サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 2年後、JR沼津駅の北口に展示イベント施設と国際会議場、ホテル、立体駐車場からなる総合コンベンションセンター「プラサ ヴェルデ」がグランドオープンする。県東部のにぎわいの核として、交流人口の拡大や地域経済の活性化が期待されている。グランドオープンに先立ち、来年夏には建て替え中の展示イベント施設「キラメッセぬまづ」がオープンする。
 7月の「風は東から」は、「キラメッセぬまづ」の準備状況を紹介する。併せて、「プラサ ヴェルデ」を東部地域全体で活用するためのヒントを関係者に聞いた。
風は東から

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ4

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キラメッセオープンまで1年 ワンストップの窓口整備急務
「日本一やさしい」理念を踏襲

 展示イベント施設「キラメッセぬまづ」は、1998年にサンフロント21懇話会の提言を受け、沼津市が設置した。東部のにぎわいを生み出し、地域の活性化に役立てるのが狙い。天井をテント張りにした実験的施設と位置付け、約12年運営した。その間、駅に隣接した立地や低料金、搬入出のしやすさが支持され、平均73%という高い稼働率を実現した。
 これまでの成果を踏まえ、市は建て替えを決定。また、隣接する土地に1100人が収容できる大ホールや中小会議室からなる県の国際会議場と客室数150室のホテルも整備されることになった。
 「キラメッセぬまづ」は旧施設の長所はそのままに、新たにフロアを3分割できる間仕切りを導入。音響、照明、空調などを大きく改善した。料金こそ旧施設の1日当たり39万円から約49万円にアップしたが、県内の同種同規模の展示施設に比べると一番安い(沼津市市街地整備課)という。
 栗原裕康沼津市長は「すでに多くの引き合いもいただいている。旧キラメッセの『日本一やさしい施設』という理念をしっかり引き継ぎ、お客さまの満足度向上に努めたい。加えて、コンベンションの誘致も大きな課題。そこで、今年から幅広い人脈と経験を持つ産業振興部参事を誘致の専任とした」と語る。
 今月末には建物の躯体が立ち上がり、全体像が見えてくる。完成は来年2月末。オープンは6月29日に決まった。
 管理運営には指定管理者制を導入。利便性を高めるため、2年後にオープンする県の国際会議場と同一の管理者を選定する。沼津市市街地整備課の山田昭裕コンベンションセンター開設準備室長は「指定管理者は施設の管理運営及び企画営業、PR、予約とあらゆる仕事を行う。施設の健全運営と東部地域の活性化を両立できるような民間の運営力、企画力、営業力に期待したい」と話す。また、2週間ごとに県との連絡会議を開き、スムーズな運営体制を検討している。

■徐々に姿を見せ始めた「キラメッセぬまづ」


誘致の要、コンベンションビューロー
▲多目的ホールイメージ
▲エントランスギャラリーイメージ
 「プラサ ヴェルデ」整備に先行し、2007年に沼津市を中心に東部の6市4町が静岡県東部地域コンベンションビューローを立ち上げた。今までは既存の施設を活用した誘致を行ってきたが、「プラサ ヴェルデ」オープンをにらみ、誘致に本腰を入れる。「プラサ ヴェルデ」専任営業担当2人を加え、職員が3人から5人体制となった。
 同ビューローの後藤豊事務局長は「ホテルと会議場、展示施設が一体になっている施設は全国的にもそう多くない。国際会議場の収容人数は1100人だが、全国で開催されているコンベンションは500人規模のものが多い。1100人の会場を満杯にするよりも、中小規模のコンベンションを数多く誘致したい」と説明する。
 同ビューロー内の「プラサ ヴェルデ」予約相談センターで誘致の先頭に立つ渡辺勝己氏(近畿日本ツーリストより派遣)は、静岡や富士のビューローでの実績を買われ今年4月から勤務する。「ここは周辺に富士山、箱根、伊豆があり、三位一体の施設だ。コンベンションを開催する場所としての優位性は高い」と評価する一方、地元に学術会議などを頻繁に行う研究機関や大学が少ないことをマイナス点として挙げる。
 現在はPCO(プロフェッショナルコングレス、オーガナイザー)と呼ばれる学会運営を専門に行う会社約15社に施設概要と地域の魅力を提案し、PCOを通じてさまざまな学会にアプローチしている。その中から国際会議の見積もりの話も出ているという。
 また、コンベンション誘致だけでなく、10市町の特徴を生かしたエクスカーション(短時間で行く小旅行)の開発も進めている。昨年行われたアジアオンブズマン協会会議では、普段見ることのできない関東自動車やトヨタ自動車の研究所を視察ルートに組み込み、参加者から好評を得た。


地域の受け皿づくり加速
■「今まで培ったノウハウに磨きをかけ、コンベンションを数多く誘致したい」と語る栗原市長
 同ビューローの渡辺氏は「コンベンションの誘致合戦を勝ち抜くには、料金の安さや富士山があるだけではだめ」と指摘する。また、主催団体への資金補助も「あるに越したことはないが、決め手にはならない」という。むしろ、コンベンションの開催を支援する地域の受け入れ態勢が重要なポイントだ。
 同ビューローのホームページには沼津市を中心に宿泊施設や仕出し・飲食・販売業者など約80社が賛助会員として登録されている。他にも、09年にNPOコンベンション静岡、昨年は静岡ビジターズネットワーク協力会が相次いで設立された。また、三津旅館組合、沼津ホテル旅館協同組合、戸田温泉旅館組合が一つになり、沼津市旅館ホテル組合連合会が組織された。東部の若手議員でつくる「東部MICE振興議員ネットワーク」も定期的な勉強会を開いている。ただ、現在はこうした団体をまとめ、主催者にワンストップでサービスを提供できる体制が整っていない。
 少子高齢化や定住人口の減少、進まない駅の高架事業に加え、大型商業施設の撤退など、駅周辺の衰退が懸念される沼津市にとって、「プラサ ヴェルデ」のオープンは街のにぎわいを取り戻す大きなチャンスだ。栗原市長は「まずは設置者である沼津市と静岡県が一生懸命になるべき。建物ができ、目に見える経済効果が出てくれば周りの市町も活用に本腰を入れるだろう。沼津は県東部の中核都市として先頭に立つ。今まで培ってきたノウハウに磨きをかけ、ぜひ大勢の皆さんにご利用いただきたい」と決意を語る。


理念を具体化できる仕組みづくりを
企業経営研究所 中山 勝 常務理事(サンフロント21懇話会TESS研究員)
「キラメッセぬまづ」が高い稼働率を実現した根底には「日本一やさしい施設」という理念があった。それをぜひ踏襲してほしい。ハードよりもソフトをどれだけ準備できるか。来た人が心地よく過ごせ、気持ち良く帰ってもらい、また来てもらうお膳立てをするのが指定管理者。主として施設を含めた地域の魅力を売り込むのが東部地域コンベンションビューローだ。
 ファルマバレー関連の学会などが誘致のメーンとなるだろう。それ以外をどのように誘致するか。それには人と人とのネットワークを上手に活用しなければならない。また、この地域は富士山と伊豆を控え、空港も海もある。陸、海、空路が自在に使える地域だ。東名・新東名どちらでも使え、富士山静岡空港から1時間半あまりでアクセスできる。海外の報奨旅行なども十分誘致の可能性がある。視点の広げ方、知恵の絞り方でチャンスは増えるだろう。
 これだけ競合が多い中で、いかに県東部を選んでもらうか。それには「医療系の学会ならプラサ ヴェルデだ」といわれるような得意分野を持つべきだろう。また、国際会議や展示イベントの開催には、印刷、輸送、宿泊、飲食、保険、金融などさまざまな業種が関係する。こうしたコンベンションの受け入れがワンストップでできる窓口を作るとともに、受け皿となる地元企業を束ねる仕組みづくりも重要だ。 
 新しいコンベンション施設に、積極的に地元が関与する機運をどのように盛り上げていくか。地元沼津はもちろん、周辺市町の行政、企業、住民も巻き込んで、理念を具体化できる仕組みを早くつくらないといけない。そうすれば世界中から人が集まる「緑の広場(プラサ ヴェルデ)」になるだろう。



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