サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 昨年末、ファルマバレープロジェクトが進む東部の12市町(※)が国の「ふじのくに先端医療総合特区」に認定された。医療機器開発を目指す企業向けにさまざまな支援策が打ち出されている。8月の「風は東から」は、7月に行われた東部地区分科会のパネル討論を取り上げる。パネリストに、東北大未来科学技術共同研究センター副センター長の竹上嗣郎教授、県立静岡がんセンターの山口健総長、テクノサイエンスの日吉晴久社長、ファルマバレーセンターの植田勝智所長を迎え、「特区」を活用した地域づくりについて聞いた。コーディネーターはサンフロント21懇話会シンクタンクTESSの中山勝研究員(企業経営研究所常務理事)。 風は東から

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ5

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医療機器開発に特区の追い風 支援策活用しクラスターを構築
特区は5年の時限措置

 中山 国から「ふじのくに先端医療総合特区」に指定されたことで、ファルマバレープロジェクトが目指す「ベッドサイドのニーズに応えるものづくり」に弾みがつきますね。
 山口 まさに、強い追い風が吹いてきたという印象です。今回の特区では、利子補給や財政支援など、“真水”で企業にお金が流れる仕組みができました。加えて規制緩和をしっかり進めていますので、非常に強い相乗効果だと思います。特区は5年限定ですから、この間に仕組みをしっかり作り、地域の自立性を高めたいと思います。
 中山 仕組みを作る上で欠かせないのが、ファルマバレーセンター(PVC)ですね。
 植田 特区指定を受け、最も力を入れているのが、国の「課題解決型医療機器開発の支援事業」への申請です。これは、医療現場の課題を解決するため、地域の企業と医療機関や研究機関が連携して医療機器などを開発する事業です。申請が通ると、PVCはそのテーマを具体化できる企業、あるいは病院などと契約を結んで開発を始めます。
 中山 次に、日吉社長に医療機器開発参入への経緯と苦労された点をうかがいます。
 日吉 リーマンショック以降、円高の影響もあり、利益を確保することが厳しい状況となりました。そこで、今後、市場の拡大が見込める「医療機器開発」への参入を決めましたが、当社にとってまさに「未知との遭遇」。情報を集めていく中でファルマバレーの存在を知りました。
 早速、東部地域イノベーションセンターにPVCを紹介してもらい、詳しいお話を聞きました。その後、PVC主催のフォーラムで富士宮市立病院の臨床工学技士の先生をご紹介いただき、気管内チューブのカフ(バルーン)の圧力をコントロールする装置の開発がスタートしました。
 資金力も医療機器開発に関する知識も全くありませんでしたが、県の補助金申請から、一番ハードルの高い薬事法のアドバイスまで、ファルマバレーのネットワークをフルに活用し、最も難しいクラスの医療機器を生み出すことができました。
 中山 竹上さんは全国の事例に精通していらっしゃいます。他と比べてファルマバレーはどのような特徴を持っていますか。
 竹上 いくつかの地域が連携した例はありますが、ファルマバレーという地域政策があり、自治体、大学、商工会議所など、地域関係団体が積極的に参画している、しかも特区に指定される前からクラスターになっている例はないと思います。
 特区制度は新しい分野への参入支援が狙いですが、日吉社長のお話で、ここが全国に先駆けた取り組みだと実感しました。



金融支援とPVCの活用

 山口 今回の特区は、協議会のメンバーに金融機関が入っていること、また、新たな提案を地域が作成し、国と協議することが大きな特徴です。
 金融機関の皆さんには積極的に関わっていただいており、一部の金融機関からはPVCに職員を派遣してもらっています。地域の金融機関は地域の企業のことを非常によくご存じですね。
 植田 利子補給制度は、医療・介護機器分野などに進出したい企業や具体的に計画を持っている企業さんにご案内して、詳しくはお取引銀行にご相談くださいと申し上げています。また、沼津市、三島市の企業さんには、医療健康産業参入に関する市の補助金があることもお伝えしています。
 中山 特区制度にどのような期待を持っていますか。
 日吉 私どもが医療機器開発に参入した時には、特区制度はまだありませんでしたが、PVCには非常にありがたい流れをつくっていただいたと考えています。ぜひ、地域の皆さんもプレーヤーの仲間に入っていただき、活用していただきたいと思います。
 植田 テクノサイエンスさんが活用されたのは、「新産業集積クラスター事業化支援」という県の補助金です。2年間で最大4,500万円が出る制度で、PVCは申請書作りのアドバイスなどを行っています。
 一方、「課題解決型医療機器開発の支援事業」は私どもが採択する立場ですので、あまりアドバイスはできません。ですが、どのようなテーマでどの病院と組み、自社の技術をどこに組み入れればいいか、といった話はできると考えています。
 竹上 地域の企業さんは、まずPVCに電話してみてください。地域がこれだけの連携をしていますので、PVCや周りの自治体に声を掛け教えてもらう。あるいはネットワーク、人脈、場合によっては病院や大学の先生を紹介いただくことだと思います。
 植田 特に、「課題解決型医療機器開発の支援事業」は12市町の企業が参画してもらわなければ応募のできない制度です。今、進めている新たな診断機器の開発では、早稲田大の先生に地域企業の得意分野や技術力を掲載した冊子の中から開発に必要な技術力を持つ2社を選んでもらい、共同体を作りました。
 2社とも以前から自社の技術力をPRされています。そうした企業さんには声を掛けやすいですね。



ネットワークで情報収集

中山 特区を企業が使いこなすには何が必要でしょう。
 日吉 まずは開発テーマを見つけることですね。それには何事も首をつっこみ、情報を収集することが必要です。テーマが見つかったら気軽に社内で声を上げ、開発から製造販売が可能か実際に試してみることでしょう。
 山口 ぜひ、地域の皆さんの間で医療健康産業のクラスター化に向けた連携を進めてください。この地域では、ファルマバレーが始まる前に、ホリックスの堀内喜久二社長が東海部品の盛田延之社長に医療機器開発に向けて指導されたと聞いています。次は日吉社長が他の方に指導するといったネットワークをぜひ構築してもらい、一方でPVCを上手に活用してください。その仲立ちを金融機関や行政の方々にやっていただく。それが他の地域にないような「仕組み」になると思います。お互いに協力しないとクラスターは生まれません。
 植田 臨床現場のニーズ、実際に医療機器を使っている医療従事者の声をもっともっと集めなければと思っています。今は静岡県東部、あるいは県立病院系を主に情報収集していますが、せっかく29病院が参加する治験ネットワークがありますので、PVCの職員が御用聞きとなって情報を集めたいと思います。
 竹上 韓国や中国などはがん対策に国を挙げて取り組んでいます。日本もしかりです。今回の特区制度は理想形とは言いませんが、お金も一定の配慮をし、規制も緩和していますので、こうした国の支援を積極的に活用していただきたいですね。




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