サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 今年9月、日本ジオパークに認定された「伊豆半島ジオパーク」。ジオパークとは、貴重な地形や地質を楽しむ公園のこと。12月の「風は東から」は、11月行われた伊豆地区分科会のパネル討論を取り上げる。パネリストは兵庫県香美町(かみちょう)ジオパーク推進員の今井ひろこさん、伊豆急行の永瀬巌社長、いとう漁協の日吉直人代表理事専務、伊豆半島ジオパーク推進協議会の鈴木雄介専任研究員。コーディネーターはサンフロント21懇話会シンクタンクTESSの青山茂研究員(シード副社長)。 風は東から

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ9
伊豆地区分科会 パネルディスカッション

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大地の物語で伊豆ファンづくり“世界”目指し地域全体で盛り上げを
地形がもたらす多様な恵み
谷口せい子 静岡県観光顧問
パネリスト
■日吉 直人

いとう漁協代表理事専務
1995年伊東市漁協富戸支所勤務。理事を経て2010年誕生した「いとう漁業協同組合」代表理事専務に就任

大木貴之 ワインツーリズムプロデューサー
パネリスト
■永瀬 巌
伊豆急行社長

東京急行電鉄入社後、財務戦略推進本部、主計部などで部長、副本部長などを務め、2012年伊豆急行代表取締役社長に就任
青山 まずはジオパークを活用した取り組みを紹介してください。
鈴木 伊豆半島は、南の海からやってきた火山島です。わずか100万年前に本州に衝突し、20万年前に今の形になりました。今も火山活動を続けている生きた半島です。そこに住む私たちは温泉や、湧水を使った特産品、また、産業、伝統文化面でも大きな恵みをもらっています。
 ジオパークは大地がもたらす資産を生かし、保全していく取り組みです。今は学術的に裏付けされた素材の提供を進めており、その素材を生かして伊豆半島のファンをつくることが目的です。一部では、旅行やお菓子などの関連商品も生まれています。
日吉 私たちの漁協が漁をしている相模湾は日本で2番目に深い海です。そこには栄養豊富な水が湧き上がっていて、プランクトンが増え、魚がそれを食べに来るという連鎖があります。また、黒潮の支流もあり、資源が非常に豊かです。首都圏にこんな近くて、まだ漁業が成り立っていることを不思議に思います。
 30年ほど前から、ダイビング事業を行っています。伊豆半島は沼津の大瀬崎から始まり、南伊豆、下田、東伊豆と日本一のダイビングスポットがあります。修学旅行なども受け入れていて、今年は500人の子どもたちがシュノーケリング体験を楽しみました。
 漁業もダイビングもこの地形があればこその恩恵ですね。
 永瀬 伊豆半島ジオパークには108の見どころがあります。伊豆急沿線にも、大室山、小室山、伊豆高原、石丁場、稲取細野高原、来宮神社の大楠(オオクス)、サンドスキー場、竜宮窟、松崎の棚田、三四郎島…と挙げればキリがありません。
 9月には、伊豆稲取駅前に「江戸城築城石ふるさと広場」をつくりました。石引き体験や、大名の刻印石などを見学できます。石の重さが3.4トン。5〜5人でないと引けません。お客さま同士で声を掛け合って引いていただいています。
 今井 山陰海岸ジオパークは兵庫県、鳥取県、京都府の3県、3市・3町で構成されています。日本がアジアから離れる時のつめ跡がよく残っているということで認定されました。
 山陰は11月6日からズワイガニ漁が最盛期を迎えています。コウノトリに代表される多様な生き物、また植物も多く、3000種類をそろえる植物園もあります。
 鳥取砂丘が有名ですが、砂防から始まったラッキョウの生産が盛んです。松葉ガニは非常においしく、関西人は冬、カニかフグを食べないと年を越せません。但馬牛も有名です。温泉もたくさん湧いています。
 ジオパークに取り組んでから、地域をよく知ることが地域と自分に自信を持つことにつながると気付きました。

■ジオ(大地)パークは一般に貴重な地形や地質を楽しめる「大地の公園」と表現される。伊豆半島には地球のダイナミックな営みで誕生した躍動感あふれる景観が多数ある(写真は伊東市の城ヶ崎海岸)⇒ 伊豆半島ジオパークオフィシャルサイト


ジオ活用に不可欠な物語
青山 ジオの活用事例をお話しください。
日吉 波魚波(はとば)という漁協直営のレストランをやっています。その日の水揚げによって内容も値段も違う「ジオ丼」が人気です。
 また、漁船から見るジオツアーを考えています。富戸から遊覧船が出ていますが、漁船なら岸壁のすぐ近くまで行けるので迫力が違います。ぜひ、城ヶ崎海岸を海から見ていただきたいですね。伊東市内には150人以上のダイビングインストラクターがいます。その人たちをトレーニングしてジオガイドに育てられないかと考えています。
今井 水中でも陸上でもガイドができれば、幅が広がります。水中ガイドはお金をとってガイドしますが、陸上はとりにくい。ダイビングはシステムが出来ています。陸上でもそういうシステムをつくるべきでしょう。知的好奇心は誰もが持っています。そこをお金に変えていきましょう。
永瀬 東伊豆町と共同で同町の細野高原を「海すすき」というキャッチコピーで紹介しました。これは大きな誘客効果になり、ひと月に1万人が来たそうです。細野高原ではジオガイドが説明をしてくれました。いい素材があってもなぜジオ的に、歴史的に素晴らしいか、そこに気付かないと感動も少ないので、ガイドの重要性がよく分かりました。
鈴木 まずは地域の雰囲気づくりが大切です。伊豆半島を語れる人が地元に増えればすごく面白いと思います。ジオパークはストーリーが大切だと言われます。南からきた贈り物や、文化歴史でストーリーをうまく作る。そうすると「食」や「学習」が結びついてくると思います。
 ぜひ、伊豆半島ならではの観光資源を有機的につなぐツールとして使ってもらいたいですね。長期的には、地域の子どもたちに知ってほしい。そうすれば、いったん伊豆から離れてもまた戻ってくれると思います。
大木貴之 ワインツーリズムプロデューサー
パネリスト
■鈴木 雄介
伊豆半島ジオパーク推進協議会専任研究員

静岡大学小山真人研究室で、富士山の火山地質を研究。測量などを行う民間企業を経て2011年より現職



ジオは伊豆の新たな魅力
大木貴之 ワインツーリズムプロデューサー
パネリスト
■今井ひろこ
兵庫県香美町(かみちょう)ジオパーク推進員

民間企業勤務を経て、2010年より兵庫県香美町ジオパーク推進員。2年間で約70回のジオパーク講演会を開催

大木貴之 ワインツーリズムプロデューサー
パネリスト
■青山 茂 サンフロント21
懇話会シンクタンクTESS研究員(シード副社長)

オリエンタルランドを経て、現在シード取締役副社長。県内外の企業、自治体のプロジェクトプロデュースを手掛ける
青山 2015年の世界ジオパーク認定を目指すために取り組むことは何でしょう。
鈴木 世界ジオパークのガイドラインを満たしていないことがたくさんあります。伊豆半島全体の自然保全、教育、地域振興、防災など、地域全体のビジョンを持ち、計画を立てなければなりません。
 拠点施設も大切です。世界ジオパークになって、国内外からビジターが訪れて伊豆半島を楽しもうとした時に、どこに最初に行けばよいのか分からない。今は素晴らしい展示物がばらばらにあるだけなので、それを整理し、ストーリーを立てることが必要です。本年度はアクションプランを作りますが、その内容が今後の活動を左右すると思います。
日吉 富山県の氷見市は定置網を観光資源にしています。伊東も氷見に匹敵するほど定置網の漁獲量があります。定置網は海の地形と非常に関係のある漁法なので、漁協もどんどん情報発信していきたいと思います。
 また、伊豆はキンメダイ漁が盛んです。下田から小笠原周辺でとれるものと、稲取でとれる日戻りキンメの2種類があります。それもジオと絡めて発信していきたいですね。
永瀬 かつての観光パンフレットは温泉と刺身でしたが、新しく作ったのは仏像と大楠と石切り場をテーマにしています。歴史遺産、自然遺産、食文化―と、ジオの考え方を取り入れました。ジオは伊豆の新たな魅力ですね。熱海から下田をつなぐフォトトレインは100カ所近いサイトを紹介しています。伊豆急だからこそ市域を超えて、こうした魅力をお客様に紹介していきたいと思います。
今井 山陰は東京から離れています。東京圏から近い一大観光地にジオパークがあるのは伊豆だけ。ここがブレークしたら全国のジオパークがもっと注目されるでしょう。世界ジオパークでは、外国人のおもてなしができるかも問われます。伊豆が世界ジオパークになってくれれば私たちもうれしい。大地を生かしきれば、ジオパークは究極の地域活性化になると思います。



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