地区へのヒントをお願いします。 谷口 この地ならではの食をアピールするのに大事なのは、マーケットを絞り込んでその思考を把握することです。
外国人が日本の食に感じる魅力は「健康に良い」です。何と言っても静岡は健康に良い新鮮な海の幸、お茶、老化防止のわさび、オーガニックな野菜の種類が豊富です。ただ、的が絞られていないので何が静岡なのかがぼんやりしています。金目鯛、桜エビ、お茶、いちご、何を絞り込んでアピールするか、皆さんご自身がお考えください。
また、静岡ならでは、富士市ならではの食の魅力は何といっても富士山に由来したものでしょう。トップバッターは日本酒。クールジャパンの代表ですが、説明がほとんどなされていません。富士山に積もった雪が60年、70年かけて湧水となって、日本酒やビールが作られる。これはすごい価値です。
富士山の水で作ったお酒を飲んだ、日本の伝統建築で造られた酒蔵で日本酒を味わってきた、というのが顧客満足度を向上させます。三島のうなぎも湧水が泥を吐かせることでよりおいしくなる、これは絶対に目玉になります。 野村 地域の魅力を再発見する、まさに大木さんがされていることですね。 大木 何をテーマにするか、できれば産業として関わっている人が多ければ多いほどいい。物語ですから、長い歴史があった方がいいと思います。
よく、ワインだけ集中的にやっていいのか、と言われますが、誰かに何かを伝えるときに全部を伝えるとラップは破れない。一点集中すると破れるし、お客さんは結局全部を手に取ります。名が通っていることは大事です。それに便乗する。また、流行に乗ってしまうと、ブームが去った時に地域に何も残りません。
価値は一度つくるとPRが楽になります。身の回りにこれだと思ったものを売っている人、提供している人がいます。「山梨しかない」と、やせ我慢している人が必ずいます。それに気が付くか、付かないか。価値を一生懸命伝えている人のノウハウは貴重です。売れないものを売っている人を見つけて話を聞いて、それを紹介していくことが大切です。 田渕 観光という字は「光を観る」と書きます。今、消費者マーケットが光と思っているのは、人々の心が醸し出す生活空間です。
また、観光のキーワードは連携。一つは地域連携。1次、2次、3次産業が連携して地域一体で取り組むことがお客さんの満足につながっていると思います。
もう一つは広域連携。お客さんの行動範囲は広がり、行政の区域は関係ありません。しかし、富士市の観光パンフレットには富士宮市の情報が載っていませんね。お客さんにとって不親切です。広域連携して、産業も含めたつながりの中でやっていかないといけません。かつてはどこに行くか、が目的でした。今は何をしたいか、私はどうなりたいのか。テーマや目的で一つのストーリー性のある旅行商品、食が求められています。 |
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パネリスト
■田渕正人 レイライン顧問
大手旅行会社で営業や企画、商品開発などに25年間携わった後、長崎県、福井県で着地型観光の推進支援などを行う。2007年より着地型旅行会社レイライン顧問 |
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コーディネーター
■野村浩司 静岡総合研究機構
主席研究員
サンフロント21懇話会シンクタンク TESS研究員
1987年静岡県庁入庁。96年静岡総合研究機構に出向。県議会事務局調査課、清水港管理局企画振興課を経て2008年現職 |
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