サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 6月29日、「キラメッセぬまづ」が開業した。沼津市がJR沼津駅北口に建設した展示イベント施設で、来夏開業する県の大型会議場や民間のホテルと一体になった総合コンベンション施設「プラサヴェルデ」の一角を担う。7月の「風は東から」はプラサヴェルデを取り上げる。東部ににぎわいの核ができたことで、この地域がどう変わるかを関係者に聞いた。

風は東から

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ4

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キラメッセぬまづが本格稼働 開業をまちづくりのチャンスに
指定管理会社が決定
■「東部の活性化につながるよう、周辺の市町と連携したい」と語る栗原市長

 キラメッセは2011年3月に閉館した旧キラメッセをリニューアルした施設。3875平方メートルの多目的ホールや市民ギャラリー、立体駐車場などで構成される。多目的ホールは音響設備が格段に向上し、大型トラックが直接場内まで入れるため、搬入もスムーズだ。県産材を多用し、南北壁面をつる植物で緑化するなど、環境にも配慮している。
 来年夏には、隣接する県の国際会議場とホテルもオープンし、浜松のアクトシティ、静岡のグランシップに匹敵する複合型コンベンション施設「プラサヴェルデ」が本格稼働する。
 県と市は利用者の利便性向上と効率的な施設運用のため、プラサヴェルデの管理を共同で行う。昨年、指定管理会社が決定した。PCO国内最大手「コングレ」と学会専門の地元PCO「コンベンション静岡」の共同企業体「コングレ・コンベンション静岡グループ」だ。
 PCOとは、コンベンションなどの企画・運営専門企業をいう。大規模な会議では、宿泊・交通、機材レンタル、食事・レセプション、通訳、看板など業務は多岐にわたる。主催者の負担の軽減や効率的な運営にPCOは欠かせない。
 同グループは本年度から6年間の契約でプラサヴェルデの管理運営をする。主な業務は(1)施設の安全な管理運営(2)コンベンションの誘致・運営(3)自主事業の開催―だ。
 プラサヴェルデの田中伸幸館長は「大きなイベントでは日に3万5,000人のお客さまが訪れる。いかに快適に利用していただくか、警備方法や駐車場の案内などについて主催者と細かく協議をしている。また、地域の方と対話しながら、館周辺のハザードマップを作るなど、安全管理にも力を入れている」と語る。
 今後、力を入れるのは学会誘致。準備には2〜3年かかるため、どの学会の会長が誰になったかといった情報をいち早く入手し、誘致する行動力が求められる。また、各会場に同時通訳、タイムキーパー、プロジェクターなど多くの専門家や機材が必要だ。パソコンでの受付は当たり前で、動画を使った外国語の発表も多い。国内最大手のコングレには幅広い人脈と専門性の高い協力企業群がある。逆に、地元で対応できる部分はコンベンション静岡がノウハウを提供する。
 コンベンション静岡の大川敦士副理事長は「学会誘致は“総力戦”。コングレが営業に行くにも、県、市のバックアップ体制がしっかり見えないと難しい。逆に、県や市が学会を誘致する際に、最大手のPCOと地元に精通したPCOがある、というのは大きなプラス。全員がいろいろな形で営業し、足りない部分は全員で補っていくことが大切」という。

■先行して開業したキラメッセぬまづ。右端は建築中の国際会議場


誘致先リストを作り営業活動
 学会に限らずプラサヴェルデのコンベンション誘致は、県、市、コングレ・コンベンション静岡グループと東部地域コンベンションビューローが行う。4者は月に数回、営業会議を開き、誘致先リストの営業分担や情報交換をしている。
 誘致先リストには、コンベンションの主催者・団体・組織が複数ページにわたり載っている。例えば、県や県の関係団体が主催する会合やイベントなどは、東部に会場がなかったため、多くは中、西部での開催になっていた。こうした団体をはじめ、東部地域の病院や研究所、また、首都圏の主催者やコンベンション運営会社、旅行会社などが名を連ねている。
 沼津市は産業振興部にプラサヴェルデの担当者を置いた。また、あらゆる場面で栗原裕康市長自身がトップセールスを行っている。「コンベンション誘致のリーダーシップはヴェルデが建っている沼津市がとるべきだと考えている。ただ、うちだけで囲い込むことは絶対しない。それに付随する宿泊やエクスカーションなどは周辺市町にどんどんお分けするし、周りの魅力があるからこそ沼津に誘致がしやすい。伊豆半島、富士山など皆セットで考えている」と話す。
 交通の便だけを見れば、首都圏の方がはるかに利便性は高い。東部地域コンベンションビューローの後藤豊事務局長は「なぜプラサヴェルデでやるのかを主催者、参加者の方に納得してもらえる説明が必要」という。新幹線三島駅から一駅の沼津駅前に立地する交通の便の良さや、富士山に一番近いコンベンションセンターという魅力。富士、箱根、伊豆という日本屈指の観光地が背後にあることもプラスに働く。
■コンベンション参加者を対象としたプランが次々と登場している(右:伊豆長岡温泉一人用宿泊プラン、左:周辺観光を組み込んだ宿泊プラン)
 立地の良さだけでなく、「初めての土地ではどこで食事をしたらよいか分からないといった不安を取り除き、沼津・東部地域ならではの魅力ある情報を提供したい」(後藤局長)と、沼津市の宿泊、飲食、運輸関係企業などを中心に「ヴェルデ連絡会」を立ち上げる。ゆくゆくは沼津市に限らず広域でおもてなしや情報交換ができる組織に拡大する予定だ。



新しい仕事や価値が生まれる
 キラメッセの今年の予約率は80%を超えた。最近では「就職説明会や国家試験など、駅から至近の立地を生かした種類の引き合いなども来るようになった」(田中館長)という。
 コンベンション関係の新しいサービスも必要になる。学会の受付業務サービスやVIP用のスイートルーム、2次会用の飲食店など、コンベンションが活発化すれば、こうしたニーズも見えてくるようになる。大がかりな設備投資が必要ない、ニッチ(隙間)のサービスもいろいろ出てくるに違いない。
 コンベンションの経済波及効果は直接効果の1.5〜1.7倍と言われる。学会が一つ開かれれば、宿泊や飲食、運輸など、地域に落ちるお金は相当なものだ。
 来年開業するプラサヴェルデに併設のホテル(ダイワロイヤルネット)は客室数150室。同じく来年5月には徒歩3分のところに静鉄が105室のホテルを開業する。新しいホテルができ、宿泊客が夜、まちを出歩くようになる。静岡県東部に飲食店・アミューズメント・携帯電話販売等を展開する雄大グループはコンベンション需要を見込み、居酒屋やカラオケルームを北口に出店した。同グループの土屋雄二郎社長は「プラサヴェルデの開業は一つの起爆剤。需要があるという情報発信がうまくできれば民間も投資をしやすい」と語る。
■大勢の人でにぎわったオープニングイベント
 オープニングイベントには2日間で延べ5万5,000人が集まった。東日本大震災の復興支援をテーマにしたこのイベントは、沼津商工会議所青年部が手弁当で開催した。今回の成功をバネに、6年後の商工会議所青年部の全国大会を沼津で開こうと誘致活動をしている。「関係者は大変だったと思うが、一度体験すれば次につながる。第1回目としては達成感がかなりあると思う」と大川副理事長。まちづくりの基本は人づくり。人を育てる上でいろいろなことを経験できる施設ができたのは、地域にとってプラスだという。
新しいものができるのは、そのまちの潜在力の大きさを意味する。プラサヴェルデの開業が、民間投資を呼び込み、人づくりにつながっていくのか、地域の力が問われている。



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