サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 富士山が世界文化遺産に登録されれば、国内外から多くの人が県東部に訪れることが予想される。環境保全の議論がある一方で、交流人口の拡大も地域にとっては課題。中でも、交通網の整備は欠かせない。6月は、富士山と周辺交通網を考える。富士山の間近を通る国道469号(富士南麓道路)と、海の県道223号を中心に、活用法や期待を関係者に聞いた。

風は東から

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ3

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広がる交通網を飛躍のチャンスに 富士山楽しむ回遊と滞在の仕掛け重要
環富士山の道路網整備着々
■「富士山世界文化遺産登録を機にさらに道路網整備を進めたい」と語る須藤市長

 富士山南麓を東西に走る国道469号(富士南麓道路)。御殿場市仁杉を起点に山梨県南部町まで延長約61kmの道路だ。国道138号と139号を結び、県内は富士、富士宮、御殿場、裾野の4市にまたがる。
 沿線には世界文化遺産登録が有力な富士山の構成資産「須山浅間神社」や、観光施設、工業団地などが点在し、産業、観光面で大きな役割を担っている。県は幅員が狭く大型車のすれ違いに支障がある区間の利便性向上を図るため、2車線化を目標に道路整備を進めている。富士、富士宮市にまたがる12.3kmを優先的に進め、現在、11.2kmが完成した。これにより、2005年に約2300台だった交通量が、現在は約4000台にまで増えている。
 国道469号(富士南麓道路)建設促進期成同盟会長を務める富士宮市の須藤秀忠市長は「富士山南麓を東西に結び、山梨県側との物流の要となる重要な道。防災面でも新東名ができるまで国道1号や東名の補完をするなど、大事な役割を担っていた。もちろん、その役割はこれからも重要であり、富士山観光のメーン道路として交通量も増えていくだろう。周辺自治体と協力して整備を進めていきたい」と語る。今後はなかなか整備の進まない峡南地域(山梨県境)のバイパス化にも力を入れたい考えだ。

■国内外から注目を集める富士山。地域でさまざまな楽しみ方を提案したい


県道認定で静岡市と伊豆の回遊を後押し

 海の上から雄大な富士を楽しめる県道が誕生した。
 県は、清水港(静岡市清水区)と伊豆市土肥を結ぶ延長約30kmの駿河湾横断ルートを「県道223号」に認定した。現在、駿河湾フェリーが定期船を運航している。富士山の世界文化遺産登録を機に、新たな交流人口を生み出すきっかけになればと大きな期待がかかる。
 エスパルスドリームフェリーの寺田和弘常務は「船旅は非日常の体験。それに加え、海抜0mから3776mのダイナミックな富士山をぜひ楽しんでほしい。イルカの併走や、時期によってクジラも見ることができる」と魅力を語る。船旅という言葉が持つ優雅さとは裏腹に、陸路で2時間半かかる清水―土肥間がフェリーなら65分。移動時間が短縮され、仕事や観光に有利だ。
 県道223号の誕生を機に、駿河湾を取り巻く市町、観光協会、交通事業者などが「環駿河湾観光交流活性化協議会」を3月に発足。期間限定で最大半額となるフェリー乗車券の割引を行っている。この取り組みでシニア層の利用が増え、「ちょっと伊豆まで温泉に行ってくるか、という声がよく聞かれるようになった」(寺田常務)。また、ターミナル待合室では中伊豆・西伊豆観光連盟の協力で、富士山とダイナミックな伊豆の風景が楽しめる写真展を開催(6月24日から)。土肥金山や象牙美術館など、西伊豆の7観光施設では「県道223号認定」を記念して、フェリー乗車券(半券)を提示すれば入場券が22.3%引きとなるキャンペーンを実施した。駿河湾フェリーでは、県道223号を通じ伊豆地域や静岡市の観光施設・宿泊施設との連携をさらに強めていく予定だ。



周遊ルートの提案と連泊できる魅力づくり

 4月30日にイコモスが登録勧告の評価を出してから、富士山周辺はにわかに注目を浴びている。旅行各社は富士登山ツアーや周遊ツアーを相次いで企画、関連グッズも後を絶たない。寺田常務は「以前よりインバウンドの受け入れに積極的な宿泊施設も伊豆で増えてきた。富士山静岡空港から伊豆にショートカットできるルートとして、宿泊施設と一緒に旅行会社に営業にも行っている」と話す。
 昨年の新東名の開通も、お客さまに周遊してもらえる機会が増えると歓迎。NEXCO中日本と共催で、新清水SAから新東名を通り、伊豆を周遊してフェリーで戻るオートバイのツーリングイベントを2度行い、好評を得たという。
 冬以外は顔を見せない日も多い富士山。1泊では無理でも、連泊なら確率は高くなる。また、見えなくても楽しめる仕掛けが必要だ。
 須藤市長は、「世界遺産のまち」として首都圏での広報キャンペーンやラッピングバス、ホテル誘致を進める方針。ホテル誘致は市独自の助成制度を設け、富士のふもとでのコンベンション開催につなげたい考えだ。県が建設を予定している「富士山世界遺産センター」も「富士宮市は6つの構成資産があり、関係市町で一番多い。今回の登録に向けた活動でも中心的な役割を担ってきた。中心市街地に15500平方mの敷地も用意する予定だ」と誘致に自信をのぞかせる。
 富士山本宮浅間大社の横を流れる神田川沿いには、神話時代から近世まで富士山や同市にゆかりのある歴史上の人物を紹介する歴史館を検討している。
 「富士山と一体のまちづくりをより進めたい」と須藤市長。交通ネットワークの拡大と、確実視される富士山の世界文化遺産登録が県東部に大きなチャンスを生み出しそうだ。

■2013年度中に誘客ルートの拡大につながる2つの重要な道路が開通する。
一つは東駿河湾環状道路。三島塚原IC―函南塚本ICが開通し、東名・新東名から修善寺まで走行性の高い道路による一連の道路ネットワークが形成される。もう一つは圏央道(相模原愛川IC―高尾山IC)だ。
これにより、伊豆半島が直接中央自動車道、関越自動車道と接続し、県の試算では八王子〜修善寺間が現在の3時間10分から1時間40分に短縮される。県観光・空港振興局は「圏央道が開通すると、都心環状線を通らずに中央道や関越道から直接伊豆半島に接続できる。これによる誘客ルートの拡大が大きなメリット」と語る。
■「多くの周遊ルートを提案し、楽しんでいただきたい」と語る寺田常務



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