サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 東部地域の活性化策を官民一体で探るサンフロント21懇話会は、活動の模様や地域が抱える課題を毎月1回「風は東から」で取り上げている。本年度は、富士山の世界文化遺産登録に向けた地域の動きや、新東名開通の効果などを取り上げた。年度最後の3月は、川勝平太知事と懇話会代表幹事の岡野光喜スルガ銀行社長にファルマバレープロジェクトを核にした地域づくりについて聞いた。聞き手は懇話会アドバイザーで、静岡産業大学総合研究所の大坪檀所長。 風は東から

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ12

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特区で中小の医療産業参入を支援 心の豊かさ軸に国の未来を担う
医療健康産業の拠点化加速
川勝平太 知事

大木貴之 ワインツーリズムプロデューサー
大坪 檀
静岡産業大学研究所所長

サンフロン21懇話会アドバイザー
大坪 間もなく富士山の普遍的な価値が世界に認められます。ファルマバレープロジェクトの特区指定、伊豆半島ジオパークの日本ジオパーク加盟、新東名の開通と、東部に次々と新しい動きが出てきていますね。
川勝  川端康成は「伊豆序説」の冒頭で「伊豆半島全体が一つの大きい公園である」と、その美しさをたたえています。
美しい場所に住む人々が病んでいたり、家が倒れていたりというのは決してよくありません。美しい風景と美しい人の営みをつくる技術・施設基盤こそがファルマバレーのイメージです。国の総合特区にも指定されました(※1)。その背景には本県が医薬品・医療機器の生産高全国1位が挙げられます。
岡野  特区指定では、特に金融面の支援が可能になりました。これは非常に画期的なことだと思います。
例えば、最大0.7%の利子補給を5年間継続するといったことです。
川勝 医療人材の育成も県立静岡がんセンターが中心となって東京工業大、東京農工大、早大、慶應大の全面的な協力のもと進めています。沼津高専も県と提携を結び、医療における先端技術、地域の発展のために協力をしています。
このように高専、都内の大学、がんセンターを中心に文字通り学術教育的な研究拠点ができ、産業が集積しつつあります。
大坪 長泉高校跡地もファルマバレーの新たな拠点に生まれ変わります。
川勝 道路を1本隔ててがんセンターがあり、東名、新東名、国道246号など、アクセスも抜群です。医療機器開発のインキュベーションや医療人材の育成、ファルマ関係者の交流機能などを盛り込みたいと考えています。
岡野 高齢化社会になればなるほど、医薬品や医療機器の必要性は高まってきますので、今後もファルマバレーから成果がたくさん生まれるといいですね。懇話会も支援してきたかいがあります。
■ファルマバレーを中心に据えた、新たな地域の可能性について語る(左から)川勝知事、岡野社長、大坪所長

※1 国の新成長戦略を実現するため、先進的な取り組みを行う地域に対し、規制緩和、税制・財政・金融上の支援措置を総合的に行う制度。「国際戦略総合特区」と「地域活性化総合特区」があり、「ふじのくに先端医療総合特区」は後者となる。


プラサヴェルデでファルマ市場を
岡野光喜 スルガ銀行社長
サンフロント21懇話会代表幹事

大坪 JR沼津駅北の大型コンベンションセンター「プラサヴェルデ」にはどのような期待をお持ちですか。
岡野 県の国際会議場と沼津市の多目的展示場、民間のホテルからなる複合施設です。通常こうした例では、県と市が建築家も別、運営も別にし、使い勝手の悪いものになりがちですが、今回は県と市のご理解で、外観も運営も一体で行われます。いままでどの自治体もできなかった試みであり、素晴らしいことだと思います。
川勝  ここでファルマ関係の医療品や医薬品の展示会などが開かれれば、商談をしたり泊まったりして、沼津で食事でも、ということになります。この周辺は新東名、東名、国道1号、東駿河湾環状道路などのアクセスポイントを増やしていますので、広域のネットワークもますます強化されるでしょう。
岡野  ファルマの成果品はファルマバレーセンターのホームページで見ることができますが、実際に物を見たり触ったりできる「ファルマ市場」のようなものを定期的に「プラサヴェルデ」で開いたら面白いのではないでしょうか。アクセスは抜群ですから、世界中から人が訪れて情報交換できれば、将来、新しい価値が生まれると思います。
大坪  東部には農業しかり、製造業しかり、チャレンジスピリットを持った人がたくさんいます。ファルマ市場は物を売るだけでなく、知識を創造する場にしたいですね。
岡野  医療に限らず分野を広げて、例えば若いデザイナーが医療機器のデザインを提案するなど、若い人たちが自由な発想でさまざまな知恵を出せるインキュベーターや実験の場としてスタートしたらどうでしょう。
川勝  「楽市楽座」のような楽しい場を期待したいですね。
岡野  若い人たちが自然発生的に集まる仕掛けも必要です。行政や年配の方が入るよりも、むしろ民間の若い人の創造的な意見を使った方がうまく発展するのではないでしょうか。さまざまなチャレンジが静岡から発信できるといいと思います。


新たな価値の創造を東部から
大坪  6月には富士山の世界文化遺産登録が期待されます。
川勝  日本は昔から、草木国土悉皆成仏(そうもくこくどしっかいじょうぶつ)、つまり山も川も、草も木もみな人と同じ精神性を持つと考えられてきました。その代表例が富士山で、単なる山というのではなく、信仰の対象であり、多くの絵や詩に描かれてきました。
そういう意味で、富士山が世界文化遺産になる意義は非常に大きい。自然に対して畏敬の念を持ち、人間がコントロールできないある種の力に対して謙虚になる姿勢を、登録を機に世界に発信していきたいですね。
岡野  日本は八百万の神、多神教です。自然に対して畏敬の念を持つ文化は多神教民族に共通です。一神教の世界では自然を征服する、管理するという立場で、それが500年もの間、近代資本主義を支えてきたのですが、そろそろこうした価値観が変わる一つのサインだと思います。
大坪  今までは、常に経済面が問われてきましたが、これからの日本、あるいは県東部がみなから賞賛されるのは“心の豊かさ”ではないでしょうか。
川勝  日本にはお金がないわけではありません。人は誰かの幸せのために、あるいは自分が幸せになるためにお金を使います。お金を使う行為がより多くの人々の幸せに結びつけば好循環が生み出せるでしょう。
 東部には、富士山や伊豆半島の美しさと、かかりつけ湯のような温泉による健康・癒やしがあり、21世紀をけん引するファルマバレーがあります。今後、日本の未来産業の一翼を担うと期待しています。



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