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●パネリスト
富士山観光交流ビューロー
福本公美さん
しらす街道推進事業をはじめとする観光客誘致に携わるほか、おもてなしセミナーなど地域啓発事業を担当 |
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●パネリスト
藤枝市観光協会
渡村マイさん
「体験」と「出会い」をテーマとした観光体験プログラム集「たびいく」の情報発信・商品開発に取り組む |
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大石 ニューツーリズムならではのお客さまとの触れ合いや地域の方々との関係をお聞かせください。 近藤 富士登山という過酷な非日常の中で、参加者だけでなく私自身も心の鎧(よろい)を剥(は)がさないといけない場面が多くあります。例えば、高山病になる場合もありますし、酸素も薄くなってきますから体力的にきつくなったりもします。そういった時に心と心で、どうかかわり合うか。どちらかというと、山の説明より人生観の話になります。
例えば、「実はリストラにあってしまい、富士山に気分を変えに来た」とか、「ずっと反発していたおやじと一緒に最後に富士山に登りたい」とかいう話をされますので、私もより深く向き合ってガイドをしています。また、こういう体験をされた方はリピーターになってくれたり、口コミで親しい人に伝えたりもしてくれます。
シーズン以外には地元の子どもたちの体験活動をサポートしています。今は学校や企業などと連携して、地域の方たちとの体験の場を提供することを意識的にやっています。 福本 「田子の浦は富士市の誇りだね」という言葉や「外の人を連れて行くならば田子の浦漁港がおすすめ」という書き込みを見て、市民の方にとってそういった場所ができたんだなということがうれしかったです。
また、日曜日や雨風の日など、普段なら漁に出ない日にも、バスでわざわざ東京から来てくれるお客さんのためにシラスを引いてくれるなど、漁師の皆さんが協力してくださっているところが大きいです。
渡村 私の場合、お客さんと受け入れる側両方の反応が気になります。そこはアンケートなどには出てきませんので、直接いろいろ聞きに行きます。「すごく面白かった」「やって良かった」「次はもっとよくできるよ」という声をいただくと本当にうれしいです。
受け入れる側の皆さんは、最初はあまりやる気でなかったりします。しかし、一度受け入れてお客さんの喜ぶ顔や、自分のところの茶畑も捨てたものじゃないなということを実感してもらうと、その人自身の中でそれが喜びになっているなと感じます。それをコーディネートできるのが、ニューツーリズムの面白さだと思います。
大澤 皆さんの取り組みから、観光が大きく変わっているのだということが分かると思います。「これは観光なのか」というものもありますし、「こんなことやっても、もうからない」「これで何人来るの」と思った方もいらっしゃるでしょう。
ですが、やはりこれがこれからの観光だろうと思います。そこに心と心の触れ合いがあったり、珍しい体験があったりするからこそ、お客さんが来てくださる。
私も方々からお茶をいただきますが、それらは「もの」なんです。ですが藤枝で、生産者の気持ちやお茶匠のプライドを見たり、聞いたりすると、それが単なる「もの」でなくなってきます。今では藤枝のお茶しか飲みません。 |